第5話:オンステージざぁます♪
「ほらっ! 早くしなさいっ! もう30分も遅刻なんですよっ!!」
「あっ! ちょっと待って……じゃあ、皆またねー♪」
ザマス教頭に引きづられて、浅岡先生は教室を去って行く。
……き、教頭先生はこれから毎日来るのかな……?
もちろん、そんなはずはないだろうけど……ないよね??
ふふふっ!! いよいよこれからだなぁっ! ふふふっ! ダンス! ファンク! ダンスっ! ファンク!!
「ダンスっ! ファンクっ!!」
「……あんた、授業が終わったからってそのテンションはないわ」
えっ?! 口に出てたっ?!
「出てたって……あんた、あの音量で喋って自分で気づかないわけ?」
「うんっ! 全っ然気づかなかったっ!」
うーん……やっぱり私の口は一回、補修工事をしたほうがよさそうだ。
ぽんぽん
えっ?
急に肩を叩かれ、私はビックリして振り返る。
「あ、あの……そろそろ行かないと……」
そこには、若干落ち着かない様子のあずちゃんがいた。
「あぁ、そういえば、あんた達、ダンス部の見学に行くんだっけ?」
「うんっ! ねぇっ、美樹ちゃんも一緒に行かない?」
美樹ちゃんがいてくれれば、すっごく楽しくなる気がするんだっ!
「あー……私、今日ちょっと用事あるからさ」
悪いわね、と言って美樹ちゃんは軽く笑った。
そっか……しょうがないよね。
私とあずちゃんは美樹ちゃんと別れ、ダンス部の活動が行われている卓球場へと向かう。
卓球場へは、一度外履きに履き替え、体育館の裏手へ回らなければならない。
校舎から外へ出ると、野球部の掛け声がグラウンドいっぱいに響き渡っていた。
春風が頬をくすぐり、暖かな陽の光は、私の気分を高揚させた。
んーっ! 楽しみだなぁっ!!
「楽しみだねっ! あずちゃんっ!」
「…………」
あ、あれ、反応がない……?
「あ、あずちゃん……?」
「…………」
やっぱり無反応。
あずちゃんは、グラウンド方面を向いたまま固まっている。
あれぇ? なんか様子が変だぞっ?
私はあずちゃんの目の前でひらひらと手を動かしてみた。おーいっ!
「……ひゃぁっ!!」
「うわぁっ!」
あずちゃんがビックリした声にビックリしちゃった……。
「あずちゃん、大丈夫? なんかボーっとしてたけど……風邪?」
「う、ううんっ! なんでもないのっ!! それよりほらっ! 早く行かなくちゃっ!」
あずちゃんの勢いに押され、私はただ、う、うん……と答える。
……大丈夫かなぁ?
卓球場の前には、新入生だと思われる、真新しい制服に身を包んだ生徒が列を成していた。
「あずちゃん、この列って何?」
「え、えっと……ダンス部、今日は歓迎会をやるって、ビラを配ってたから、多分その列じゃないかな……?」
へぇ〜そっかっ!!
私たちもそれに倣って列へと並ぶ。
列がすこしづつ前に進むにつれ、鼓動の音にも似た重低音が卓球場の中から漏れてくる。
一歩、また一歩と進むたびにその音は大きくなっていった。
ドン……ドン……!!
・
・
・
すっごーいっ!
卓球場の中に入ると、そこはとても学校とは思えない光景が広がっていた。
窓には暗幕が張られ、照明は、ブラックライトだけだった。
「凄いねっ!! あずちゃんっ!」
「えっ?! なにっ?!」
凄い大音響で、私の声が聞こえないのか、耳に手を添えて聞き返してきた。
よーしっ!
ふと、先ほどから鳴り響いていた音楽が止む。私にとっては、最悪のタイミングだった。
「すぅごぉいぃねぇぇぇっ!!」
「……え、えみちゃん……」
音楽が鳴り止んだ会場に、私の声だけが木霊する。
「…………」
……す、すっごい皆の視線が痛い……。
フッ
突然、ブラックライトの薄暗い灯りが消えた。
ざわめきだす場内。
そして……
「Yeah,始めるぜShow time! 見たこともねぇ世界にお前等を招待っ! マジはんぱねぇ俺らの正体! YO!Checkしときな、All right??」
パッとステージ上にスポットライトが当たったかと思うと、そこにヒップホップな恰好の男の人が、再び流れ出す大音響と共に現れた。
会場は一気に沸き立つ。
「俺の名前はMC HOKUTO! HOTでMust ParsonだOf course!! えー……先に言っとくぜ苗字は近藤っ! 近藤北斗本名で登場っ!」
ちょっと詰まったことに対してか、本名を言っちゃったことに対してかわからないけど、歓声と笑い声が半々くらいで聞こえてきた。
近藤ーっ!! という声が所々で聞こえてくる。
あっ、本名のほうか!!
