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うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない 。 作者:CHIROLU
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夢と現と幻の間で。

時間軸は思春期が終わった直後位となり、少し前後しています。
 --不思議な空間だった。
 それでも『自分』は、此処を『不思議』だとは考えていなかった。

 全ての光(しろ)全ての色(くろ)を集めた。そしてそれだけで創られた、空間。
 なにひとつ色彩が無いというのに、全てを内包しているモノトーンの『せかい』

 見回すと、此処は途方も無く広いようであり、限られた箱庭のようでもあった。そして『自分』は此処に存在(ある)ものが何であるかも知っていた。

 円形に等間隔に並べられた『椅子』。形も大きさも様々なそれらには、ある共通性があることも『自分』は理解していた。

 此れらは、『玉座』だ。
 七つ並んだ(・ ・ ・ ・ ・)此れらには、それぞれに座するべき『主』が存在する。
 姿かたちこそ、見ることは出来ないが、濃くはっきりと、それぞれの『玉座』には、『主』の気配が漂っている。

 ひとつひとつ見て回る。
 ある『玉座』の前には、血塗られた刃があり、ある『玉座』の前にはなみなみと水を湛える水瓶が設えてある。枯れた樹が絡みつく『玉座』に、分厚い書籍が鎮座する『玉座』を見て--そうやって順に『玉座』を巡り、ひとつめ(・ ・ ・ ・)の『玉座』の前で足を止めた。

 そこは、そこだけは、『主』が存在しなかった。
 そして『自分』は、これから『その玉座』は、『主』を迎えるのだと、知っていた。

 そして『自分』が、此処に来て(・ ・)しまった(・ ・ ・ ・)のは--『条件(・ ・)を満たして(・ ・ ・ ・ ・)しまった(・ ・ ・ ・)のだと言うことも、『自分』は知っていたのだった。

 それは、『自分』が最も忌み嫌う選択の筈だった。
 かつて全てを失った理由であり、未だ護りたい思いを裏切る選択でもある。

「要らないの」
 だからこそ、小さく首を振って、否定の言葉を呟く。
「私は、こんな(・ ・ ・)もの(・ ・)欲しくないもの」
『自分』が欲しいのは、求めるものは--


「どーした、ラティナ?」
 優しい声に、覚醒する。

 ぱちぱちとまばたきして、彼女は自分が、『世界で一番安心できる場所』に居ることを思い出した。
 暖かいもので満たされた部屋。大切な思い出と共に在る部屋。その中でも、最も『暖かい大好きな場所』。
「怖い夢でも見たのか?」
 幼い頃から、いつも彼は、そう言って優しく髪を撫でてくれる。大きな暖かな手のひらの感触に、怖い思い出も、悪夢も全て溶けていく。
 彼に撫でて貰えることが嬉しくて、「綺麗な髪だな」と言って貰えるのが嬉しくて、切ることが出来なくなった。きっと彼は気付いていないのだろうけれど、彼の何気ない言葉も行動も、自分にとっては、どれもとても大切なものだった。

「大丈夫」
 何も怖いことなんて無い。
『ここ』ならば、彼のぬくもりのそばなら、何ひとつ怖いことは起こらない。『ここ』は、世界で一番安心できる場所なのだから。
「だから、大丈夫なの」
 彼女は幸せそうに微笑んで、仔猫のような仕草で、ぬくもりに頬を寄せて、暖かな微睡みの中におちていく。

 考えたくなかったから。
 いつか、自分は、『このぬくもり』をなくしてしまう。
 たったひとつだけ欲しい『もの』。たったひとつだけ自分が望んでいる『もの』。今は溢れる程の幸福と共に、自分のそばにある『もの』。けれど、自分はいつか必ずなくしてしまうのだ。

 --なくしてしまった後、自分はどうしたら良いのだろう。

 それ(・ ・)を考えないようにして、彼女は深い眠りの中に入り込んで行ったのだった。


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