ツインテール その5
「ぐぎぎぃ、騙したわね。魔王め」
「ナニコイツ」
指を差して呆れ顔のぐっちゃん。
ホントなんなんだこいつは。
「わざわざ私の前に魔王を持ってくるとは馬鹿な日本人だ。私が誘拐犯だと把握した上でこの所業。まさに供物を神に捧げるようなもの!」
「何こいつ、誘拐犯なの?」
「そうみたいよ。俺と会ったときも自分から言ったし」
「ほざけ魔王!!」
由樹に指を差して怒鳴るツインテール。ふてぶてしい態度。腹が立ったのでツインテールの指をもって爪を立てる由樹。
「いだだだだだだだ! 魔王ね、発想が魔王!!」
「魔王じゃねぇし」
手を離す由樹。爪が食い込むようにしたので相当痛いはずだ。爪を立てた指をなめて涙目のツインテール。
「あたしが魔王」
「魔王かどうかなんて問題じゃない! そんなことはあたしが決める! 話しかけるな! うるさい!!」
ここにいる誰よりも魔王的な発言をしているツインテール。
呆然とする由樹とぐっちゃん。
ツインテールは指をまたなめ始めて痛い痛いとつぶやく。
「とりあえず仕切りなおそう」
そういってそのまま、空を眺めたり考え込んだりして何かを思い出そうとしている。なめている指を外してなにやら喋り始めた。
「えーとまずは魔王を誘拐して――」
「え、だれ、もう捕まってるの? ユキちゃん」
「真意はわからないがこいつが言うにはそうらしい」
「わかった。みんなに聞いてみる」
トランシーバーで語りかけるぐっちゃん。反応はない。
「でも実は陽動で言っているだけ本当は捕まっていなくて――」
「は?」
「え?」
数秒後返ってくる魔王たちの声。
無事な様子だった。どうやらツインテールは誘拐の段取りをおさらいしているようだ。
「こうして陽動をしている間に捕まえる作戦で――」
「ああ」
「なるほど、みんな誘拐犯が迫ってるかもしれないから警戒して」
『りょうかーい』と口々でトランシーバーから返答の声。
対策はあっさりとられる。
それに気にした様子もなく、というか二人の言葉が耳に届いていないのかまた『魔王を誘拐して――』と段取りを再確認する。
二回目の段取りも一通り終えた。
沈黙するツインテール。また考え込んでいるようだ。
「よし、私の仕事は終わったようだ。報酬をもらって帰ることにしよう」
「そうか帰れ」
由樹とぐっちゃんが見えていないのか言葉に反応することもなくそのまま立ち去ろうとするツインテール。
まさに傍若無人だ。
「いや理屈的に考えればここでもらっていくのが効率的だと考える」
きびすを返すツインテール。
「さぁ、さっさと金をよこせ」
目を見張るほどの恐ろしい傍若無人さでツインテールはぐっちゃんに手を差し出した。
「はやくよこせ、私には次の仕事がある」
彼女の思考回路を把握できるものは誰もいなかった。
「クライアントから聞かされている。魔王が依頼してきた、と」