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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

安定した日々?

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不死鳥

「そういえばケーマ。不死鳥の卵はまだ孵らないの?」

 やべっ、すっかり忘れてた。

「お、おう。そろそろレドラも卵見て反射的に潰す発作がなくなっただろうし、いい頃合いだろうな。頼んでこよう」
「へー。そういう発作があったのね。それじゃ仕方ないわね」
「そうそう、仕方なかったんだよ」
「……かーらーのー?」
「忘れてた。ごめん」

 くそう、最近察しがよくなってないかロクコ。前は十分これでごまかせてたのに。

「……パートナーだもの。ケーマのことはよく見てるから分かるのよ」
「何、俺の事そんな……ストーカー?!」
「つ、追跡だなんてしないわ、パートナーだからよ? 一心同体、でしょ? 見るくらいいいじゃないの、襲撃するわけじゃあるまいし」

 襲撃とか、寝るの邪魔されたら怒るぞ俺は。正当な理由があれば許すけど。

 で、ゴーレムに手紙を持たせて『火焔窟』に向かわせる。洞窟とは別に連絡用の通路、というか部屋を作っておいた。出入り口がなくてウチの『欲望の洞窟』とあっちの『火焔窟』の領域とで半々になっている部屋だ。ダンジョンの『配置』機能が無ければ入れないから、冒険者に邪魔されることも無い。お互いに用事がある場合はこの部屋を使う取り決めになっている。
 尚、出入り口も窓もないが、ダンジョンなので酸欠になる心配もない。

「おォ、久しぶりかァ? いや、そうでもねェなァ、ケーマ」
「前に会ったのはこの部屋作った時だから、1ヶ月くらい前かな」
「そんなモンかァ。ニンゲンにはそれなりの時間かァ?」

 何が嬉しいのかニヤッと顔を歪めるサラマンダーのイッテツ。『火焔窟』のダンジョンコア。気さくで良いやつだ。抜けているところもあるが、優秀なところもある。抜けてるところもあるが。抜けてるところもあるが。

「そんじゃァ、前の約束通りレドラにブレス吐いてもらうといいぜェ」

 レドラにブレスを吐いてもらうため、ロクコを連れて『火焔窟』へお邪魔する。50階層のボス部屋に案内された。ここであればレドラの全力ブレスに耐えられるということだ。
 尚、レドラだがまだちょっと卵が怖いらしい。ドラゴンのくせに情けない奴め。
 しかしレッドドラゴンのブレスで育つ不死鳥とか、どんなことになるのか想像もつかない。

「本当に大丈夫かッ?! 歩きだしたり走ったりしないよなッ?!」
「早く孵さないとまた歩くかもしれないな。だから全力で温めてやってくれ……潰すなよ?」
「わ、わかったッ!」

 不死鳥の卵でつくったタイルを敷いて、その上に不死鳥の卵を置く。準備ができたところで俺とロクコはボス部屋の向こう、ダンジョンコアが置いてある部屋で待機する。
 余波だけでストーンゴーレムが吹き飛ぶレベルのブレスが吹き荒れるボス部屋に、戦闘力のない俺とロクコが居れるはずもない。けど刷り込みとかがあるし、なるべく早く駆けつけられるようにしたい。というわけでイッテツは快くこの部屋を使えと言ってくれた。
 尚、イッテツの出すモニターでボス部屋の様子が窺える。なんて親切な野郎だ、イッテツめ。

「んじゃ、いくぞー……すぅぅぅ……ふーッ!」

 と、ボス部屋でフーフーとブレスを吹いて卵を温めるレドラ。
 いや、フーフーというよりカッ、カッって光を放ってるレベルなんだけどな。
 不死鳥の卵タイルのおかげで卵を置いてある床がマグマ化することもない。周りはグツグツ言ってるけど。尚、ロクコはモニター越しに直視して「目がー!」とか言っていた。

「ふー、ふー……はぁ、はぁ、さ、さすがにすこし疲れたぞ……ッ」

 30分ほど本気ブレスを吐き続け、ようやく一息つく。……驚異のスタミナだ、さすがレッドドラゴン。

「あとでアイスを奢ってやろう」
「『あいす』? なんだそれ」
「冷たくて甘い菓子だ。口に合うかは分からんが、俺は美味いと思うぞ」
「へぇ、そいつは楽しみだッ! ならもうちょっと頑張るよッ。ふーっ、ふーっ」

