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山桜咲くころ
作:晴天



第七章(四) 最後の


アース先生が持ち帰った地蔵を囲むように村の人達が集まって来ました。

「村の神社にある三体の地蔵さんは泣き顔なのに、この地蔵さんだけは笑ってるな」

村長の吾郎さんが、長年土の中に埋まっていたため判別しにくくなった表情を覗き込むように言いました。

「それに両手を上げとる」

松さんが雑巾で地蔵を磨きながら言いました。

「これが何処にあったもので、どんな由来があるか知ってる人はいませんか」

アース先生が集まって来た人達に聞きましたが、どうやら笑う地蔵のことを知っている人はいないようで、首を傾げるばかりで誰も答えてはくれません。

「お地蔵さんなんだから、神社か寺にあったんでしょう」

かなり酔っ払った梅子さんが一升瓶を片手に神社の傍に住む幸の父親に絡みます。

「あの神社は神主さんがいなくなって随分たつからね」

幸のお父さんは困ったように松さんの同意を求めます。

「神社の奥の蔵になんか書いたものでもあるかもしれんな」

松さんは幸の父親の肩に手をかけて絡んでいる梅子さんの手を払いのけて言いました。

「私が調べてみます」

アース先生が地蔵の由来を調べることとなって話は纏まり、謝恩会は地蔵を囲んで深夜まで続きました。






翌日に最後の裏山登山を終えた僕は、引越しの荷物を受け取る運送屋さんが来るまでの時間を明日から取り壊しが始まる校舎の教室で過ごすことにしました。

「茜も来てたのか」

僕が教室に入ると自分の席に座ってボンヤリ黒板を見ている茜が居ました。

「コアラも今日でこの村から居なくなるんだね」

「短い間だったけど茜たちのお陰で楽しかったよ」

「そうだね。コアラが探してた財宝は出てこなかったけどね」

「宝物は地蔵さんだったけど、他にもたくさんのものを掘り出した気がするよ」

「例えばどんなもの?」

茜が僕の顔を見つめて聞きました。

「そうだね。村には昔から人が住んでいて、今でも住んでいるということ。そしてこれからも村には人が住み続けるってこと」

「なにそれ?」

「上手く言えないけど、この村にも大切な暮らしがあるってことだよ」

「ふーん」

「それに・・・・それに・・・」

「それに?」

僕の「それに」に続く言葉を促す茜に「茜との財宝探しをしたことが、一番の宝物だ」なんて言える訳がありません。
茜は15歳の子供で、僕は大人なんですから。



「あたしは、コアラと財宝探しを出来ただけで宝物を見つけたんだって今は思うよ」

「そ・そう」

僕が思う宝物と茜が思う宝物には違いがあるのは分かっていますが、僕の胸はジーンとしました。

これが、山桜中学校の校舎で交わす最後の言葉。

明日には、この校舎も無くなりこの村から学校というものがなくなります。

村の教師として過ごす最後の1日は、晴天に恵まれ早咲きの山桜は僕と茜の旅立ちを応援するように小さな桃色の花びらと緑の葉を開いています。












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