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俺と目を合わせるな
作:いもっこちゃん



月光仮面参上


大学の4年生ともなると、就職活動に忙しい時期だが、設楽宏は大学院に進む道を選択。
単位はほぼとり終え、週に二回の講義とテスト、サークルの集まり以外は学校へ行かなくていい。当然暇になる。なので、割の良いたな卸しのアルバイトを始めた。
夜間手当てを入れて時給千円、コンビニで夜間680円で働くよりずっと高いし、同じ作業ばかりでダレルが夜勤には宏は慣れている。

面白い体験だったな・・と、宏はコンビニの駐車場での出来事を、思い出し一人笑った。
コンビニ店員の手の速さに、学生等は何も気がつかなかった。恐らく足蹴りも、まったく気がついていないだろう。学生等は慌てて去っていったが、足元をよく見れば、きれいに整地された駐車場だ、突起物など何もない。
もっと奥へ行けば、車止めがあるが、彼らはこけた場所が、あの奥だと思うだろう。

夜間のバイトのせいで、昼間時々ボーっとしてしまい、この間のような目に遭遇してしまう。
今日は明け方6時まで、バイトして、夕方の6時に目覚め、腹が減りまくっている。
ぶらぶらと散歩がてらに、コンビにまで行けば、その帰り道、ガタイの良い高校生に囲まれてしまった。
夕暮れだし、爽やかな目覚めでもあったにも拘らず、目の前の景色は、高校生等が酒を飲んで、タバコをふかして、公園でたむろしている。
小学生や中学生は、騒ぐ彼らを、恐れて早々に退散し。
後から来た子供等が、遠巻きに話をしていたが、遊べないと判断して帰っていった。
公園はチャチな木登り遊具と砂場、申し訳程度の樹木、訳のわからない、ウンコ型の滑り台が、鉄柵で囲まれている。
その鉄柵越しに、宏は呼び止められた。
「オマエ!!ガン飛ばしやがって、なめてんじゃねぇぞ。こっちこいや!」金網越しにウンコ型すべり台に座った学生が吠える。
その吠え声に応じて、三人が公園の出入り口に走った。
鉄柵と金網越しに、宏の視線が届いたとは思いにくい。しかもあたりは、薄暗くなりつつある。単に酔っ払いに、からまれているだけである。
「良い度胸してんじゃねぇか、オレラにガン飛ばすたぁー」宏の行く手を阻んで三人の学生はあごをしゃくりあげる。宏の動きが止まるのを見計らって、頭らしい学生がおもむろに公園から出てきた。大きい体つきの割には動きが早い。
「くそ面白くもねぇ!テメェみたいな生っチョロイのにガンつけられて」どの不良も似たような言葉で宏を呼び止める。
返事を、する気にもなれない。
学生が全員、公園から出てきて、宏を取り囲む。かなり険悪な雰囲気である。
公園のそばは、二階建ての住宅街が立ち並ぶ、いたって普通の町並みで、この険悪な状況を知らず、呑気に通行人が自転車で通りかかり、驚いて急ブレーキをかける。
キーッいう音と、ガシャンと自転車の倒れる音が、同時に響き渡る。
こんな光景を見たら、誰だって係わり合いになりたくない。宏だって、さっさと逃げ出したい。
「くそ見てぇな顔しやがって、かっこつけんじゃねぇぞ!」誰が糞だ!おまえよりはいい男だ。学生等を甘く見ていたら、予想外に早く取り囲まれて、ちょっと宏は困っている。
「フザケンなよ!」完全に学生等は、いきり立っている。
「たった一人相手に、大勢で取り囲むなんて、男らしくないね」と、へらっと高い声が上がる。声の方を見れば、ヒョロい少年が目だし帽を被って立ってる。
「なにィー。引っ込んどれ。おまえもボコボコにされたいか!」と、白い歯をむき出す。
「顔隠しても無駄や、そんなもん!すぐ剥いでやるぜ」
「痛いのはやだね」と、落ち着いた声音。
「おんどれは誰じゃ!こいつの仲間か!その顔隠しは,やるきやな!お前からいてこましたるでぇ」と、言うが早いか、大きな握りこぶしが、ヒョロい覆面に叩き込まれる。
学生の手の早さに、一瞬宏は、ヒヤッとしたが、覆面は学生のパンチを軽く避けて、殴ってきた学生のみぞおちに、一発こぶしを入れ、隣の学生の額にデコピンし、腹部に又もや一発入れて足を止めた。なかなか早い動きだ。
横長に切れた、目だし帽の目が、宏に笑いかける。
「何しやがった!なんでぇおまえ等、腹を押さえとるんか?」みぞおちに入れられたら、しばらく声も出せない。
「ワレー。名乗らんかい!卑怯だろう!」
「月光仮面、参上!」と、重々しい声。
「ふざけるな!!この!ヒョロヒョロ!!!」の、言葉が終わる前に、覆面は学生のでこに、中指でピンとはね、その手をそのまま、みぞおちに深々と叩き込む。宏は覆面のじゃまにならないように、軽くステップを踏んで、その場を離れる。
声にならない喘ぎが、うずくまった6人の学生の口からもれる。ひょろひょろの覆面が、宏の手をとり、倒した自転車まで走らせ飛び乗る。
「乗って!」覆面に命令され、宏がトンボに足を掛けると、覆面は立ちこぎでダッシュする。
大通りまで出て、信号を突っ切って、ビルの立ち並ぶ表通りから、路地裏に入り込み、後ろから誰も追ってこないのを確かめて、二人は自転車を降りた。
「この間の店員さんだろ?これで二度目だね、ありがとう」
「さすが設楽さんですね。当たりです」覆面を取りながらにヘラと笑う。
「なんで、名前を知っているかって?顔ですね。実戦空手一般の部3連勝の設楽宏さん。私、大ファンなんですよ。高校生の時の型も素敵でした。去年はどの大会にも参加してませんでしたね。怪我でもなさったんですか」突然、自分の名前を言われ、宏は内心驚き、試合会場に目の前の女子が居たか、思い出していたが、記憶にない。
「有坂翔子って言います」宏の思案している顔を見て、翔子は噴出して、笑いたいのをこらえている。
「私これからバイトなんです。説明は、今度お会いしてからでいいですか?この間の学生は耶麻高校の生徒です。今日の学生等は木田高校のラグビー部の部員なんですがあの中の一人に友達がかつあげされてて頭にきてたんですよ。顔を隠してぶん殴れてよかった。なかなかいい気分です。説明しますね、この目だし帽子は帰りの防犯用に持っていたものなんです。決してさっきのような事をするために持っていたのではありませんからね」翔子はけらけら笑い、もう一度左右を確かめて、宏に別れを告げた。
有坂翔子の笑顔を、思い浮かべながら、宏はアパートに戻った。












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