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うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない 。 作者:CHIROLU
20/202

青年、ちいさな娘に、教授する。

今回、説明回的になっております。
「そうか。ラティナは魔法使えるのか」
「うん。でも、かんたんないやしのまほう、ひとつだけだよ」

 ある日の夕食の席で、デイルが聞いたのは、ラティナがこの幼さに関わらず、既に魔法を行使できるという事だった。

「うーん……攻撃魔法は、危ないかなぁ……でも、護身用に覚えていて損はねぇし……」
 唸りつつ考え込むのは、彼女に攻撃魔法を教えるべきか、否かという事だった。

(ラティナなら、悪戯に誰かを傷つけたりは、しねぇかな……)
 危険性は承知の上でも、教えるべきだと至ったのは、彼女が『片角』だからだった。その上これだけ愛らしい少女だ。何時なんどき、よこしまな輩に目を付けられないか不安で仕方ない。
 使える力があるのなら、自分の身を守るためのすべを教えるのも『保護者』の努めだろう。

「ラティナの使える回復魔法は、何の属性魔法なんだ?」
「んーと…… ひかるのだよ」
「『天』属性か…… 残りが、対属性か並びの属性かはわかるか? 」
「ううん。わかんない」
 ぷるぷるとラティナが首を振るのに、ふむ、とデイルは思案する。

 魔力というものは全てのものが持っているのだ。
 だが、『魔法』となると話は別で、まずそのものが持つ『属性』に応じた魔法しか使えない。
『属性』は七つ。天、水、地、冥、火、風、そして央となる。
 属性は『央の一種』か、『対の二種』、『並びの三種』と呼ばれており、独立した系統の央属性以外の場合、正反対の属性同士か、親和性の高い三種の属性かを備えているものだった。

 デイルの場合は、『水』『地』『冥』の三種の属性となる。

「じゃあ、それを調べるところからだなぁ……」
 属性に応じて使える系統も大きく左右される。
 例えば『回復魔法』もそうだ。『天』『水』『地』の三種の属性に関する魔法のみでしか、回復の系統を使うことは出来ない。
 そして同じ『回復』であっても、状態異常や外傷に効果が高い『水』、即効性は低いが体力回復や重傷治療に有効な『地』、汎用性の高い『天』といったように、それぞれ得手とする物も変わってくる。

「 " 水よ " 」
 呪文にも満たない、短い呼び掛けの言葉。
 だがそれに応じてデイルの掌の上で、淡く魔力が揺らめいた。
「ふぁ……」
「わかったよな? 今みたいに『属性』を指定して、魔力を動かせたなら、その属性を持ってるってことだ。……ラティナは『魔人族』だから、呪文言語は問題無いもんな……」
「ん? どういうことなの? 」
 不思議そうに首を傾げたラティナに、デイルは「ああ」と小さく呟いて、説明を続けた。

「ラティナたち『魔人族』は、他の『人族』に『生まれながらの魔法使い』って呼ばれている。
 それはだな、『魔人族』が普通に使っている『言葉』は、魔力を魔法として行使する為の『呪文』を紡ぐ言葉の『呪文言語』って呼ばれているのと同じ物だからだ。
 実はな、大多数の『人』が、その言葉への適性を持たない。発音すること自体が出来ないんだよ。
『魔法を使える人』ってのは、『呪文言語を操れる人』であることが、大前提なんだ……ちょっと難しいか? 」
「うーん……? ラティナおしゃべりできるから、まほうつかえるの? 」
「ラティナたち『魔人族』はな」

 デイルはラティナの掌をとり、『呼び掛け』を行うように促す。
 順に繰り返した結果、ラティナの適性は『天』と『冥』であることが、わかった。
 
「ラティナも癒しの魔法が使えるなら、知っていると思うけど。呪文は、『属性を指定』して、『制御を明確化』して、『起こる現象を明確化』する。それで『現象名』を告げるって行程になっている」
「ふぅん? 」
 こてん。とラティナは首を傾げた。
 その様子からすると、魔法を使えはするが、まだ理論までは修めていないのかもしれない。
 それも無理はない。こんな少女が魔法を使うなんて『普通』聞かない。
 魔人族の『普通』がどうであるかまではわからないが。
「ラティナが回復魔法教えてもらった時は、どんな風に教わったんだ? 」
「ぜんぶおぼえたの。それでね、まりょくのつかいかた、おそわったの」
「……呪文の丸暗記か……ちょっとラティナ、回復魔法使ってもらえるか? 」
「うん」

