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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

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ダンジョンバトル、決着

ダンジョンバトル後編、決着です。
 ゆっくりと、開かれる『知恵の門』。
 ハクは、折れた心をなんとか組み上げ、その向こうを覗こうとし……
 ……できなかった。

 なぜなら、扉の向こうは土壁だったからである。
 ……ご丁寧に「工事中」という張り紙が貼ってあった。

 折れた心が爆発した。

  *

「……お、正解した」
「ねぇ、行き止まりなんだけど何コレ」
「いやぁ、実はちょっと時間足りなくてさ……ね、寝てないよ? ホントホント」

 あ、寝たんだな。とロクコは確信した。

「ぶっちゃけ、ロクコが3秒で解けるんだからあっさり解けるだろー……と思ってさ、あえて作らなかったんだよ」
「あえて、なんだ?」
「だって、その方が驚くと思って……」
「確かに驚くわね。迷宮抜けた先が行き止まりなんだもん……で、これ、このあとどこに行けばいいの?」
「実は落とし穴の他に迷宮の中にダミーコアを3つ隠してるから、……行き過ぎてるんだ」

 丁寧に四角く創った迷宮の『突き出た小部屋』に2つと、『天井』に1つ隠してあるのだ。
 ただし、今は壁ゴーレムで覆っているからハクさんたちは見つけられていない。
 もっとも本物のダンジョンコアが壁に閉じ込められているとダンジョンが機能不全を起こすので、キャスリングで移動したらそこの壁ゴーレムだけずらして開ける予定だった。

 尚、隔離しているのがちゃんとした扉であれば閉じ込めていることにはならないらしい。そこの判断は正直よくわからないが、壁ゴーレムで囲うのはダメだそうだ。解せぬ。

  *

「「「「…………」」」」

 『白の試練』の面々は、すっかり沈黙していた。
 ただし、それぞれの様相は若干異なる。
 まず、ハク。
 笑顔で固まっていた。
 謎掛けの正解を唯一答えたミーシャは、「やっべぇ余計なこと言っちゃった……」と青い顔をして固まっていた。
 そしてクロウェを含む残り4名の腹心は、ハクの笑顔に何とも言えない恐怖を覚え、何も言えずにいた。

「……ッ、敵、ダンジョンボスルームを突破! こ、コアルーム発見されました!」

 アメリアの突然の報告に固まっていた空気が押し出される。

「え、ちょっとまって! ボスのレッドミノタウロスはどうしたの?! コアルームはボス倒さないと入れないでしょ?!」
「のっ……喉にネズミが詰まって、死にました!」

 ぞわっと寒気がした。

 その嫌な死に方を想像してでは――完全に無いとは言わないが――なく、ネズミが、たかがネズミが、ボスモンスターを倒したというその事実に。

「あ、あははっ、お、おかしいよこんなのっ! なんでネズミなんかがここまで凶悪になるのさ?!」
「落ち着きなさいドルチェ。……お嬢様」
「まだ負けてないわ……攻勢組は探索を続けなさい、見落としがあるはずよ。クロウェ、私の槍を使ってコアの防衛にまわりなさい」
「……畏まりました、この命に代えても……!」

 ネズミごときに何を大げさな、とは、誰も言えない。
 身を捨てて喉に詰まってみせるというとんでもない方法でレッドミノタウロスをさえ撃破して見せたのだ。それよりよほど小柄なクロウェでは、1匹の鼠すら丸呑みできずに詰まるだろう。

「敵、まだ……100は居ます……ご武運を」
「まだお嬢様にお仕えするにも、死ぬわけにはいきませんからね……いざ!」

 そして、クロウェが槍を手にコアから躍り出すと、まさにネズミの群れがダンジョンコアに襲い掛からんとしていた。

「ギリギリか……! 防げ! 【ファイアウォール】!」

 その一言で、守るべきコアを囲むように、炎の壁が生まれた。ネズミはたまらず距離をとる。
 これぞハクの魔槍、『炎壁の槍』の力。……使い手の魔力を使用し、キーワードひとつで炎系上級魔法【ファイアウォール】を発現する、まさに魔法の槍だった。

 ――尚、ダンジョンにお宝として捧げた場合に、その1本で1000万DPは手に入るという、お宝中のお宝である。

「ふう……これで、まだ時間が稼げますね」

 さて、ここからどう出てくるか。とクロウェは考える。……予想だと、ネズミが塊になってファイアーウォールを突き抜けてくる、というところか。

 見ると、ネズミたちが身を寄せ合っていた。
 大丈夫だ、心構えができていれば、対処できる――

『クロウェさん! うそっ、後ろです! 敵はもう後ろにいます! 数、10!』
「――?!」

 振り返るが、何も居なかった。……いや、見えないだけ?!

