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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

ご近所サラマンダー

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第二次ダンジョンバトル、追撃

 また大量の敵性反応がマップに現れる。見ると、ゴーレムの集団がそこにいた。
 が、それはイッテツの知っているゴーレムではなかった。

「……! おいィ、なんだこのゴーレム、武装してるぞォ!」
『は、はぁッ?! 武装したゴーレムだってッ?!』

 そのゴーレムたちは石の鎧兜を着込み、盾を構え、剣か短槍を持っていた。そしてなにより、規則正しい長方形の陣形を作って現れたのだ。それはまるで、ニンゲンの軍隊のよう。
 何の物資か知らないが、木箱まで運んでいる。そこまで再現しなくていいんじゃないかとイッテツは思った。

「ハハハ! すげェな、こんなん初めて見たぜェ……って、あァ?」

 だがそのゴーレムの半分は現れると同時に、向きを変え、ダンジョンの()へ向かって行った。

「はァ? なに考えてやがるんだァ? 敵前逃亡……ゴーレムが、かァ?」

 イッテツは首をかしげたが、もう半数がダンジョンに潜り込んできたので、水攻めの難を逃れたレッドリザードを向かわせる。大部分は流されてしまったわけだが、それでも普段と同じくらいには数が揃う。
 だが……

「チッ、やっぱりキツイなァ。連携させたら下手なニンゲンよりはるかに強いぜェ」

 突撃を前列の盾で受け止められ、後列の槍で串刺しになるレッドリザード。火を噴いても同じように盾で防がれ、槍で串刺しになる。その動作は一糸の乱れもなく、ニンゲンで言えば精鋭部隊のごとき連携だ。
 主力のレッドリザードが完封されている。そして、あっという間に……水が走るよりは遅かったが、的確に階段までの最短ルートを制圧される。
 そして制圧と同時に追加で現れるゴーレムの集団。これもまた石の武装に身を包み、統率がとれた動きをしている。仲間のゴーレムに守られた通路を進み、同じように第2階層を制圧していく。

「クッ……こいつァ厄介だァ……マグマスライムは水気から逃げちまうし、レッドフロッグはゴーレム相手じゃ戦力にならねェ、毒もヤケドもねェもんなァ!」

 火系のダンジョンに、ゴーレムの集団。それは絶望的に相性が悪かった。
 せめてレッドミノタウロスなら、と嘆くが、6階層以降にしか配置していなかった。

「だが正面突破だけなら……あァッ?!」

 新たな侵入者が現れた。しかし、入口ではない。
 マップの4階を見る。先ほど水抜きのために空けた穴。そこから武装ゴーレムの集団が入ってくる。

「なッ……さっきの別働隊かッ!! ハハハッ、やられたぜェ! 中のは陽動かァ!」

 壁が敵によって壊された場合、侵入者が居ても直すことはできる。
 だが、自らがあけた穴はそうはいかない。そこに侵入者が居る場合は塞ぐことができないのだ。敵性反応のある水溜りも残っている。水に対して全力で対処すれば可能だったかもしれないが、塞いだら塞いだで第2波が流し込まれるだけだ、どうしようもない。もしかしたら他にもっといい案も思いつけたのかもしれないが、陽動に見事釣られてしまった。

 つまり今後はこの穴までの……3階層までを無視したショートカットができてしまうのだ。

 しかも次のゴーレム部隊が投入された。今度は軽装ではあったが、何かをかかえている。まるで蛇の抜け殻のような……曲がりくねるその先は向こうのダンジョンにつながっていて、まだ伸びてくる。何のために使うモノか? そして、どこまでの長さがあるのだろうか? 途中をゴーレムが抱えてまだまだ伸びている。
 このゴーレム部隊は、外側に回り込んだ。一体なんなのだろうか……

 第4階層の横穴から侵入してきた武装ゴーレムだが……動きが無い。まるで、何かが到着するのを待っているかのようだ。……侵入者を排除しにこちらから攻めても、盾と短槍、あるいは剣で防がれてしまう。
 そうしているうちにやはり蛇の抜け殻のようなものを抱えたゴーレムが合流する。

「何なんだァ一体……っ?!」

 再び大量の侵入者がマップに現れる。ゴーレムではない。全く姿が見えない。
 だが代わりに先ほどのゴーレムが持っていた蛇の抜け殻。先ほどまでぺたんと潰れていたのが、今はパンパンに膨れていた。そして侵入者はその中を走り抜けている。……おそらく、最初の水と同じものだろう。一度ダンジョンの外へ出て、行きつく先は……第4階層の、穴。見ると、足元に土が盛られ、少量であればそこから漏れないようにされていた。