近藤さ……MC HOKUTOもなんとなく失敗したことに気づいたのか、苦笑いを浮かべていた。
「い、Yeah! 行くぜOpening act!! 今日はやばいゲストが飛び入り参加だっ! YO! みてぇ奴等は声上げな Say HO!!」
HOOOOOOOOO!!!!!
私とあずちゃんも、それに倣ってほぉ〜〜っ!! と叫んだ。
た、たのしぃぃっ!!
「OK! 行くぜ、Opening act!! チーム名は……TEACHERS!!」
そう言ってMC HOKUTOは舞台袖へはけた。
ドキドキっ!!
流れ出す音楽。テレビでお色気シーンのときに決まって流れるあれ。
ステージ上にはまだ人は現れない。
なにか、遠くのほうでもういやーーっ! と聞こえた気がする。
……気のせいかな?
なおも誰も現れないステージ上。
皆が、あれ、おかしいぞ? と思い始めた、その時だった!
――この場にいた、全ての人は、この次の瞬間の衝撃を、決して忘れることはできないだろう。って、大袈裟じゃないからっ!
「はぁぁぁぁいっ♪」
「はっ恥ずかしすぎるぅっ!!」
絶句。
そこに出てきたのは、半泣きの浅岡先生、それと、物凄くノリノリのザマス教頭だった。……何故か、ボディコン姿にハイヒールで。
笑顔、笑顔、笑顔! ザマス教頭のメガネは妖しく光り、そのハイヒールはコツコツと心地いい音を辺りに響かせる。
2,3回ポーズを取ったかと思うと、ザマス教頭は颯爽と卓球場から去っていった。
そして取り残された浅岡先生。
音楽はフェードアウトしていき、その場肝試しの後のような空気が流れる。
「い、いえぇっ!まじはんぱないしょうけーすです! わ、わたくししょうへいでーす! しゅみが爆発とんでけーーーーっ!」
MC HOKUTOも動揺を隠せないようで、ラップにキレがない。
……しょうへい?
「わ……私の趣味じゃないもんーーっ!!」
叫びながら、逃げるように去っていく浅岡先生。
……不憫だ。
「い、Yeah!! 気を取り直して……一発目っ!」
あれを一発目とは認めたくない、しょう……MC HOKUTOは、無理やり叫んだ。
「トップバッターにふさわしい、トップランカー! 行くぜ、ブレイカー5人衆! BOOT CAMPER!!」
わぁぁぁぁっ!!
名前をコールされて、飛び出してきた男5人組。
今回は、音が鳴り出す前に出てきて、ポーズをとった。
すごいすごいっ!!
BOOT CAMPERは本当に凄かった。
華麗なフットワーク、頭で回る回る、片手で逆立ちした状態で跳ねる跳ねるっ!!
まるでサーカスを見ているかのように、信じられないような技をたくさん繰り出していく。
いわゆる、テレビなどでよく見る、”ブレイクダンス”だった。
バンっ!!
音楽と同時に5人はピシッと止まった。
これぞまさに「決まった」瞬間だろうと思う。
うわぁぁぁぁぁぁっ!!
大歓声の中、ステージを降りるBOOT CAMPERの5人。
「うわぁっ! ブレイクダンスだよっ! あずちゃんっ! すごいねっ!!」
「うんっ! うんっ!」
さっきからテンションがあがりっぱなしの私は、もう凄い以外の言葉を忘れてしまったかのようだった。
「Yeah,派手に決めてくれたぜBOOT CAMPER! さぁ、どんどん行くぜっ!! 次は……」
ドゥクドゥクっ!!
突然、スクラッチ音が鳴り響く。
「YO!! どうしたDJ Lynn?!」
何かと思って、DJブースの方を見れば、女の人――DJ Lynnさん? が不機嫌そうにMC HOKUTOを睨んでいる。
「あっ!! エミちゃんっ! あの人っ! あの人だよっ! 私が去年見たのっ!」
珍しくあずちゃんは声を大きくしている。
そんなに凄いんだぁっ! うんっ、楽しみっ!!
それを見たMC HOKUTOは、降参……と言うように両手を挙げ、DJブースに向かう。
「Yeah,ここからはMC兼DJでやらせてもらうぜっ!! さぁっ! 次は来たぜ来たぜ本命Lady'sだっ!」
わくわくっ!
「OGも混じったこのチームっ! 数々のコンテストを荒らしてきた猛者たちだっ!」
わくわくっ!!
「YO!! 魅せろリアルバイヴスっ!! 厳しい戦場でもサバイヴス! そんじょそこらのシャバいブスなんて目じゃねぇぜっ! 奴らは"Re.vybz!」
わくわくっ!!!!
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