挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

ご近所サラマンダー

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

70/290

第二次ダンジョンバトル、ボス戦1

『ガオォオォオオオオォオ!!!』

 レッドドラゴンの咆哮に地面がビリビリと震える。
 モニター越しなのに威圧感がヤバい。これがドラゴンという生物か。

「……ご主人様すみません、漏らしました」
「俺も漏らしそうだよコイツは。……『浄化』」
「ひゃふっ……あ、ありがとうございます」

 ニクに『浄化』をかけると、しゅわっと綺麗になる。ロクコやイチカの方は大丈夫だっただろうか?

「レッドドラゴンとか、Aランク冒険者パーティーでも犠牲出してようやく勝てるレべルやしな。Eランク冒険者のニク先輩やご主人様が漏らしてもしゃーないわ。ロクコ様は大丈夫やったか?」
「大丈夫よ、自分で『浄化』できるから」

 ロクコはだめだったらしい。
 まぁそれはさておき、このレッドドラゴンをどうにかしなければならない。
 ……やれるだけやってみよう。


  *


「カッカッカ! やっぱりアタイの敵じゃないねッ!」

 ゴーレムをブレスで溶かし、レドラは高らかに笑った。

『さすがレドラだァ、だが気を付けろよォ?』
「112は心配性だねッ! 見てただろ、一撃だったじゃないかッ!」

 さすがに水が流れてきたときは驚いたが、すぐにイッテツが穴を開けて排水したため床が濡れた程度しか被害はない。しかし、敵性反応がある水、っていうのは一体何なんだろうかとレドラは首を傾げた。
 スライム……いや、この数は? もっと小さい何か……水に溶ける何か? と、レドラが思考を巡らせていたところで新たなゴーレムが入ってくる気配がした。

「ハッ、いくらこようが返り討ち……だ……お、おいッ?! ちょっとまてそれはッ!」
『あァ? どうしたレドラ……うお、こいつァ……』

 レドラがブレスを吹きかけようとして、あわてて飲み込んで止めた。それを不思議に思ったイッテツだったが、入ってきたゴーレムを見て納得した。

 そのゴーレムは、盾の代わりにクリスタルの像を持っていたのだ。

「お、おいッ! これ、アタイが勝ったらくれるっていってた像じゃないかッ?! 前貰ったのとペアのやつッ!」
『ハハハッ! これはブレス使えねェなァ、いやらしいやつだァ』

 ブレスで吹き飛ばそうものならクリスタルの像も吹き飛んでしまう。像が欲しくてダンジョンバトルを受けたといっても過言ではないのに、まさかその景品を盾にしてくるとは。

「くッ、なら爪で直接……ッ!」

 直接爪でゴーレムを潰そうとするレドラ。だが、ドラゴンの大きな爪では細かい調整ができない。敵をまとめて薙ぎ払うのには向いているその爪は、(たて)は無傷のままゴーレムを倒すという芸当ができるとは思えなかった。

「……ガウゥッ……」

 困った。手が出せない。
 唸りを上げて脅そうにも相手はゴーレム。これが動物系とかの意思があるモンスターであれば、腰を抜かすなり像を投げ捨て逃げ出すなりしていたはずだ。
 クリスタルの像を持ったゴーレムが剣を抜いて切りつけてくる。
 下手に払いのけるわけにもいかず、あえて食らう。
 ……ギャリリリリ!! という奇妙な音がして、レドラの鱗に傷がついた。

「うおおおッ?! 魔剣かッ?!」

 あわてて1歩退く。しかし羽の先で危うくクリスタルの像を引っかけて落とすところだった。羽をできるだけ折り畳み、引っかからないようにする。

「うっぐ、なんてやりにくいッ……!」

 再びゴーレムが迫ってくる。(たて)を構えて。
 レドラはまた退く。せっかくのお宝に傷をつけたくはない。ただその一心で。

「うーん、どうしたもんかな……って、あれ?」

 逃げ回るように退いていたが、いつの間にか床が水浸しになっていることに気が付いた。
 ばしゃん、ぱちゃん、と水がまとわりつく。見ると、排水のためにあけた穴がゴーレムの手によって塞がれようとしていた。……恐らくこれは、敵性反応のある、例の水だ。