 デイルの言葉にラティナは真剣な顔つきで集中する。
 滑らかに唄のように呪文を紡いだ。
「"天なる光よ、我が名の元に我が願い叶えよ、傷付きし者を癒し治し給え《癒光》"」
 溢れた柔らかな光も見届けると、デイルは一つ息をついた。
「綺麗な呪文式だな。補助具もないのに、制御もちゃんと出来てる」
「そうなの? ラティナできてる? 」
「ああ。凄いなラティナは」

 デイルはそう呟いて、昔、自分が使っていた教本を開く。
 パラパラと頁を捲り、視線を滑らせて、目的の項目を見つけた。
「じゃあ、理論はもう少し後にして……『冥』と『天と冥』の複合魔法を幾つか簡易式で丸暗記してみるか」


 やはり、『魔人族』であり、本来の母国語である分、ラティナの方が『呪文言語』に精通していた。
 教えているはずのデイルでも知らない単語を、合間に尋ねてくる。

「呪文は言語だから。本来長く多くの単語を重ねて表す程、強力な魔法になるんだよ。その分消費する魔力と、制御も難しくなるけどな」
「そうなの? 」
「ああ。さっきラティナが使った "《癒光》" の呪文も、簡易式……例えば、" 天よ、我が名の元命じる、傷を癒せ《癒光》 " 位でも発動するんだ。かすり傷とかならそれで充分だよ。魔力の消費もずっと少ない」
「もっとながくすると、おおきなケガ、なおせる? 」
「制御が難しくなるからな……補助具があれば良いと思うぞ」

 魔術士たちが杖や指輪などのアイテムを用いるのは、制御の術式が込められた補助具だからだ。
 制御が精緻である程、消費魔力も範囲指定も、最小で最大限の効果が得られる。

 広域をなぎはらうような、強力な攻撃魔法という物も存在はしているし、理論上は大軍を一撃で焼き払うような呪文も可能だ。
 だが、その為には膨大な魔力の消費に加え、それを制御する力量が求められる。更に、冗長とした詠唱が必要となるのだ。あまりにも実戦的ではない。

 戦場で冒険譚(サーガ)を一本朗読する。と言えば、どれだけ非現実か、想像がつきやすいだろう。

 魔術士たちは基本的に、簡易式の手数で攻めるか、後衛で守られながら、その場で適切な魔法を使い、前衛を支援するのが役割となっている。


「でも、デイル。ラティナ『まどーぐ』みたことなかったよ」
「『魔人族』は閉鎖的な種族だから、あまり他の『人族』と交流を持たないんだよ。『人間族(おれら)』も『魔人族』の習慣とか、ほとんど知らないしな」
 デイルはそう前置きしてから続けた。
「『魔道具』は魔法が使えない者も、属性も関係なく、誰もが魔力を扱えるように作られた道具だ。そして『魔道具』を作ること、『魔力付加(エンチャント)』能力こそが、『人間族』の種族特性だよ」

『魔人族』の全てが魔法を扱えるように、各『人族』は、『種族特性』といわれる能力を有している。
 背に翼を持つ『翼人族』が空を飛ぶ事が出来たり、その身を鱗で覆う『水鱗族』が水中で呼吸をすることが出来るのも『種族特性』だ。

『人間族』身体能力自体に、主な特徴を持たないこの種の能力は、道具を作り利用することだった。

「『人間族』の特産品だから、交流の無い地域には存在しない。まぁ、そういうことだよな」
「べんりなのに。なんで『まじんぞく』、ほかのひとたちと、なかよくしないのかな」
「……そうだな。何でだろうな」


 一つの理由をデイルは知っていて、口をつぐんだ。
 閉鎖的な種族には、傾向があるのだ。

 --彼はこの選択を後日後悔することになる。

ラティナが魔法を覚える為の必要な回だったのですが……やはり説明文多いですね……
丁度良い塩梅が難しいです……

『剣と魔法のファンタジー世界』ということで、魔法が一方的に強くならないように、制限を設けてある。まあ、そういうことです。
当方、魔法の使えない剣技オンリーの前衛職とかも、好物であります。
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