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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

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ランクアップとギルド長の話

 というわけで、依頼票を持って冒険者ギルドへ帰ってきた。そろそろ日が暮れはじめる頃合いだ。
 基本的に仕事終わりは夕方なのか、昨日より人は少なく見えた。

「……で、どうしました? やはり無理でしたか?」

 そしてこの受付嬢さんである。あれかな、こんな登録2日目の新人の顔覚えてるっていうのは、逆にいえば気にかけてくれてるってことでいいのかな。

「いえ、ちゃんと達成してきましたよ。はい、これ」
「…………確かに。しかも、どちらも高評価ですか……」

 受付嬢さんは顔を顰めて言った。

「おめでとうございます、ランクアップ可能です。 ランクアップしますか?」
「えっ?」

 ランクアップ……というと、GランクからFランクに、ということなんだろうか。

「GからFへのランクアップ要件は、依頼を10回こなすこと、そのうち1回以上は討伐依頼であることの2点です。そして、高評価の場合は1回で2回分に換算されます。……さらにウサギの討伐ですが、最低3匹から、ということで、3匹毎に依頼1回分とみなされます。……よって、高評価の5回で、ランクアップ要件を満たしました。……ランクアップしますか?」
「あ、はい」
「ではギルドカードを。おかけになってお待ちください」

 俺とニクのギルドカードを渡すと、受付嬢さんは一度奥の部屋に引っ込んだ。
 ……登録2日目でランクアップっていうのは、かなり目立つんじゃないだろうか。思わずランクアップするっていっちゃったけど、不味かったかな。
 いや、ここはランクFになって『ただの洞窟』の調査が受けられるようになることを喜ぼう。
 調査依頼を受ければ、『ただの洞窟』について詳しい情報を聞いても全くおかしくないからな。
 テーブル席で座って待っていると、受付嬢さんがやってきた。

「……ケーマ様、と……ニク様。ギルド長が面談をしたいそうです。こちらへどうぞ」

 うん、今ニクを様付けで呼ぶのを明らかにためらったな。仕事だから仕方なく、といった感じだった。
 やはり奴隷に思うところがあるんだろう。それでもちゃんと仕事であると割り切って呼べるあたりはなかなか芯の通った人だと思うよ、俺。

 だけどギルド長に目を付けられるのはちょっと怖いな……
 でも断るわけにもいかないし、行くしかないか。
 受付嬢さんの後ろについていき、ギルド長の部屋へ……立派なドアと、ドアの上に「ギルド長室」とプレートが貼ってあった。受付嬢さんがノックすると、中から渋い声が返ってくる。

「おう、入れ」
「失礼します」

 受付嬢さんについて中に入ると、がっしりした体格の爺さんが居た。日に焼けたいかにも冒険者な肌に、自信と年季を感じさせる白い口髭と、大型の肉食獣のようにギロリと輝く目が印象的だった。

「ギルド長のジンだ。お前らのことはこのシリアから聞いている」

 シリアとは受付嬢さんのことだろうか。名前初めて聞いたな。
 ギルド長は、ニクのことをじーっと見つめて言った。

「…………嬢ちゃん、こっちの兄ちゃんのこと、どう思ってる?」
「ご主人様です」
「…………そうか」

 ニクは即答だった。
 ギルド長はゆっくり頷いてニクの頭をなでる。先ほどの威厳ある姿と違い、好々爺な印象を与える笑顔を浮かべている。
 そして振り返って受付嬢さんに向かって言った。

