第六章(一) 春を待って
吹雪の中で倒れた僕は、翌日から変わらず元気に学校に行きました。少しだけ変わったことは、裏山に電波を拾いに行くのを止めたことです。
茜の受験も間近に迫り、僕たちの財宝探しは一時中断することとなりました。
進路の決定に当たっては、茜のお父さんと教育委員会の井上作治さんが学校に来てひと悶着ありましたが、最後は本人の意思を尊重する形で村から通える『一ノ谷高校』になりました。
「先生、私は茜と暮らせることを楽しみにしていたんですよ。私と茜の母親との我侭で茜を一人ぼっちにしてしまったことを気にしていたんです。こんなことなら、最初から私が引き取れば良かった」
悔しそうに言う父親に、茜は「ごめんね。でも、この村に来ることが出来て良かったと思っているよ」と申し訳なさそうに言いました。
僕も茜は決して不幸の少女だとは思っていません。この村で、いろんなことを学び、いろんなことを考えることが出来たのですから。
それは、僕が嫌々転任して来たこの村が今では大切な場所になったように、自分の意思では得られないことが、『不幸』とか『不運』に隠れているような気がします。
「この村から、『虎穴高校』でもトップになれる秀才が生まれたというのに」
井上作治さんは、僕を睨みつけました。
「茜は、この村から世界に何かを起こしてくれる気がします。この村だから出来ることを茜はやってくれると思います」
僕は本心からそう思いました。
茜は進路の問題が解決して気持ちが落ち着いたのか、受験に向って熱心に勉強を始めました。茜の実力からすればトップでの合格は間違いないのですが、それでも手を抜くことなく過去の問題集を何度も解いて万全を期しています。
「コアラ、受験が終わったら伝説の続きを探そうね」
茜は時折、問題集から顔を上げて僕に笑いかけます。
事故とは言え裸で抱き合った僕としては、茜の屈託のない笑顔に照れてしまいます。
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