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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

勇者、来訪

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閑話 ※勇者視点

(結構急いで書いた感。推敲不足で矛盾が出てくるかも……あとで書きなおしが入るかもです)
「ここが『欲望の洞窟』か……」

 ワタル・ニシミ。日本語表記で「西見渉」と書く彼は、3年前にラヴェリオ帝国のストリング領に勇者召喚された勇者だ。
 その後3年間、つい先日に至るまで、自分は魔王を倒すために召喚されたと思っていたし、ブリー・ストリング伯爵もそれを望んで訓練させていた。
 が、ワタルの存在は国に露見した。それも、大きな手柄を立てる前にだ。
 もし大きな手柄を立ててからであれば、多少は言い訳ができたであろうが……あろうことか、ストリング伯爵は国に無断で勇者召喚を行っていた。
 勇者というのは戦略兵器に相当し、冒険者ギルドでも無条件でSランクに認定される存在だ。
 それを国に隠し――個人で所有しようとしていた、と、ブリ―・ストリング伯爵は断罪された。

 日本で言うなら、個人でミサイルを開発し、武装していたようなもんだ、銃刀法違反なんてもんじゃない。
 ましてや隣国へ勝手に攻め込もうとしていたともなれば、国家反逆罪もやむなしだ。
 ……まぁそりゃ、どう考えてもストリング伯爵が悪いよなー。と、ワタルも納得していた。

 実際、伯爵は「自分こそ皇帝にふさわしい」と言わんばかりに権力を欲していた。というか、ワタルへの自己紹介が「初めまして、勇者よ。私は未来の皇帝、ブリー・ストリングだ。今はまだ伯爵だがな」とかいう、色々問題だらけなものだった。
 そもそも伯爵家の当主がどういう筋書きで皇帝になるつもりだったのだろうか。それこそ皇帝の血筋でもないし、クーデターでもしてもぎ取るしかないだろうに。

 結局伯爵は本物の皇帝に断罪され、ワタルは、皇帝のご先祖様とかいうハク・ラヴェリオに保護された。
 大変長命な種族で、その美しさとあいまってハイエルフではないかと噂されているハク。皇帝の座はとっくに子孫に明け渡し、自らは離宮で隠居生活をしているという。もっとも、ラヴェリオ帝国建国時から変わらぬ美貌を持つその身は、ただそれだけで権威の塊であった。
 しかも現役のAランク冒険者『白翼の女神』でもあるという、とんでもない存在だ。
 そのハクに保護されたことで、ワタルは晴れてラヴェリオ帝国公認の勇者となった。

 ワタルはその後、訓練のため所属していたストリング騎士団から退団し、改めてラヴェリオ帝国の所属となった。正式な身分はまだ検討中で、今のところはハクの近衛騎士という扱いである。

 そんな勇者がなぜ『欲望の洞窟』へ来たのか。

 それは、商人が帝都に持ち込んだアイテム、トランプが原因だった。
 そのトランプは、周りの紙とは一線を画した良質な紙を使用し、かつすべて綺麗に印刷された状態のものだった。
 ワタルはそのトランプを見た瞬間、もう忘れようとしていた前の世界――日本のことを、思い出さざるを得なかった。しかもそのトランプの箱には、あろうことか……バーコードが、ついていた。この世界ではありえない、懐かしい、とても懐かしい物だった。
 日本人にとってはあたりまえで、この世界の住人には模様にしか見えないそれは、確実に日本とのつながりを示していた。

 あとはまるでお膳立てされているかのように簡単だった。
 ハクに休暇を申し出てその理由を告げた所、なんとハクがお忍びで行く『お気に入り』の場所こそが、トランプの入手先だろうと、ハクが教えてくれたのだ。
 ハクとしても止める理由は無かったのだろう。あっさりと許可してくれたし、馬車も手配してくれた。

