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うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない 。 作者:CHIROLU
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青年、そして白金の乙女。変わる、これから。

本日はこの前にも一話投稿しております。
 改めて自覚してしまえば、周囲が散々自分を詰ってきたのも無理もないことだと、デイルは思ったりするのだった。

 何これ。この娘すげぇ可愛い。
 なのである。
 とはいえ、その文面だけでは、あまり今までと変化はない。
 驚く位に、改まった後の自分の心境も、端的にキーワードを並べてみれば、今までとあまり変わりのない単語が並ぶ。

 それでも明らかに『今までと異なる』心境を以て、接しているのだった。


 デイルは一週間を待たずに床上げし、王都からクロイツに戻ることになった。

 王都に滞在していた間のラティナは、公爵家の書物を読んでいたり、ローゼにマナーを仕込まれていたりと、それなりに忙しく過ごしていた。
 ラティナが、公爵閣下相手にそれなりの応対が出来たのは、いつの間にかローゼに躾られていたからであったらしい。公爵家に出入りするデイルの身内として、何があっても恥ずかしい思いをしないようにと、魔術と共に厳しく指導されていたのだった。

 公爵閣下からの夜会への遠回しな出席要請は、デイルが全力で拒んだ。何かと有名な『自分』の縁者で、見目麗しい超絶美少女であるラティナを、わざわざ噂好きの貴族どもの前に出す気はなかった。
 そりゃあ、ラティナが、夜会にふさわしい格のドレスを纏って、宝飾品と化粧で装った姿を見てみたくないのか? と言われれば、心は揺れる。可愛いに決まっている。万人の目を奪うに違いない。それは確定事項だろう。
 それでも、いやだからこそラティナに余計な注目は集めさせたくない。
 他所の男なんてものは、デイルにとって全て『敵』である。

 デイルは、ラティナを『特別な異性』として考えていないと言っていたにも拘らず、『ラティナが他所の男と一緒にいる』という光景に、不快感しか示さなかった。
『保護者』としても、不思議ではない反応なのだが、少々自分でも大人気ないと思う感情的な部分が表出してしまっていたのは、本当に『保護者』だけの『感情』だったのか、明確に断言は出来ないな--と少々視線を泳がせることになる。

 誰にも、彼女を奪われたくないと願うのは、『父親ならば』当然のようでいて、『父親ではない』のであれば、別の意味を持つ感情だ。

 ヴィントはマイペースに公爵家の庭で、散策する毎日だった。
 大貴族の邸宅にふさわしい広大な敷地である為、ヴィント的にも楽しんでいるようである。
 庭の片隅に大穴を掘っていたという報告には、デイルを青くさせた。それでも、『ラティナを連れて来てくれた』という貸しがある分、デイルは強気に出ることが出来ず、平謝りすることになった。
 ヴィント当人は、全く悪びれなかった。もしかしたら、わざとであるのかもしれない。

 ラティナが隣にいるという状態は、デイルの快復を早めた。
 元々軽症だったというのもあるが、それだけでは説明出来ぬほど、彼の自己治癒力を高めたのである。
 そしてその間、デイルはラティナに対する認識を日々改めていくことになったのであった。

 ベッドの横に腰掛けて話相手になってくれる、ふとした瞬間。
 目が合うだけで、ふわりと柔らかく微笑み返してくれる。
 こぼれた髪の一房にデイルが触れると、少しびくりと身体を竦めた。
 それも思春期故の、『男親』への『拒否』の動作ではなく、頬を微かに染めた、恥じらいの仕草であることに気付かされてしまうことになる。
 暖かな灰色の眸は、時折潤んだようになって、その中に熱のようなものを含んで自分を見ている。理解した今となっては、眸に宿る熱の意味にも気付いてしまう。
 少し気恥ずかしくなって視線を逸らすと、彼女は微かに切な気な吐息を漏らして、何事もなかったように再び微笑んでみせるのだ。

『ちっさなラティナ』という『枠』の仕事は、想像以上のものだった。その存在を意識した今のデイルが、フィルターを外して『見た』彼女は、何処からどう見ても『恋する乙女』だった。

 気恥ずかしさをおして、または今までの癖で、彼女の髪をするりと撫でると--幼い頃からラティナの髪は、すべすべとして、どんなに上等なシルクでも敵わないような手触りと艶を持っていた。あまりに触り心地が良い為に、『良い子の彼女を撫でる』以上に、デイルが癖となっていった動作であった。--ラティナは、いかにも幸せそうに嬉しそうに表情を緩める。信頼故のそんな無防備な表情も、手のひらに頬を無意識に擦り寄せる仕草に、色気のようなものの片鱗を見出だしてしまった。

 この娘は、無防備だった。
 驚く程に、『異性』である自分に対しても--それこそ『手を出そう』と思えば、いつでも『いただきます』と言える気がする程に、無防備なのだった。
 それを『幼さ』と言ってしまうこともできるかもしれないが、その危うさに、デイルは色々思うのである。
(この娘は、その気になれば、男泣かせになるなぁ……)
それも、無邪気で無防備な仕草すら、男と言うモノを煽ることに気付いていない彼女が、それを理解して『使う』ようになったならば、それこそ『傾国の美女』と呼ばれても仕方のない状態になるからだ。

 そして、当人に全くそんな意識がないことをわかっていながら、『いつでも手を出せる』という発想を持つ自分に頭を抱える。

 まだ早い。まだ早いからそうじゃない。と、念仏のように脳裏で呟くデイルの百面相にも、ラティナは裏のない笑顔を向けていた。

 まだ、ラティナは『幼い』。
 --微かに、身体つきに丸みを帯び初めている気がする--なんてことは、きっと気のせいだ。友人たちに比べて発育が遅いことを、自らでも気にしていた彼女は、まだ幼い体型のままなのだから。
『反抗期』の云々以降、ラティナに距離を置かれて--更に仕事を口実に逃げ出したから、ラティナとは実質一月以上まともに向き合っていなかった。だからといって、それだけの期間で彼女が変わってしまうことなんて、きっとない。


 そう、自分自身に必死に言い聞かせているデイルの煩悩には、全く思い至らずに、微笑みを浮かべているラティナは--かねての当人の主張通りに、『成長期』を迎えつつある。--なんてことは、この段階のデイルの知るよしのないことなのであった。

 羽化する直前の『サナギ』であった彼女は、本当に驚く位のスピードで大人びていくことになる。
 かねてよりの懸念であった『母親の遺伝』は、あまり影響を与えず、月を経るごとに、年を経るごとに、非常に魅力的に成長していった彼女は、デイルを大いに悩ませることになる。

 そうして、ラティナが『大人』になる頃--デイルが、『彼女との関係』に、本格的に向き合うことを決意した頃--
 彼女の『夢』は、その様子を少し変えた。
これにて思春期編終了です。
ようやく『娘』も大人扱いされる年齢となります。物語の結末まで、お付き合い頂ければ幸いと存じます。
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