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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

お見合い話

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ツィーア家からの手紙


 その日、副村長のウォズマ経由で厄介事が送り込まれてきた。

「村長。少々よろしいでしょうか?」
「なんだ、また娼館か? 欲求不満だな」
「いえ、その件ではなくてですね。ツィーアの領主様からこのような手紙が届きまして……」

 まったく、何のために色々な権限を丸投げしてると思ってるんだ、と思いつつも、そういえばツィーアの領主からということは貴族である。
 お偉いさんの相手、それこそが俺の唯一のお飾り村長としての責務なのだから仕方ないか。

 俺はウォズマから領主の手紙を受け取った。えーっと、なになに? 『山の神の覚えもめでたい季節に、白き女神が舞い踊りし出会いの――』

「って挨拶からなんだこの長い言い回しは。読むのが面倒だな、要約はあるか?」
「こちらに」

 準備してあるなら最初からそっちを出せと言いたいが、ウォズマはやはり優秀だ。こういう有能アピールも上手い……伊達にハクさんから送り込まれてないな。
 ちなみに要約は3行だった。

・ツィーア家は優れた冒険者である俺をとても評価しており、支援の用意がある
・娘と結婚しないか? 婿入りでツィーア家の末席に入るのも良い、嫁入りも可
・本人を見たいし、返事は直接本人の口から聞かせて欲しい(強制)

「ツィーア家からの見合いの打診になりますね。村長に紐を付けておきたい、という事でしょう。現状は冒険者ギルドのみと連携している形ですから」

 ツィーア家の領地だからツィーアって名前だったんだなぁ、と今更知った。

「しっかし、3行に収まることをよくこれだけゴテゴテ飾り付けられるもんだ、貴族ってやつは本当に尊敬に値するな」
「その飾りに重要な暗号を仕込んだり、言い回しでどの程度の評価をしているかを告げたり、言い回しが分からない無作法者かどうかを見極めるという役割があります。今回は暗号はないようですがね」

 ……残りの2つの意図があった、ってことか。まぁウォズマ任せなわけだけど。

「しかし村長はたしか冒険者のランクで言えばDランクでしたな。冒険者としてはさほど優秀とは言えないと思うのですが、どこから村長の優秀さを嗅ぎつけたのやら……」
「……ふむ」

 ハクさんの駒であるウォズマなら俺がBランク冒険者のギルドカードを持っているのを知っててもおかしくないな。それの事を言ってるのだろうか。

「ところで3行目の強制って、行かなきゃダメなの? 手紙で済ませたいんだけど」
「相手は領地を持った貴族ですからね。ただの村長にはよほどの事情でもなければ要望は断れませんよ。ツィーアとここは距離も近いですし」
「……俺には、」

 っと、『俺にはロクコがいるから』と言おうとして止める。あぶない。ウォズマはハクさんの手駒。そんなこと言おうもんならハクさんが般若の面とかつけて乗り込んできてもおかしくない。えーっと。

「……寝る仕事(ちょっとやること)があるんだが?」
「後回しにしてください。村長の仕事としては領主様の対応が最優先ですよ。こちらが招待状です」

 ですよねー。

「はぁ、仕方ない。とりあえず断ってくるか……」
「おや、断るのですか」
「そりゃな。だって俺に何の利点もないだろ」
「貴族になれますが? 万一に万一があればツィーアの領主になる可能性も」
「茶化すな、それは俺にとってメリットじゃないだろ」
「まぁ、そうでしょうね。村長は地位や名誉に興味があるように思えないですし、金銭的にも……」

 貴族になればそれで商売が(はかど)るかもしれないが、そんなのが無くても現状では十分以上にやっていける。借金勇者ワタルからの返済やナユタ経由で売りつけてる米の代金の他、ダイン商会に預けた金貨も順調に転がって増えてるらしいもんなぁ。
 金はあるところに集まる。誰が言ったかは知らんが、名言だよな。

「そうそう、このゴレーヌ村の食料に関してツィーアは生命線です。小麦粉はツィーアからの輸入ですし、野菜なども基本的にそうです。一部はパヴェーラからの輸入もありますが。……なので領主様の機嫌を損ねないようにお願いしますよ、村長」
「お、おう」

 ウォズマから軽く釘を刺されてしまった。
 けどつまり失敗してもダンジョンから米とか野菜とかドロップさせればいいだけだよな? 多少怪しさはあるけど。よーし、思いっきり断ってきちゃうぞー!


 とりあえず、先日ようやくパートナーということで立場を確定(という名の先延ばし)をしたロクコには一言言っておかなきゃな。
 俺は俺の部屋でごろごろしていたロクコに状況を説明する。

「というわけで、ちょっとツィーア行って断ってくる」
「ニクを連れてきなさい。ケーマ1人じゃ不安だわ」

 あれ? 前はこういうときに完全に丸投げされてた気がするけど、なんか信頼度落ちてる?

「……いやその、レオナに色々されてたじゃない? もしケーマがこの間みたく暴走したら止められるヤツが一緒に居ないとダメよ。特に今回はそういう話でしょう?」
「あー……」

 記憶のない1日。あの日俺はロクコ以外に、目についた女性全てを口説いていたらしい。レイ達やニクやイチカに……あろうことかギルドの受付嬢さんとかにも愛をささやいたらしい。
 悪いのはレオナだ。大体レオナのせい、はいはいレオナのせいレオナのせい。事実だしいいよね。

「まぁニクは連れてく」
「じゃあ、お土産よろしくね。……あ、あと、いってらっしゃいのちゅーをしてあげるわよ!」
「オイどこでそういう知識を覚えた」
「DPで交換できるものの中にマンガってのがあったのよ。……あ、そうそう。日本語を少し覚えたわ、簡単なのなら読めるわよ?」

 こ、こいつさらりと日本語を覚えやがっただと!?
 DPでマンガを交換できたのはさておき、難易度に定評があるらしい日本語を!

「スキルスクロールに【日本語】ってのがあって、5000DPだったけどね」

 なんだスキルの力か。というか言語をスキルで覚えられるのか、さすが異世界。

「いや、でもその。いってらっしゃいのちゅー? は、別にする必要ないんじゃないか?」
「パートナーはそういう事をするのよ、今決めたわ。だから大人しくほっぺを差し出しなさい!」
「お、おう」

 今決めたのか。俺はロクコにあわせて少しかがんで、右頬を差し出した。

「そそそ、それじゃ、ケーマ。いってらっしゃい……ん、んっ」

 そしてロクコは俺の頬にたどたどしくキスをした。……やばい、顔が熱い。ぷにっとした唇の触れた頬がくすぐったい。ロクコは平気なのか? と見ると、目を逸らして顔を赤くしていた。恥ずかしかったのか口を押さえてすこしぷるぷるしてる。

「……ぶ、無事に帰ってくるのよ?」
「ああ、行ってくるよ」

 ……うん、今回の結婚話はちゃんと断らないとな。
 俺はお供にニクをつれてツィーアに向けて出発した。

(迅速なフラグ回収こそなろう小説というものではなかろうか。
 人気投票とかやってみたい今日この頃。ええっと、ランキングタグでいいのかな?)
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