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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

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宿泊、スイートルーム1(ハク視点)

(推敲不足のため、後で書きなおすかもです)
 『欲望の洞窟』、それがロクコちゃんのダンジョンの新しい名前です。
 ツィーア冒険者ギルドからの報告と情報を確認した上で協議し、決定しました。
 しかし、もう見つかったの……いえ、自ら情報を流したのかしら。

 で、さらに言うと、宿ができたという報告も届きました。
 『宿(40万DP~)』を作るのはもっと時間がかかると思ってたのに、まさかダンジョンのお披露目と同時とは……一体どんな手を使って稼いだのかしら。もしかして人間牧場? うーん、それにしても早すぎですね。オリハルコンでも発掘したのかしら?

 というわけで、私はロクコちゃんの宿の「最初の客」(はじめてのひと)となるべく【転移】まで使ってやってきました。

  *

 残念ながら「最初の客」(はじめてのひと)となる栄誉は逃してしまったようですが、スイートルームに泊まることになりました。
 ついでに、適正価格の査定という重大任務を請け負ってしまいました。ふふふ、帝都で数々の宿を建てさせ、さらにはお仕事で王国をはじめとする周辺諸国における最高級ホテルのスイートルームはもとより、冒険者として様々な宿にも泊まったことのある私です。これ以上の適任はいないでしょう。

「さて、それでは早速だけど、お湯とかもらえるかしら?」

 浄化でも体を綺麗にすることはできますが、お湯で湿らせた布で体を拭くというのもなかなかに気持ちが良いものです。もっとも、低ランク冒険者向けの安宿ではこういうサービスは期待できませんが、仮にもスイートルームを名乗るのであればあってしかるべきでしょう。

「……あー、その、すみません」
「あら。ないの?」

 早速だけど減点かしら。まったく、こういうサービスもちゃんと充実させないと、スイートとは言い難いですね……

「お湯なら部屋にお風呂があるので、そこで使ってください。使い放題です」
「……はい? ……つ、使い放題ですか?」
「お風呂についてるレバーを上げれば出る仕組みになっていますので」

 ……『宿』にそんな機能がついている部屋なんてありましたっけ? 拡張オプションにそういうのがあったのかしら。……スイートルームだけ、であれば消費は抑えられるでしょうね。さすがロクコちゃんのマスターです。

「ああ、それとスイート以外でもなんですが、温泉入り放題です」
「……温泉まであるのね」
「うちの目玉ですよ」

 『温泉』は『宿』とは別でDPが……いくらかかったかしら。それほど高くなかったと思うけど、奮発したようですね。
 ……たしか通常の部屋で銅貨50枚だった筈。温泉入り放題となると、料金のほとんどはそれでしょうか。普通の部屋は泊まらない方が良さそうかしら?

「それじゃハク姉様、お部屋に案内するわね!」

 私はロクコちゃんに連れられてスイートルームへ向かいます。……このサービスは金貨1枚の価値がありそうですね……っとと、適正価格は勿論私の主観によらないようにしなければ。

 ロクコちゃんに連れられて部屋の前に来ました。……ふむ、ただの木の扉ではなく、周りに鉄板を付けているのね? さらに鍵を掛けられる、と。
 これは一度壊してダンジョンの扉をつけなおしたのかしら。考えましたね。

「ここよ! ゆっくりしていってね、姉様っ」

 扉を開けると、その中は明るく、日が差していました。
 ……素敵な彫刻の入った家具、そしてベッド。ゆったり座れそうな大きな椅子もありますね。ううむ、この彫刻はどこの国の作品かしら。……もしかして異世界の意匠?
 壁には時計が掛けられています。時計はあると便利、程度のわりに結構高い魔道具だったはずです。もっとも、町では鐘が鳴りますがここではそうもいかないので、あるに越したことはないでしょうけど。
 そして光を取り込む窓……これは板状のクリスタルがはめ込まれているのでしょうか。手前に布がかけられるようになって光を遮ることもできるみたいです。
 相当掛けてますね。なるほど、これならスイートルームとしても通用する内容でしょう。

 っと、さらにトイレと、お風呂もついているんでしたっけ、一瞬忘れていました。
 ……早速見てみましょう。お風呂は、なんと木でできていました。
 しかし、お湯が入っていませんね。……あ、このレバーでしょうか? 説明が書いてありますね。
 なるほど、こちらがお湯、こちらが水……試しに操作すると、お風呂に向けて湯が出ます。……少し熱いかしら? ああ、それで水も出せるようにしてるんですね。