「こざかしいッ…!」

 排水を妨げるゴーレムたちにブレスを放とうと息を吸い込むが、そこにさっきから相手をしているゴーレムが回り込む。……クリスタルの像を持って。

「ーーッ!!」

 またも口の中に吐き出しかけたブレスを飲み込む。ガフン、と、口から飲み込み切れなかった熱が漏れた。

「なら、直接爪でッ! 通路ごとぶっ飛ばすッ!」
『おいだめだレドラ、そこより先はボス部屋の外だァ。お前がボス部屋から出ると……階層を突破されるぞォ』

 ボス部屋はボスが居るからこそ強固で、密閉した空間にもできる。
 逆にいえばボスが居なければ、敵性反応を持った水が下の階層に流れ込んでしまう。……つまり、5階層を突破されて負けが確定する。
 かといって、レドラにとってはこのまま敵に手を出せないというのは、到底耐えきれるような事態ではなかった。レドラのスペックを考えればこのまま1日が終わるまで追いかけっこを続けることも可能だったが、痺れを切らしてレドラは叫んだ。

「どうすりゃいいのさッ?! こんなんじゃ戦いにならないよッ どうにかして(・・・・・・)112ッ!」
『……あー、仕方ねェなァ……』

 そしてそれは、第112番ダンジョンコアであるイッテツにとって、絶対的に叶えなければいけないお願いとなる。 たとえそれで敗北が決定したとしても、大した問題ではない程度に。

  *

『おいケーマァ。……取引しねェかァ?』

 対ドラゴン物資を輸送する間の時間稼ぎをしていたらイッテツから通信が入ってきた。……取引、ときたか。

「内容によるな。どういう取引だ?」
『あのクリスタルの像をくれェ。そしたら5階層は通してやらァ』

 ……つまり、クリスタルの像をくれたら負けてもいいよ、ということか。

『ついでにこォ……レドラが攻撃できねェような手を使わねェでくれるとありがてェんだがァ』
「像を渡して5階層通してもらうっていうのはいいけど、そっちは難しいな。……最下層まで妨害しないで通してくれるっていうならいいけど」
『あァ? あー……それだとレドラが戦えねェ(・・・・・・・・)。最後のボス部屋はダメだァ。それ以外は別にいいぜェ』

 えっ、いいの? 言ってみるだけのつもりだったんだけど。
 というか今の発言、少し違和感があったな。さては絶対命令権か。

『ダンジョン内を水浸しにされてそのたびに階層に穴開けるよりよっぽどマシだァ。本来のボス部屋で仕切り直して、それで勝負を決めるとしようぜェ、いいだろォ?』

 なるほど、水攻めがよほどキツかったと見える。
 実際、水浸しになったらモンスターが大変な状態になりそうだもんな。

「……じゃあボス部屋以外ではこっちの行動を妨害しない、ってことで。扉の鍵やトラップも解除しといてくれ。休憩は1時間だ」
『よォし! 取引成立だァ。おいレドラァ、1時間ほど休戦すっぞォ!』

 こうして、俺達に異様に有利な条件で仕切り直しをすることとなった。

  *

「ぐぬぬぬ……ッ」
「おォい、どうにかしてやったぞレドラァ?」
「だ、だけどダンジョンバトルは負けちゃったよ……ごめん112ッ! アタイのために……ッ」

 珍しくしおらしいレドラだったが、ハハハ、とイッテツは笑い飛ばした。

「なにらしくねェこと言ってんだァ? つーか別に負けてねェ、クリスタルの像を分捕ったからなァ。」
「けどそれで49階層までを無抵抗で通過させるってのは……」
「レドラは負けねェだろ? ケーマなら5階層を突破すればどうせたどり着いてたからなァ、関係無ェよ」

 しかも実際、あの水攻めを続けられたらダンジョンが攻略されるだけでなく、全階層水浸しになってモンスターやトラップに甚大な被害が出ていただろう。修繕費だけで50万DPより多くなるであろうことは目に見えていた。

「……その分、気持ちよく戦えるように約束も取り付けたからなァ、むしろ交渉はこっちが勝ったぜェ? レドラも頼りにしてるからなァ」
「うん……ッ アタイも頑張るよッ!」
「おう、頼むぜレドラァ。レドラも1日程度なら休憩なしで全力戦闘できるだろォ? 好きに暴れなァ」
「うんッ!」

 元気を取り戻したレドラ。イッテツは満足げにグリグリと頭を撫でてやった。



『このライトノベルがすごい!2018』ライトノベルBESTランキングWebアンケート、9月24日(日)23:59まで!
回答したら、抽選で20名様に全国共通図書カード(500円分)が当たるそうですよ?

https://questant.jp/q/konorano2018

よろしければ文庫1位のところに以下のように記入してみてください。

タイトル:絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで
著者名(レーベル名):鬼影スパナ(オーバーラップ文庫)
コメント(例):チキンタツタ美味しい! それはさておき一番好きなラノベです
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