「まぁいいだろ、おい、シリア。ちゃんとランクアップ処理しておけよ」
「えっ、は、はい……」
「シリアと嬢ちゃんは外に出ててくれ。少しこいつと二人で話がしたい」

 ギルド長に席を外すように言われて、シリアはニクをつれて部屋の外へ出ていく……俺もいっしょに出ていきたいけど、ダメだよなぁ。

「……ご主人様」
「大丈夫だ、外で待ってろ」

 ニクはこくりと頷いて出て行った。
 二人が出て行ったのを見届けて、ギルド長が口を開く。

「だいぶ懐かれてるようだな」
「ええ。可愛いやつですよ」
「……あの嬢ちゃんとはどういう関係だ?」

 探りを入れるような、いや、まさに探りを入れる以外の何物でもない発言。
 やばい、喉が渇いてきた。

「どう、とは?」
「儂はお前らが兄妹だ、とか言われてもおかしくないと思っているが」
「獣人と人間で、ですか」
「腹違いとかなら十分にあり得るさ。どうなんだ?」

 ああ、確かに言われてみてそれならあり得るな。それは思い至らなかった。

「あいにく、偶然拾った奴隷ですよ」
「……何年前に?」
「……年でいうと、今年拾ったんですが」
「1年であんなに懐くのか?!」
「すっすみません、もっと言うと先週拾いました」
「おい、何をした。どんな魔道具を使った、吐け」

 ひっ、急にドスを利かせてきたッ?!

「いや……死にかけてたところを拾ったのでそれでじゃないかと」
「そ、そうか……いや、すまないな。実はあの子なんだが……儂の孫かもしれなくてな」

 おぉーい、そういうのやめてくれないかな。か、返さないよ?

「お前さんも儂の孫である可能性がある……」

 衝撃! 俺は異世界の爺さんの孫だった?!
 いやいやないない。俺の両親も爺さんも今尚地球の日本にいるはずだ。

「それはどういうことですか?」
「儂の親父は異世界の勇者でな。昔は儂もお前さんのような黒髪だったんだ」
「へぇ……そうなんですか」

 確かに、おぼろげに覚えている神様のあの感じだと、俺が初めてというわけでもなさそうだもんな。何回かやってるだろう。
 異世界の勇者っていうのが居たって言うのは重要な情報だな。

「簡単に言うとだな。……儂の息子が十数年前消息不明になった。以来、黒髪の若者をみると、どうにも孫なんじゃないかと気になって仕方がない……それだけの話だ。本当は孫も生まれてないのかもしれんが、息子が今生きていないにしても最期がどうなったかくらいは知りたい。……何か情報があったら教えてくれるとありがたい」
「……何か情報があればお持ちしましょう」
「ありがとう」

 ギルド長が軽く頭を下げた。
 緊張した空気はいつの間にか解けていた。口の中に唾が溜まっていたことに気が付いて、飲んで喉を湿らせた。はぁ、死ぬかと思った。

「しかし……シリアから嬢ちゃんの報告を聞いたときはどうしてくれようかと思ったが……まさか主人の方も黒髪だったとはな。……その、ニク、という名前はお前がつけたのか?」
「……それが名前だったと本人から聞いたので、そのままにしました」
「そう、か。そういう事情なら仕方あるまい……」

 ふー、とギルド長が長い溜息をついた。

「同じ黒髪のよしみだ、多少は便宜を図ろう。何かあれば、言え」

 あんた白髪やん、とは突っ込まないでおいた。

  *

 ギルド長の部屋から出ると、扉のすぐ横でニクは待っていた。
 ギルド長の孫……勇者のひ孫ねぇ、この優秀さを考えるとありえなくはない気がする。
 もっとも、ギルド長の話がどこまで本当かは分からない。なにせ証拠が一切ない。本当に父親が異世界の勇者だっていうなら証拠を見せてからにしてほしい。
 というか、黒髪だから勇者っておかしいだろ。召喚されたのが外国人だったら金髪とかになるし、都合よく日本人だけっていうのも……そもそも同じ世界からかどうかすら分かったもんじゃない。
 うーん、俺も嘘探知できる魔道具が欲しいな……

 ニクを連れて冒険者ギルドのロビーに戻ると、受付嬢さんがギルドカードを持ってきてくれた。

「ではこちら、ランクFのギルドカードとなります。お確かめください」

 受け取ったカードには確かにランクFと書かれていた。カードを渡し終えた受付嬢さんはさっさとカウンターへ戻って行った。
 うん、これでようやく『ただの洞窟』の調査ができるな。
 さっそく俺は、「ダンジョン『ただの洞窟』の調査」の依頼票を探した。

 ……あれ。
 見つからないんだけど、見落としたかな……

「ない、です……」
「無いな。……ということは、誰かが持ってったってことか……」

 やばい、どうしよう。

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