神様のいそがしさ
一月一日
「いやー、最近は日本人は本当に贅沢になって私も休日出勤ですわ」
お雑煮を温め終わると、かまど(最近はコンロがメイン)の神様が言いました。
「ああ、かまどさんはまあわかりやすくお休みがあるだけいいじゃないですか」
「あ、レンジさん。あなたのおかげでずいぶん仕事量が減って助かっているんですけどね」
温めを終えたばかりのレンジの神様は呼吸を整えました。
「ぼく、短時間労働が基本ですけど、結構負担なんですよね。あと、最近やたらぼくたち新しい機能ついてるじゃないですか」
「でも、ブームが去ったら使われないという」
電気ポットの神様が悪そうな顔をします。
「ええ、まあそうなんですけどね。たまに思い立ったようにクッキーとか焼かれると、勤務時間長いじゃないですか。デートもしたいのに」
「なるほどね。おやつあっためとかもあるもんな君は」
「覚えててもらえるだけええやんか。わし忘れられてしもて昇格もでけんし」
「えっと?君は?」
「たこ焼き器です。やーほんとまいりますわ」
みんなはなるほどという顔をしました。
「長期休暇いいですねえ」
「お前は! ノンフライヤーか。最近家主がお気に入りという」
「ま、そのうちわしら達の仲間入りさ」
たこ焼き器の周りにはホットサンドメーカーやジューサー、ミキサーが長期休暇を満喫した黒い肌で微笑んでいました。
「まだわからないじゃないですか、私は進化しています」
「そうだな。世の中の流れはわからない。俺もだいぶ電気ケトルに仕事引き継いだし」
「あー私も長期休暇取りたいわ」
「かまどさんは家主がいないか外食じゃないとね」
「つらいわー」
言いながらも、かまどの神様は頬が緩んでいました。
休暇が多いのと毎日忙しいのとどちらがいいのだろうと考えながら、ノンフライヤーは将来に思いをはせるのでした。