今日も、明日も、その先も…
―今日も、明日も、その先も…―
空に向かって手を伸ばしてみた。
そこに何かがあるように、ぎゅっと手を握り締めてみる。
だけど当然なにもなく、宙を掠めた手のひらにはぬくもりも感じられない。
夕日が、夕日だけが落ちていく世界の中で、青年はそっと瞳を閉じて伸ばした腕を首から下げたペンダントにあてて夕日から背を向けた。
世界が変わっていくのが怖くなって。
世界の色が変わっていくのが怖くなって。
オレンジ色の夕日は、まるで彼のキャラメル色のサラサラの髪を思い出す。
風を受けるとサラサラ、サラサラと音を立てるように綺麗になびいていたあの細い髪。
夕日が嫌いなわけじゃない。
寧ろ好きな方だと思う。
夕日が色を変えていくように、音楽をアレンジしていくのが大好きだから。
壮大な空の色を、様々な星座が浮かぶ夜空に変えていくあの大きな太陽。
俺が月なら、そうだな…あいつは太陽だったよな
チャリンっと小さな音を立ててペンダントトップが揺れる。
普段は見えないそのペンダントも、プライベートな時間の今、シャツのボタンを外しているために露わになっている。
今度は青年は確かな形のあるそのペンダントを握り締めた。
決してあたたかくはないその小さなかたまりを胸に、青年は再び夕日に視線をやる。
もう半分ほど見えなくなった太陽が、最後まで輝きながら少しずつ沈んでいくのが見てとれる。
最後まで、最期まで、輝きを失わなかった彼と太陽がやはりよく似て見えて、青年の瞳には薄く涙が滲んだ。
幸せだったのかな…本当にあいつは、あれで………
つぅっと一滴、青年の頬に涙が流れる。
だが、どこからか柔らかい、優しい風が青年を包むように流れてきた。
まるでそれは、『馬鹿だな』と言いながらそっと抱き締められたように優しく、優しく。
彼は生前から言っていた。
自分は幸せだと。
それは卑屈になったりして言ったわけではなく、心の底から笑顔で。
決して『普通の幸せ』ではなかったであろう人生なのに、誰よりも幸せそうに。
青年はもうほとんど見えなくなった太陽に向かって微笑みを向けた。
代わりに、月が大きく空を照らし始める。
小さな星々が、まるで音符のようにさえ見えてくる。
有難う
太陽の次は月の出番だから
今度は、俺の番だよな
だけど…
たまには、泣いてもいいかな
今日も、お前を愛してる
明日も、その先もずっと、ずっと…
―――――光。
END 20151009
ラインやりながら頑張ってみたけど…如何でしたでしょうか。
どうにもイマイチ納得いってないんですが、光くん亡きあとの勝行くん、な設定です。
もう吹っ切れてる頃かな?
でもやっぱり彼だってたまには泣きたいと思うんです。
あと、『ワンフレーズで堕ちた恋』の世界観を引き継ぎたかったんですが…できませんでしたw
さくらちゃんが気に入ってくれるようなSSを書きたいのに…!
すみません、咸月にはハードルが高すぎました。
寧ろ高跳び?棒高跳び?
…話それてますねwww
ちょっと、世界観を壊さずに情景を思い浮かべられるようなSSを求めて修行しますw
有難うございました~。