異世界チートハーレムに転生したい、ですか?
「異世界チートハーレムに転生したい、ですか?」
僕はもちろんと頷いた。
僕の前には面接官のおじさん。
ここは転生相談所。
ずーっと長い行列を待って、やっと僕の番が来た。
人は死ぬとどうなると思う?
僕はこの前、初めて死んでそれを知ったんだ。
人は死ぬと、転生相談所に送られる。
そこで、相談員と話し合って次の転生先を決めることができるんだ。
色々と聞き耳を立ててみたところ、意外となんでも叶えられるみたい。
地球以外の世界も可能みたい。
人間じゃなくてもいいみたい。
僕はずっと心に決めていたんだ。
もし死んで自由に転生できるなら、ファンタジーな世界でチートハーレムだって。
困り顔の相談員のおじさん、にこにこする僕。
「大変ですよ?」
それでも!
「苦労することもありますよ?」
それでも!
「記憶も残したいんですよね?」
もちろん!
記憶がなかったら僕じゃないじゃないか!
「うーん、そこまで言うのなら……」
僕の熱意に押されたのか、相談員のおじさんは引き出しの中をゴソゴソと探した後に、一枚の白いプレートを僕に差し出した。
「しょうがないですね。じゃ、この札を持って865のゲートに入ってください」
やったあ!!
白いピカピカするプレートを渡されて、僕は急いでゲートに向かった。
異世界でチートハーレム!
どんなハーレムになるのかな?
エルフはいるかな?
ネコ耳はいるかな?
幼なじみはどんな娘だろう?
ワクワクしながら僕は865と書かれた札のさげられているゲートに勢いよく飛び込んだ。
「もう!ハヤトったらこっち向いてよぉ」
赤い髪の勝気そうな美少女が、黒髪の少年の右腕にからみついた。
「だーめ。ハヤトは今、あたしと話してるんだから」
そう言って、金色の髪のお嬢様っぽい美少女が黒髪の少年の左手を握った。
「そんなことよりハヤトは頭をなでるニャ」
茶色の髪に猫耳の美少女が、黒髪の少年にすり寄った。
「ハヤトはわらわにプリンを作るのじゃ」
青色の髪をした和服のような衣装の美少女が他の美少女たちを押しのけようとした。
黒髪の少年に様々な美少女達が群がっている。
少年は少女達を見回してつぶやく。
「やれやれ、みんなさみしがりやさんなんだから」
困った顔をしながらも、嬉しそうな様子が隠しきれていない。
「あれ?ミーナは?」
今気がついたとばかりに少年が少女達に聞いた。
「知らないニャ」
「んーさっきお洗濯してたよ」
「洗い場にいるんじゃない?それよりお話ししよっ」
「そんなのに構う必要はないのじゃ」
少年は立ち上がって美少女たちに言った。
「僕はミーナも呼んで来るよ。
ここでみんなで待ってて。
その後、一緒にプリンを作って食べよう」
駆け出した少年を美少女達は仕方ないなという顔をして見送った。
「ミーナ、こんな所にいたんだね。今からプリンを作るから君もおいで」
洗い場にいた銀色の髪をした美少女は、黒髪の少年を見ると頬を赤く染めて駆け寄った。
そして嬉しそうに少年に寄り添って歩き出した。
(なんでなんでなんで。体が自由に動かないし言葉も勝手にしゃべってるし、どうしてこうなった。こいつ誰だよ。僕はどうなっちゃってるんだ)
少女の中で僕は必死に叫んだ。
(やめろおおお、僕は男とファーストキスなんて嫌だあああああ)
でも勝手に体は動く。
(それ以上はやめてええええええ)
少年と少女達は幸せに暮らしました。