……ために
回る。廻る。回る回る、廻る――――
□ □ □
あの子は言った。
「私、「 」クンが好きなんだ」
私も好きだった。
しかも、その子よりもずっと前から。
でも私は、笑顔を浮かべて言ったのだ。
そうなんだ、応援するね――と。
そう言えば、その子はぱっと花が咲いたかのような笑みを浮かべて喜んでくれた。
ぶっちゃけ言って、あの子よりも彼のことが好きだなんてそんな驕りはなかった。
ただ彼のことが前からずっと好きで、恥ずかしいながらもアプローチをしてきた。けど、やっぱり私みたいな身近な子にそういう感情を抱くだなんて考え――それこそが驕りだ。
私は、もう後悔をしたくない……っ。
心の奥底で、ぽつり――黒い雫が落ちた。
■ ■ ■
私は彼の元へと行った。
そして、あの子のいいことをたくさん教えてあげた。もちろん私と比較して、だ。
当然だった。比較する対象がいない限り、それだけの価値しかなくなってしまうからだ。対象がいれば提示したものがより高くなったり低くなったりするものだから、高くしたいのだったら対象を低く見せればいいだけのこと。
なのに、彼はそれを聞き終わる前に激怒した。
「どうしてそんなことを言うんだ――もう聞きたくない!」――と。
でも私にはその意味がわからなかった。
むしろその言葉自体をそのまま返したい気持ちになった。
「そこまで言わなくてもいいじゃない!」
「だって、だってそうだろっ!? お前の方こそなにいきなりアイツのことを話し出すんだよ、アイツがイイヤツだってことは言われなくてもわかってんだよ!」
「お前はアイツの何なんだよっ、調子になんか乗んな! お前の悪い所だ!!」
散々だった。
彼は怒ることなんてそうそうない温厚な性格だったはずなのに、最近話していなかっただけでこんなにも変わったと感じてしまうの?
私は、後悔したくなんかないのに……。
■ ■ ■
また、彼の元へ行く。
彼の友達曰く、彼には好きな人がいるらしいとのことだった。
まったくもってバカだった。
どうして私はその可能性を考えなかったのか。
昔から一緒にいるのにその事実にさえ気づけなかった。
漫画とかだとここら辺りで、その好きな人が、幼馴染で異性であった場合はその人となるフラグが立つけれど――そんなこと、現実世界に置いては驕りでしかない。
自分勝手な欲望だ。
さすがにここまでくると私も慎重にはなるもので。
何度目か覚えていなかったけど、聞いてみた。今度は出だしを変えて。
「好きな人がいるの?」――と。
そしたら真っ赤な顔をして、彼は口を目いっぱいに開けて怒鳴るように言ってきた。
「お前には関係ないだろ!?」
正直――重たかった。
言葉がこんなにも重たいものだなんてこと、知識でしか知らなかった。
毎日の大半を一緒に過ごしてきた彼が、急に私の傍から離れていってしまったかのように……。
□ □ □
話のあらましをその子に伝えると、その子は眉尻を下げて悲しげに呟いた。
「ごめんね」――それだけだった。
■ ■ ■
私は昔から優柔不断で怖がりで、慎重派だったと親から聞かされていたことを思い出す。
ああ――だからかな、この結末は。
「ウソツキ! 約束したじゃん!!」
「でも――でも、でも」
「だって言ったじゃんっ、〝応援するね〟って――!」
言った。
確かに言った。
――いま、私はそれを後悔していた。
■ ■ ■
ループなんてするんじゃなかった。
大切な親友と、大好きな彼――どちらか選べと言われたならば、私が選ぶのは、前者だ。
10年間もの間、満足な友達もいなかった私にとって初めての友達で親友な彼女は捨てられない。
同じ10年間を生きてきた彼も、近くにいたけど、私が描いていたモノとは正反対だった。
ショッピングやカラオケ、登下校を一緒にしていろいろな会話を楽しんだり――偏った考えかもしれないけど、それが私の思い描く〝友達〟がどういうものか――だった。
でも、それはやっぱり理想でしかなくて、本音を言えば、そんな人が目の前に現れるだなんてありえないことだと理解はしていた。
けど――――いた。
それが、彼女だ。
だから彼女の願いは極力叶えてあげたかったし、会うたび私に新しいことを教えてくれる日々はとても新鮮で、輝いていた。
友達の存在の大切さだって身をもって体験したし、心底彼女と一緒にいられることになれてよかったと思う。
でも、もう限界だったの。
許して、なんて。
これこそが驕り、なのかな。
許してもらえるだろう、そう心のどこかで思っている私は――卑怯者だ。
……もう一度。
今度は必ず、成功させてみせるから。
もう一度、私に微笑んで。