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王子さまと委員長  作者:塚原 蒔絵
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Side ―王子さま―

 用意していた台詞は言えなくて。
 準備していたのにダメになって。
 かっこいいところを見せようとしたら、本音だけがぽろりと口をついて出てしまった。
(馬鹿だ、俺)
 合宿から帰ってきてからというもの、落ち込みムードから浮上できない。
 委員長はあの後、熱を上げて倒れた。当たり前といえば当たり前だけど。
 や、つまるところ、俺のあの告白は聞かれていたのか? 聞かれていなかったのか?
 重要なポイントだけど、聞くに聞けない。
 というよりも、またしても――避けられている?
 いや、単に時間が合わないだけで、都合がつかないだけ……だと思いたい。
 ジョン二号はお留守番なのか、このごろの委員長はコンタクトで過ごしている。
 今は文化祭の催し物について討論中。
「それじゃぁ、お化け屋敷と、クラス劇、喫茶店のほかに候補はありますか?」
 耳になじむ声が聞こえて、目を閉じる。
 目を開けていると委員長を凝視しそうで怖い。
 そして、そんな俺の視線から逃げるようにそっぽ向かれるのも、正直堪える。
 腕を枕にして机に寝ると、痛すぎる木材が安眠を邪魔しようとする。
 嫌われたのだろうか。
「――はい、じゃあ王子さま役は木島くんで」
 いっせいに拍手が聞こえた。
 見ると周りの連中はなんだかほっとした様子で俺を見ている。
「え? なに?」
「蓮、多数決の結果だ、ご愁傷さま」
 中村が黒板を指差した。
 文化祭の出し物はクラス劇になったらしい。
 お姫さま役は当然女子で、王子さま役のところの名前に俺の名前が!?
 委員長の名前もある、けどそれは監督のところで。
「ちょ、まって、いつの間に」
「ま、ガンバレ」
 薄情者の中村は離れていく。
 委員長は俺を見て少し嬉しそうに笑った。
 笑顔は演劇に参加する奴へのご褒美ですか? 
「木島くん、頑張ろうね!」
 そんなこと言われたら、頑張らないわけにはいかないだろう。


 昼食時、いつものように屋上でパンをかじる。はみ出したイチゴジャムが口元につく。
「れーん、しけた面すんなよ。しゃーないだろ、多数決は」
「お前も上げたんだろ」
「でもほら、王子さま役になったんだし」
「お姫さまが委員長じゃない」
「わがままだなぁ」
 うまくいかない。
 ただ好きだから、こっちを向いてほしいだけなのに。
 努力をしようとすると邪魔が入ったり、ヘマをしたり。
 情けないのは、わかってる。
 へたれの烙印を押されても文句は言えない。
 中村は落ち込んでいる俺に、激励のつもりなのかカレーパンをくれた。
「じゃ、今回の文化祭が無事終わって、蓮が王子さま役を完璧にこなせたら委員長に告る。蓮はそれまでに委員長に好かれる努力をする! どうだ?」
 俺も協力するから、と元気付けられる。
 青い空はどこまでも続いていて、夏の雲を伴いながらゆっくりと歩みを進める。俺もあんな風に、少しは前に進めているのだろうか。
 委員長を好きだと自覚して、彼女に少しでもよく見てもらおうとして。
「空振りばっかりだな」
「そんなもんだ、青春は」
「くさいぞ、お前」
「若いうちはくさくていーの」
「……おやじ」
「蓮ちゃん、ひどい!」
 慰めてくれているのだろう。
 それに甘えている。
 手を伸ばして、好きだと抱きしめたら、どうなるのだろう。
 あのときの言葉は、伝わっていたのか。
「ガンバレ。お前が頑張ってんの、知ってるから」
 頑張って、いれたのだろうか。
 空回ったり、失敗したり、へたれな部分をずいぶん見られたけれど。
「そっだな、諦められないし。文化祭、頑張ってみるかな」
 ただ一言、きちんと告げたい。
 伝えてみたい。届いてほしい。
 どんな顔をするのか、笑ってくれるのか、それとも嫌な顔をするのか、どちらにしてもこの想いを伝えたい。
「王子さま、うまくできたら」
 王子さまみたいに、お姫さまが救いたいわけじゃないけれど。
 王子さまみたいに、かっこよくキメられないけれど。
 俺の王子さまは、委員長が好きなんだ。
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