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墓標 その3

 由樹が死んでいった魔王たちに手を合わせていると、不自然なことに気がついた。

 ぐっちゃんと交代するはずの他の魔王が誰も墓地に来ていない。

 ぐっちゃんからトランシーバーで連絡はしてあるのだが、誰も来ていない。

 おかしい。

 シュンが嫌われているわけではない。

 多分。

 シュンが嫌われているのかいないのかは判断する術は過去の記憶しかないが、嫌われているというわけではなかった。

 どちらかというと好かれていた。

 多分。

 もちろん談笑するシュンと他の魔王たちを由樹も目撃しているが、もし仮に他の魔王が示し合わせて由樹の前で取り繕っているのであれば、それは真実ではなく虚偽の事実ということになる。

 「…………みんなに聞こう」

 その変なスパイラルにはまろうとするので考えるのをやめて、トランシーバーで魔王たちに語りかける。

 応答はない。

 トランシーバーの電源のランプがつかない。

 ランプの故障かと思い電源を入れなおす。今度もつかない。予備のバッテリーがあるので入れなおす。再度語りかける。

 応答はない。それどころか電源の反応すらない。先ほどまで使えていたのに急に故障だろうか。

 「うーん。なんだ? 電波とかが悪いのか?」

 わからない。何もわからない。

 仕方ない。近くまで行ってみるか。相手の音がこちらに聞こえてこないだけかもしれない。

 「だとしたら故障かなぁ……高かったのに」

 トランシーバーを触って墓地からいつも住んでいる場所まで移動しようとすると、人影を見つけた。魔王ではない。

 「あ」

 そういえば忘れていたが魔王をさらった実行犯の男たちはどこにいったのだろうか。

 シュンを回収した部屋にもいなかったのでどこかへ行ったことは間違いないのだろうが。

 今頃、いつの間にいなくなったシュンを探して部屋をウロウロしているのだろうか。

 そもそもシュンが死んでいたのは、やつらの犯行だろうし。動転していたにしてはいろいろ頭からすっとびすぎた。

 だからこそ目の前の人影がその残党ではないかと由樹は思った。

 「ふはははは! 魔王は預かった!!!」

 正解だった。

 いや一度回収してきたのだから、台詞の言い方だと別の誘拐犯の可能性が高い。一日に二度魔王がつかまることなど稀だ。

 稀というか今まで一度もなかった。

 魔王がつかまること自体なかったのに、日に二度だと由樹の疲労感はひとしお。

 だがそんなことよりもなによりも目の前の人物に由樹は聞きたいことがあった。

 「褐色のやつとはグルなのか?」

 「余裕だな、石橋由樹。それ以前に狡猾なやつだ。あの褐色が私の仲間だと? 私を見るや否や攻撃をさせたくせに。ふふふ、まぁなぜそんなことをしたのかも理解できる。要はあれだろう。ガガイモがいないという情報を大々的に流しておいて、あのように不審人物が近づいてきた場合迎撃する作戦だったのだろうな。策にははまったが魔王といえどもやはり人間。見目麗しい少女が殴られるを見て止めに入ったのは間違いだったとしれ!」

 褐色とはグルではないのか。高らかに誘拐犯だと告げる人影はそう言い放つ。

 「私は恨む。殴られた痛みがまだ残っているからな。まずはお前を血祭りにして次はあの褐色のくそあまをそれこそ殴り倒してやる」

 頭が痛くなる由樹。遠くの方からかなり見覚えのあるシルエットだとは思った。だからこそ頭が痛くなった。

 誘拐犯。

 由樹の目の前にいる人影は見たことのある人物だった。

 特徴のある髪型と幼い顔立ち。左右にゆれる金色の髪。

 由樹は面識はあっても名前は知らない。だが呼称はあった。ツインテール。

 はさみ揚げを貪って褐色に殴られてトイレに閉じこもっていたツインテールが由樹の目の前に仁王立ちしている。

 「あ、忘れてた」

 慌てた様子でもう一度咳払いをするツインテール。

 「お気づきかとは思うが、私はガガイモではない。人間だ! 驚きだろう!」

 ツインテールのその言葉に由樹はまさしくびっくりして何も言えなくなっていた。

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