 さらにブレスを連続で吐き続けること30分。

「ん? おい、卵が動いたぞッ ヒビ入ってるッ!」
「お、本当か。じゃあそろそろ部屋に入るぞ」
「ちょっと待てェ。今部屋の中がすごく熱いから気を付けろォ?」
「……え、どれくらい暑いの?」
「んー、ニンゲンに分かりやすく言うとォ……窯の中と同じくらいかなァ。肉が焦げるぜェ?」

 そりゃヤバい。でも密室で超高温のブレスを吐き続けたらそりゃそうなるか。
 入り口側の扉を開けてもらい、少しの間部屋が冷めるのを待つ。その間にも卵はコツコツと内側から叩かれ、ヒビが大きくなる。……開け方にこだわりがあるのか、非常に丁寧な仕事だ。真ん中あたりで綺麗に真横にヒビを作っている。このままいけば一周してパカっと開きそうだ。
 俺の隣ではロクコがまだ入っちゃダメなのかとこちらを窺っている。

「……よし、そろそろいいぞォ」

 イッテツがそういうと、ロクコは高熱のサウナ並にまで冷めた部屋に飛び込んだ。
 開けた扉から、じりりと焼けそうな熱気がこちらまで伝わってきた。俺もゆっくりロクコに続いてボス部屋に入ったが、むき出しの肌に熱が痛い。

「暑い! 卵どこっ! 暑い!」
「おッ、来たかロクコッ! こっちだこっちッ もうすぐ孵るぞ!」

 レドラに招かれて行くと、あと少しで卵のヒビが一周するところだった。

  *

 そして不死鳥が孵った。
 雛は小さく、しかし輝くような白い羽をしていた。産まれてもう羽が生えそろってるのか。鳥ってそういうもんなんだろうか。

「ほォ……不死鳥かァ? 羽が赤くないようだが……どっかの神の先兵のペットで青い不死鳥がいるってのを聞いたことはあるがなァ」

 青か、完全燃焼の炎の色だな。っていうかそういう不死鳥もいるのか。となると、やはり生まれる前に浴びた炎の色とかそういうので色が変わるんだろうか。

「ほーら、私がフェニの飼い主よー、こっちみろー」
「ぴー!」

 フェニ、って不死鳥の名前か。ゴブ助の時と言い、ロクコはわりと直接的な名前を付けるなぁ。
 ロクコの呼びかけに従ってぱたぱたと羽を動かす。まだ飛べないようだが、しっかり飼い主として認識しているようだ。

「ちなみに触っても熱くないのか?」
「大丈夫だろォ。不死鳥の炎は熱い火ィじゃねェ、幻術みてェなモンだァ。俺のと同じだなァ。……火を出すスキルがあるはずだからそれ食らわなきゃ平気だろォ、今のうちに命令して縛っとけェ」

 なるほど、そういうもんなのか。俺はイッテツのアドバイスに従い、仲間を攻撃(フレンドリーファイア)しないように命令しておいた。

「これでよしっと。どれ、俺にもちょっと触らせてくれ」
「え、なによ。今度は羽もぐの?」
「おいおい、俺を何だと思ってるんだ」

 羽をもぐ……不死鳥の羽毛ぶとん……それもいいかもしれないが、いやまぁ、うん。とりあえず今は触りたいだけだ。俺はフェニに向かって手を伸ばした。

「ぴーッ!」
「あだっ?! ちょ、なにすんだ痛いって、痛ぇ!」
「ケーマ、嫌われてるわねぇ」

 クチバシでものっそいつつかれた。……もしかして、卵のときに何度も破壊したの覚えてるんだろうか。案外根に持つタイプなんだな不死鳥め……

「くそう、こうなったら餌付けだ。イッテツ、不死鳥って何食べるんだ?」
「炎とか食べるぞォ。おいレドラァ、ブレス食わせてやれェ」
「おうッ! ちょっとどいてくれッ」

 フェニをその場にのこし、俺とロクコが離れたのを見てカッと本気ブレスを放つレドラ。……やべぇ、余波が後ろまできてるんだけど焦げそう。

「ぴぴーッ♪」

 そしてそのブレスを浴びて嬉しそうにしているフェニ。ククク、たんと召し上がるがいい。……あれ? でもこれ俺じゃなくてレドラが餌付けしてることに? しまった。
 ……ちょっと火魔法スキルの練習しておくか。




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