「一体何が――?!」

 敵を探るが、見つからない。見えない。10体も、いる、はずなのに?!
 ネズミじゃないのか?!

『……ッ タッチされ……ました……!』

「ハハッ……どうなってるんですか、コレ……」

 訳が分からなかった。気が抜けて、【ファイアウォール】が解ける。
 ……ゆらめく炎が消えた後、コアの上に、透明な『何か』が乗っていることに気付いた。

「……なに、コレ」

 それは、透明な――見たことも無い、虫、みたいな、何かだった。

  *

 いよいよダンジョンコア……ダミーコアだけど、に、タッチダウン! ってときに、コアからクロウェが飛び出してきて、【ファイアウォール】を張った。
 ダミーコアからでも出撃できるのか……知らなかった。知ってたらもっとゴーレムを活用できたな、復活からの再突入による迷宮の其処彼処から無限湧きコンボとか。

 しかしこの炎、厄介である。
 ってか反則だろ。あと一歩だったってのに。あからさまにマジックアイテムなのだ。10万DPとはなんだったのかと問い詰めたい。
 ネズミを集結させて、なんとか突破できないか試してみようか……うーん。
 ん? まてよこれ……

「……あ、コレ、上がガラ空きだな。よし、丁度いい。『隠し玉』発動だ」
「お、あのわけのわからないアレね!」
「発動、です」

 訳の分からない言うな。俺の世界ではドローンっていってな、ヘリコプターみたいな、……分けのわからない何かだった。うん。

 で、こいつは透明な素材で作ってみた。
 最初は、ウォーターゴーレムで作ってみようと思ったんだけど、思いのほかプロペラの強度が足りずに飛べなかった。でもちょうどマナポーションの空き瓶があったので、使って作ってみたらうまくいってしまったのだ。
 しかも透明ですごく見えにくい。ネズミが腹に飲み込んで運べるという、驚異の小型化に成功したしな。せいぜいビー玉くらいの大きさだ。
 いやぁ、特に……こんな炎ゆらめく視界では殊更(ことさら)見えにくいだろうね!

 単一素材で作れて、電源装置すら不要なダンジョン限定ゴーレムだからこそできた隠密性だ。現代日本では通信装置の基盤やら電池やらが見えるスケルトンフレームのドローンが関の山だっただろう、魔法ってすごい。

 というわけで、一部のネズミの腹に隠してあったドローン、の入ったカプセルを、ネズミに開けさせる。
 これぞ最終兵器、『隠し玉』ステルスドローンカプセルだ。
 ……見た目としては腹を食い破ることになっている。グロいな。でもごめんね、ミノタウロスの口目掛けて特攻させたときもなんだけど、ネズミだからかあんまり心痛まないや。

 そして、あとはドローンを、ファイアウォールの上からすっと滑り込ませ、軟着陸させて――ちょっと熱風に煽られて操作は苦労したが――

 ――俺たちは、勝利した。



  *おまけ*

 迷路攻略中の小ネタ。

「くっ『変幻迷宮』とは厄介な……あっ、そうだ! 壁を壊して進めばいいんじゃないかな!」
「ちょ、それは迷路攻略法として反則でしょ」
「いや、でもそうでもしないともう時間が……」
「……よし、許可します。やっておしまい!」
「て、敵陣営より通信が入っております!」
「何かしら。繋げなさい。……あらあらケーマさん、どうかいたしましたか? 確かダンジョンや迷路の壁を破壊してはいけない、なんてルールは無かったはずですが」
『ああ、ひとつ耳寄りな情報をと思いまして。……この迷宮は……ロクコの手作りなんですよねぇ。いいんですか? 壊して』
「な……ッ?! そ、それは……」
『実は、通路部分はロクコがゴーレムと一緒にツルハシで掘ったんですよ……だから、正真正銘、初めての、手作り迷宮なんです。それを……いいんですね? 本当に? 嫌われても後悔しませんか?』
「……精神攻撃とは卑怯な!」
『うちのシマでは基本なんで。……で、壊すんですか?』
「ッ……壊せるわけないでしょうがッ!」

 というやり取りがあったりなかったり……


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