挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

閑話の章:初心者狩り

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

285/301

初心者狩り (2)

(今回も悪人視点です。次回はケーマ視点になるかなと)
 翌日、ゲスーノとキワミの2人はターゲットの3人がギルド内に居たのを見つけると、早速話しかけた。
 対新人用の、親切そうな良い笑顔でだ。

「やあ、君たち! よかったらパーティーを組まないか? 僕はCランクのゲスーノっていうんだ」
「うふふ、私はキワミ。同じくCランクよ」

 ギルドカードを提示して、2人席に座っている青髪のお嬢様と金髪のエルフに話しかける。お嬢様の隣に犬獣人がつっ立っていたが、奴隷に権限は無いので無視だ。

 話しかけた所で、ざわり、とギルド内の空気が騒いだ気がした。
 恐らく、このカモにどう取り入ろうか狙っていた連中だろう。馬鹿め、こういうのは早い方が偉いんだ、特にここでは有名な幼女たらし(キラー)がいると聞いた。なら早い者勝ちに決まっている。とゲスーノは心の中でも笑う。

「わ、わたくし達ですか? えと、か、構いませんけどどうしてでしょうか?」
「何。君たちは見るからに新人だろう? だから先輩冒険者として一緒にと思ってね」
「お嬢様、いいのでありますか? 他にもっと頼りになりそうな冒険者がいるでありますよ」
「ええと、でも、Cランクの冒険者ですしこの方たちで良いのでは?」

 意外にもお嬢様が乗り気だ。ゲスーノは予定していた計画を少し前倒しにすることにした。

「さぁ、お嬢様もこう言ってるんだしエルフの美人さんもいいだろう?」
「そうよ安心して。ダーリンには私が居るから安全よ?」
「ふむ……」
「シーナ、良いでしょう?」
「お嬢様がそうおっしゃられるのであれば、自分はこれ以上口を出さないであります。……ただし、お嬢様に何かしたら承知しないでありますからな!」

 キッと睨むエルフに、苦笑して肩をすくめるゲスーノ。
 微笑んで、小さくお辞儀するお嬢様。

「私のことはマイオとお呼びくださいな。そこのはシーナ。……こ、この子はぺ、ペット、そう、ペットですわ! えへへ」

 と、無表情のまま頭を撫でられる黒髪の犬獣人。撫でる側のマイオはにやけている。まるで人間が着るようなきれいな服を着せてるんだな、とゲスーノは思う。

「……これなら、邪魔にはならないかもね、ダーリン」

 キワミはゲスーノにしか聞こえないように耳打ちした。キワミは犬獣人の尻尾を見ていた。
 主人に懐いているのであれば獣人は――犬獣人は特に顕著だが――尻尾を振ることをキワミは知っていた。

 案外、こうして綺麗な恰好をしている奴隷でも主人のことを恨んでいる者は多い。
 えてして奴隷にとって大切なものを主人は考慮しないからだ。そういう場合、奴隷は消極的に主人の破滅を願い、主人が害されるのを「放置」することがある。
 奴隷に剣を突きつけて脅せば主人がもつ首輪と同等に命の危険があるため、どちらに従うかは奴隷次第となる。どうせ死ぬなら嫌な奴が酷い目に遭えばいい。そういうことだ。

「それではマイオお嬢様。ダンジョンまでエスコートさせていただけますか?」
「その、えと、その前に、教会にお祈りに行っても構いませんか? 今朝はまだお祈りに行っていないので」
「教会? ……ええ、もちろん構いませんとも」

 そういうとマイオは1人で椅子から下り、出口へ向かう。奴隷はそのすぐ後ろを、シーナはお嬢様とゲスーノ達との間に割り入るようにしてついていく。
 ゲスーノ達も、それの後を追ってギルドから出て行った。

 それを見ていた冒険者の1人が、受付嬢相手にこそこそと話す。

「――村長の言ってた通りだったな」
「ですね。――となると、――」

 そんな会話がされていたが、それがゲスーノとキワミの耳に入ることは無かった。


  *

 お嬢様が教会でお祈りしている間、ゲスーノとキワミは教会の外で待っていることにした。
 さすがに自分たちが神様の前に出られないような人間だということを理解しているから――ではない。美人のシスターに呼び止められたからだ。
 その事実にキワミは少し顔をゆがめたが、さして気にするほどでもないし情報収集を兼ねて世間話をすることにした。

「まぁ、それでは前はパヴェーラに居たのですか?」
「ええ。こう見えて腕は確かなもんで、獲物を取り逃がしたことは無いんですよ。シスターは冒険者がお嫌いですか?」
「とんでもありません、冒険者の神である白の女神様と私達オフトン教はとても親密な間柄。であれば、冒険者が嫌いである理由などありはしませんわ」
「オフトン教、というのは初めて聞いたんですが、どういう教えでどういう神様なんです?」
「実は、オフトン教に信仰する神は居ないのです。――教えとしては簡単。眠り、安息を第一に考え、また他者のそれを乱さない事。ただそれだけと言っても過言ではありませんわ」

 にこり、と色っぽく微笑むシスターに、ゲスーノはどきりとした。自分が他者の安息を害しているから、ではなく、やはり単純にシスターが可愛かったからである。

「どうです、今度一緒にダンジョンにでも」
「あら、彼女さんがいる前で良いのですか?」
「うふふ、良い男は甲斐性もあるものだから。ダーリンは私ひとりじゃ満足させられないし、もう2、3人はいてもいいかもと思っていたのよ」
「機会があれば、ご一緒させていただきましょう。今度シスターも冒険者登録しておこうかと言う話がありまして……」

 鼻の下を伸ばすゲスーノを見て、次の獲物はシスターというのも悪くないわね、とキワミは思った。

「お待たせしました」

 そんな話をしているうちに、マイオお嬢様達が戻ってきた。
 その顔はまるで人が変わったかのようにどこか晴れやかだ。

「さぁ、行きましょうかゲスーノ様。今度こそエスコートしてくださる?」
「ええ、もちろん。ではシスター、またいずれ」
「はい。……(なが)き眠りを、オヤスミナサイ」

 そう言って笑顔で指先をくるりと回して円(聖印の形らしい)を書き祈るシスターに後ろ髪を引かれつつ、当面の獲物であるお嬢様の手を取りダンジョンへ向かうゲスーノ達。

 狩場は、すぐそこであった。
(前の水曜にワタルとハクさんのショーギバトルのような短編を投稿している気がします。まるで将棋だな……
 たぶん次の水曜も異世界ヒーローの更新かな?)
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