 そうして馬車に揺られて半月ほど。ようやくワタルはこの『欲望の洞窟』までたどり着いた。

「……ここ、で、いいんだよな?」

 そこにあったのはお粗末な冒険者ギルド出張所と、宿屋。それだけだった。
 (あとで聞いたところ、少し離れた所に鍛冶場もあるらしいが、そこからは見えなかった)
 ワタルは、早速宿屋に向かった……が、入りかけたところで先にギルドに挨拶した方が良いなと思い返し、ギルドへ向かい、簡単に挨拶をして――がっつり引き止められ、お茶を頂いてしまった。
 ……Sランクというのも大変だな、少し前、Cランクの時は全然だったのに。と、ワタルはぼやいてみた。
 そして改めて宿屋に向かった。

「い、いらっしゃい、ませっ」

 入って早々、ドレス姿の女の子が待ち構えていた。
 さらさらの金髪が、お辞儀に合わせてしゃらりと流れる。瞳はどこか遠くを見ているようで、そして

「ほっ、本日は『踊る人形亭』へようこそいらっ()ゃいました、オーナーのロクコです」

 ものすごい勢いでアガっていた。しかも噛んだ。
 ……不覚にも、和んだ。ワタルは思わず笑みがこぼれる。
 ただ、どうしてかワタルはロクコから目が離せなかった。

「お客様? ど、どうかなされましたか?」
「え、あ、すみません。ワタル・ニシミです。ええと、スイートがあってそこがおススメってハク様に聞いたんだけど。あとご飯もすごい美味しいって」
「えぁっ?! はひっ! ちょっとまっててください! あ、そこ椅子あるから!」

 そう言って一度中に駆けていくロクコ。敬語を使うのになれていないのか、既に口調が滅茶苦茶だったが、ワタルは気にしないことにした。

 宿の中に入ると……ほんのりと、日本の香りがする、気がした。

(やはり……何かあるな、ここには)

 思い返せば、3年間。色々なことがあった。……ストリング騎士団の元仲間は元気だろうか……と思い出そうとして、トラウマも一緒に思い出しそうになったので途中でやめた。
 ちょうどロクコも戻ってきた。……やはり、なぜかロクコが気になってしまう。

「こっちです」

 ロクコの中途半端な敬語に誘われて進む。
 ……目の前を、金髪と、可愛いお尻が揺れていた。
 誘惑されているわけではないことが分かっていても、何故だろう。艶というか質感というか、どうしてもお尻から目が離せない。おかしい、こんなことは一度もなかった。どこか懐かしさを感じつつも、胸がドキドキと高鳴ってしまう。

(撫でてみたい――はっ、今俺は何を考えていた?! 相手は子供だぞ!)

「お客様?」
「あっ、いや、な、なんでもないです!」
「いえ、その、ここがスイートなので。あ、こちら、鍵です」
「……ありがとうございます」

 気が付けば、スイートルームまで案内されていたようだ。オーナーから鍵を受け取り、部屋を見る。
 窓ガラス、壁紙、家具……これらはまだいい。意匠がどうにもどこかで見たような気がするが、まだこの世界にあっておかしくないものだ。
 だが、部屋の中央にマッサージチェアが置かれていたのはどういうことだ。しかも、料金箱にお金を入れると動くとか、あからさまにおかしい。

「……コンセントとかついてないよな?」
「あ、お客様。ご飯はいつにしますか? 今の時間だと朝食で――ああ、食券買ってもらわないとだった……ああでもスイートだしここで注文でもいい、のかしら?」

 なんともあたふたと接客慣れしていないことがよくわかる状態だった。だが、ワタルにはそれが逆に微笑ましく、悪い気はしなかった。

「うーん、それじゃあ何かおススメを。パンもおいしいんだって聞いたけど」
「おススメね。そりゃもう『めろんぱん』がおススメで――はないです、ウチの宿は白いパンがおいしいと評判でして」

 めろんぱん。今、ロクコは明らかに失言し、ワタルもそれはばっちりと聞いてしまった。

「……ロクコちゃんといったっけ。君は何者だい?」
「こ、この宿屋のオーナーよ?」

 目をそらすロクコだが、ワタルにはある程度想像がついていた。
 ハクのお気に入り。ハクがこの宿を勧めた事実。そして、宿の様式。これらを総合的に考えて、練り合わせた結果、ワタルは言う。

「……僕の、パートナーになってくれませんか?」
「え、イヤよ」

 即答だった。


(ちょいと忙しいので、しばらく投稿ペース遅めです)
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