「ハ、ハハハハハッ! こいつはやっべェ……!」

 イッテツは自分のピンチに、あえて豪快に笑うことで気合いを入れ直した。

  *

 高低差を利用してそのまま注水を続けるホース。流し込むのはミジンコ水。
 ああ、ホースといっても消防車につかわれているやつだ。ダンジョン鉄砲水第二波とまではいかないが、ダンジョンを水浸しにするくらいはできる。

「で、プランBだけど、感想でも聞こうか?」
「相手が排水のために穴を開けたら、外側から突入して水を流し込む。穴が小さければ塞いで流し込む。……で、相手がさらに下に穴を開けたらまたそこから、よね……ひどいと思う! 相手の気持ちを考えてみなさいよ?!」
「さすがご主人様です!」
「鬼畜やなー」

 ちなみにプランAは排水なしでそのまま行けちゃうパターンで、プランCは水を内側に捨てられたりして完全に止められて正攻法で攻めざるを得ないパターンだ。
 理想はプランAだったが……いくらなんでもそこまで虫のいい話はなかったか。

 消防車のホースだけ、っていうのをDP交換してみたのだが、これがまた高かった。もっとも量が量なので納得のDPではあったけど、10万DP分は変換したと思う。金貨をDPに換えるのは勿体なかったので、足りなかった分は金貨を担保にロクコから借りた。無利子で。……今回一番の出費である。
 勝ちが確定しているこの戦いに無駄遣いも甚だしいと思うが、これくらいはむしろアリだろう。だって水攻めしたかったんだもん……じゃなくて、最下層まで到達するには必要なことだからね。水浸しにするの繰り返せば速攻でフロア攻略できるからね。それに宿で再利用するから無駄じゃないし? うんうん。
 というか消防車のホースって雑貨でいいのかなぁ……まぁいいか。連結可能で便利だし。

「ちゅーかご主人様、これウチのほう必要無いんちゃう? 別に外から襲撃するだけでエエんやろ?」

 イチカには、第1階層から順に正攻法で制圧していくゴーレム部隊の操作を任せていた。

「……経験を積むにはちょうどいいだろ?」
「まぁ、せやけども。こっち切り上げて穴から再突入したほうがエエんちゃう?」
「……そうだな。再突入しようか」

 すまん、プランBが上手くいかなかったときの保険だったんだ。不要な事ではなかったんだ。結果的にいらなかっただけで。

「偵察ネズミ部隊がレッドリザードの生き残りを発見しました。遊撃ゴーレム向かわせます」
「おっと、そっちは頼むぞニク」

 尚、今回ネズミたちはダンジョン外の斥候をしている。木箱で運び入れ、ダンジョンの外でばらまいている。

「ケーマ、新しい穴が開いたわ。5階層で。しかもボス部屋よこれ」
「さすがにボスを水没で倒すのはダメか」

 しかし水攻め対策とはいえ思い切ったことをするな。外から直通のボス部屋とか……正気の沙汰とは思えないね。俺が言えた義理じゃないけど。
 ちなみにボス部屋はボス部屋らしく、ボスを倒さなければその先に進めない。奥へ続く扉は、水一滴たりとも通してはくれないようだ。つまり、ここでレッドドラゴンを倒さなければいけない。
 50階層のダンジョンで5階層目にラスボスとかとんだクソゲーだな。バランス崩壊もいいところだぞ。

「……それじゃあドラゴン退治といきますか」

 武装ゴーレムに穴を覗かせる。

『ギャアアアアアアアオオオォォォォォォゥゥウウウウ』

 直後、モニターごしにもビリビリと振動が伝わるような咆哮。白い光。暗転。
 何があったのかは他のゴーレムが見ていた。ドラゴンブレスだ。白熱するほどの熱力が武装ゴーレムを包み込み、一瞬で燃え尽きた。……石装備が燃え尽きるってどんだけの高熱なんだよ!?

『カッカッカッ! アタイのブレスはどーだいッ! 石の体も燃えるだろッ!? さぁさぁかかってきな人形共ッ、アタイのブレスはちょっと熱いよッ!』

 勝ち誇り高く笑うレッドドラゴン。その身から溢れる力は、あのチョロマンダーと一緒に居た姿からは想像出来ないほどに強者という存在を認識させられた。

「け、ケーマ? これ、勝てるの?!」
「……わからん」

 ……本気で、このレッドドラゴンという生物に勝てるかどうか分からなかった。
 けど、もう試合には勝ってるんだ。やれるだけやってみるさ。
(……やっべドラゴン強くしすぎたかもしれない。書きなおしたらゴメン)
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