「クロウェ、どう思う?」
「すばらしい部屋かと。王国ホテルのスイートより上等ですね」

 私もこれほどとは予想外でした。
 とりあえず椅子に腰を下ろします。

「……この椅子、ずいぶんゆったりして、心地良いですね」
「ハク様、この椅子は『マッサージ椅子』という魔道具と書かれています。……銅貨をいれるとマッサージをしてくれる、とのことです」
「ふむ? 入れてみましょう」

 クロウェに銅貨を入れさせると、椅子が震えだしました。

「なっ、な、な、なな、なんなのですかこれっ!? ふぁあっ!」
「ハク様?! だ、大丈夫ですか?!」
「だ、大丈夫よ、ぁ、これ、すごぉ……ふぁ……気持ちいいわー……」

 ああ……このまま寝てしまいそうです……このところ宿にくるために色々と仕事片づけてましたから……ぁぁ……

  *

 目が覚めると、クロウェが椅子の横にあった布をかけていてくれました。……ふむ、この布、触り心地が良いですね。厚さがそれほどなく軽いのですが、温かく感じます。

「……この椅子、融通してもらえないかしら。金貨10枚くらいで……」
「いままでこのような魔道具、見たこともありません。となれば相当に貴重でしょうし、難しいかと……」
「……50枚くらいなら出してもいいんじゃないかしら?」
「そこまで気に入られたのであれば打診してはいかがでしょうか」
「そうね、それもいいかも……っと、寝てしまっていたけどそろそろご飯にしましょう。時間は大丈夫かしら? 確か、部屋にあるボタンを押すと持ってきてくれるんだったわね」

 ……壁にはボタンがあり、誤って押さないように簡単なカバーがかけてあります。何気にこのカバーもクリスタルですね……結合部の跡が無いことをみるに、削り出しでしょうか? たったこれだけのために?
 とにかく、ボタンを押します。「……ジリリリ」と、金属が小刻みにぶつかる音がしました。
 どういう仕組でしょうか、これ。……『宿』のオプションにあるのでしょうか?

 しばらくして、といってもボタンをおしてほんの3分ほどでコンコンと扉がノックされました。
 ……調理早いですね。もしかしてDPを使っているのでしょうか?

「ハク姉様、お食事をお持ちいたしました!」
「どうぞ入ってロクコちゃん!」

 私が扉を開けると、ロクコちゃんが配膳台に料理をのせていました。
 配膳台には料理が3つ。料理にはクロッシュと呼ばれる金属のカバーが掛けられており、中身はわかりません。……ちゃんとクロッシュ使っているあたり、これもまたレベルが高いですね。……ある国のスイートではむき出しで料理運ぶところもあったくらいですし。
 あら、その四角い箱は何かしら? と、中に飲み物が入っていたようです。スプーンとストローが付いていますね。
 ……って、クリスタルのコップ? これまた惜しみなく使ってるわねぇ……それで、中身が見えるのですが、えーと、緑色ですね? 上に載ってる半球の白いのは何かしら……もしかしてポーションとポテト? 凄い組み合わせね……

「って、あら。3つ?」
「わ、私もハク姉様と一緒に食べたくて……ダメ、ですか?」
「大歓迎よ! ほらロクコちゃん、あとはクロウェに任せて座って座って」
「む、むう、そうもいかないわ、今日はクロウェもお客様だもの」

 ロクコちゃんがせっせと料理をテーブルに配膳する。
 飲み物、コップには水滴が付いていました。……氷系の魔法を使った後だとこうなるわね。よく冷えているみたい……

「それじゃ、いきますよー。えいっ、じゃーん!」

 ロクコちゃんがクロッシュを外すと、そこには1枚の皿に複数の料理がちりばめられていました。

「……皿に凹凸である程度仕切りを付け、複数の料理を1枚の皿に盛る……斬新な発想ですね」
「ふっふっふ、すごいでしょ。えーと、これが『はんばーぐ』、こっちが『なぽりたん』で、これは『えびふらい』! こっちの細長いのは『ふらいどぽてと』で、この旗がささってるヤツが『おむらいす』ね! あ、スープは『こーんぽたーじゅ』よ。 あ、そうそう。こっちの緑色の飲み物ね、『くりーむそーだ』っていうの。飲み物だけど、デザートなのよ、上の白いのは『ばにらあいす』っていう冷たくて甘い食べ物なの! 溶けちゃうからはやめに飲んでみてね?」

 ロクコちゃんの解説を聞き、さっそくフォークを構えて実食です。
 『はんばーぐ』、うん、お肉ですね。ステーキとは違った、肉料理です。しかもこれ、牛肉ですね? キノコの入ったソースが絶品です。
 『なぽりたん』、パスタ、でしょう。かかっているコレはトマトソースでしょうか。くっきりした味わいが程よく舌を刺激しますね。
 『えびふらい』……これは、海産物かしら。どういう調理をすればこのようになるのかしら? 異世界の品、という一品ですね。
 『ふらいどぽてと』は見るからに芋、でしょう。……む、サクサクしてて歯ごたえが良いですね。『えびふらい』と同じ感じがします。芋は簡単に手に入れられるので、調理法さえわかれば再現できますね。
 『おむらいす』はスプーンで食べるようです。トマトソースがかかった薄焼き卵で何か小さな粒を包んでいますね……穀物かしら。ふむ、なかなか悪くないです。しかしこの旗は何なのでしょう?
 『こーんぽたーじゅ』、甘くて温かく、心がほっとする味ですね。ポイント高いですよ。

「サラダは別にほっといてもいいわよね……あ、でも『まよねーず』はなかなかいけるやつよ」
「私たちはそもそも食事が不要ですから無理に食べる必要もありませんしね……あ、クロウェは食べなさいね?」
「はい、ハク様。……ほう、『まよねーず』、これはなかなか……いらないのであればお引き受けしますが?」
「……別に食べないとは言っていませんよ?」

 ……ほほう、『まよねーず』、見事です。野菜と一緒に食べることで味の調和がとれる、といった具合でしょうか。……クロウェも気にいったみたいだし、これ個別で手に入れられないかしら。

 しかし、これだけの料理をDPで出すにしても、それぞれ出してから盛り付けが必要です。それなりに手間がかかっていると言っていいでしょう、もっとも、0から料理を作る必要が無い分はるかにお手軽ではありますが、今回の査定ではDPで料理を出せる点は考慮しないのが適切です。そうなるとそれぞれの料理の手間を考えて……うん、既に金貨1枚の価値はあるとみていいでしょうね。そもそも異世界の料理では、どのような手間が必要なのか見当が付きませんし。

「角のこれは『ぷりん』! クリームのデコレーションとチェリーが綺麗で甘くておいしいデザートよ!」
「ふむ、これもデザートですか。……そういえばクリームは帝都の牧場でたまに作っている嗜好品でしたね。チェリーは……どこが産地だったかしら?」
「ワコークだったかと」

 ワコークですか、東の果てですね。……再現するとしたら、輸送費が相当かかりそうです……ああ、だからAランク冒険者の私が好意で直々に特別に食材を届けている、という『設定』なのですね。【収納】中は時間が止まっていますし。
 しかしそういうことを考えると金貨1枚では安く感じてきます。

 あ、美味しいわね『ぷりん』。ぷるぷるで甘くて、とろけそう……ハッ、あぶない。意識が持っていかれるところでした。

 ……そして『くりーむそーだ』です。緑色のポーションを思い起こさせる色合いでつい敬遠してしまいましたが、ロクコちゃんのイチオシらしいので、飲まないわけにはいかないでしょう。
 『めろんそーだ』と『ばにらあいす』を組み合わせたデザートといえる飲み物……とのことですが、いったいどういう代物なのか。あ、これにもチェリーが乗ってますね。
 まずはストローで、『めろんそーだ』をいただきます。……ッ?!

 ……ッ、甘いっ! そして、口の中をチクチクと刺しまわっています! そして甘い! なんて暴力的な飲み物なのですかこれは?!
 口の中を刺す独特の飲みごたえはある種のお酒に似ています。しかしキンキンに冷えているせいか、こちらの方がはるかに強く感じます。そして鼻を抜けるメロン果汁の風味と、この甘味。ガツン、と殴られたような威力がありますね、この『めろんそーだ』は!

「上の『ばにらあいす』も食べてみてくださいな、ハク姉様。少しとけてますけど、とけかけが一番おいしいんですよ?」
「え、ええ……」

 コップにあわせた専用と思われる細長いスプーンで、『ばにらあいす』をさくっと掬い上げます。
 口に運ぶと、そこで感じるのは冷気。そして、『めろんそーだ』にも勝る甘味。
 ただし、それは口内の熱であたかも雪のようにやさしくほぐれて、口の中に溶け広がります。
 溶けた『ばにらあいす』から広がる駆け抜けるような柔らかく甘い香りと、乳製品の舌触りが気持ちよい……。

「姉様のお口に合いましたか?」
「……ええ、とても」

 ……動の『めろんそーだ』に、静の『ばにらあいす』……両極端な二面性を持つ飲み物、いや、デザートに、私は翻弄されてしまいました。
 そして最後、溶けた『ばにらあいす』と『めろんそーだ』が混じり合った状態になり……この世の真理が垣間見えた気がしました。

 これで金貨1枚? 安いですね。

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