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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

気まぐれな災厄

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238/303

開始

(確定申告とかで忙しくて殴り書きな感じに。後で書き直すかも?)

「今日もいい天気ねぇ」

 朝起きて、小屋の外に出てぐっぐっと体をほぐすレオナ。レオナの小屋の中はサキュバス達のむわっとした甘い匂いが漂っており、意識レベルを落としてサキュバス達を愛でつつ微睡(まどろ)むには良いが、今日はさっぱりと目覚めたい気分だった。

 ここは安住の地だと言わんばかりのサキュバス達は、少しの仕事と十分な食料による充実した生活を堪能している。数日前はだいぶ警戒していたが、もうすっかり骨抜きにされているというべきか。
 ……暇ねぇ、とレオナは思った。

「また【小転移】で村まで遊びに行こうかしら……ん?」

 そこには、露骨に怪しい赤いボタンがあった。
 ……押そうとして、ふと前回のナスが頭をよぎる。だが押さないという選択肢は無い。
 一瞬だけ逡巡したが、丁度そこにサキュバスが通りかかった。スイラとミチルである。

「スイラ、ミチル。丁度いいわ。どっちでもいいからこのボタンを押しなさい」
「はい? このボタン何ですかレオナ様」
「はい! こーですかっ」

 首をかしげるスイラをよそに、ミチルは遠慮なくボタンを押した。
 かぱっと地面に穴が開き、ボタンを押したミチルだけでなく近くにいたレオナとスイラも落ちていく。

「ひゃあああ! なんですかこれ!」
「きゃああああ!? レオナ様ぁ!」
「あらあら、思ってたより広範囲だったわね」

 滑り台のようになっている落とし穴は、少し落ちた先にはマットが敷いてあった。
 薄暗い部屋の中、大きな白いマットにぼふぽふっと落ちる3人。

「うー、な、なんですか。これなんなんですか?」
「落とし穴……なんでしょうか? レオナ様、これは一体」
「ええ、罠ね!」

 レオナは嬉しそうだ。

『れっでぃーす、えーん、じぇんとるめー……おっと、れでぃーすオンリーだったよ! というわけでお嬢さん方、本日は新フロアへようこそ!』

 拡声器を通して音割れしたような声――ウーマの声がした。
 同時に、パッとフロアに明かりがつく。そこはちいさな部屋だった。落ちてきた穴と足元のマット、それと目の前の扉の上に「スタート地点」とこの世界の言葉で垂れ幕がかかっている以外は、特に何の変哲もない部屋だ。
 そこで3人を出迎えたウーマは、胸元に黄色い蝶ネクタイを貼り付け、マイクを持っていた。おちゃらけたパーティーの司会が着けているようなスパンコール生地の蝶ネクタイがキラキラと光っている。

「ゴーレムさん! これはどういうことですか、罠なんですか!」
『ふっふっふ、落ち着けミチル。実は新しいフロアを作ったからその試運転をしてもらおうと思ってね……あのボタンを押した人はそれに同意するって注意書きあったよね?』
「ありませんでしたよ!」
『そうか、じゃあ戻るならそこの階段を上がって右だ』

 ウーマが指さすとガコンと壁に穴が開き、階段が現れた。

『……で、ミチルは戻るとして、他2人はどうする?』
「あ、私はやるわよ? 面白そうだもの」
「レオナ様!? ……わ、私もお供します……!」
「え、ええっ、お姉さまがやるなら私も……」
『なんだミチルもやるのか。それじゃ3名様入りまーす! では、次の部屋へどうぞ』

 ウーマは「スタート地点」の扉を開き、(うやうや)しく礼をしつつ奥へどうぞとジェスチャーした。ゴーレムなのにいちいち人間くさいのは、まぁいつものことかと3人はスルーした。
 そもそもゴーレムが喋るのに慣れている時点でお察しであるが。

 最初の部屋は、いきなり坂だった。それもかなり急な角度で、さらに水が流れていた。坂の上に、次の部屋への扉がある。
 いつの間に回り込んだのか、扉の前にウーマが居た。

『さぁ、第一関門……ザ・坂! はたして挑戦者たちは坂の上の扉へ到達できるのか!?』
「ネーミングセンスはどうにかならなかったの?」
『おっ、良い質問ですねぇレオナさん。……良いアイディアがあれば募集中です!』
「考えとくわ。で、これはどういう関門なの?」

 レオナの質問にウーマはこくりと小さく頷いた。

『うむ。見ての通りこの坂は大変滑りやすくなっている。受験生には申し訳ないのだが、ものすごく! 滑りやすく! なっているのだ!』
「なるほど、受験生に厳しい関門なわけね……」
「あのレオナ様、ゴーレムさん。受験生って、今それ関係あるんですか?」
『で、この坂の底が落とし穴になっている! 落ちたらゲームオーバー。罰ゲームだ!』
「くぅう! まさかの滑ったうえに落ちるですって! これはさらに厳しいわね! ごめんなさい受験生!」
「あの!? ですから受験生とここのトラップに何の関係が!?」

 スイラを無視して盛り上がるレオナとウーマ。ミチルも訳が分からないのか首をかしげていた。

『まぁ滑り落ちなきゃいいんだよ。わかったな? それでは挑戦者たちよ、異世界を含めた世界中の受験生のためにもこの関門を滑らず落ちず、見事突破してみせよ!』

 そう言ってウーマは扉の向こうへ消えていった。

「……あの、レオナ様。これは一体?」
「ふふふ、久々にワクワクしてきちゃったわ。あらあらこの水、とろみがついてるじゃないの! さあ2人とも、気を付けて落ち着いて坂を上るのよ! ほらミチル、あなた軽いんだから先に行きなさい?」
「はい、レオナ様! さぁ、お姉様も」
「え、ええ……」

 3人は滑らないように気を付けて、坂を上り始めた。


  *

「で、ケーマ。これは何なの?」

 3人が坂を上り始めたところで、ロクコが俺に聞いて来た。

「何って、見ての通り坂だけど。あ、今回はテンタクルスライムの粘液は使ってないぞ」
「うん、それは分かる。けど、なんでこんな意味のないトラップをこんな意味のないところに設置しているのかしら、って思って」

 なるほど、確かに新フロアのテストという名目だが、現状落とし穴には特に何もないどころかマットが敷いてあるほどだ。
 しかもこの後のトラップ……トラップ? なんて、そもそも冒険者を想定したものじゃない。例えば「箱の中身が何であるかを手触りだけで当てろ」とか、そんな関門もある。冒険者なら指示を無視して普通に穴を覗き込むような話で、むしろ箱すら触れずにさっさと扉へ向かうレベルの話だ。

「そうだなぁ、まぁ、分かりやすく言えば……マイクパフォーマンスを含めて、雰囲気作りだ」
「雰囲気?」
「今回作った関門は、レオナならルールを守って楽しく遊んでくれるだろう。ただし、楽しくなければその限りではない。つまりこれらは最後のトラップを成立させるためだけの布石ってわけだな。……あ、あと途中のセツナへの仕込みでもある」
「えっと。ようは気持ちよく罠にかかってもらうための接待ってこと?」
「ああ、その表現は的確だ。かなり的を射ている」

 というわけで、今回はレオナの弱点でもある「お約束」の宝庫……バラエティ番組の再現である。
 スイラとミチルが一緒だが、サキュバスが付いてくるのは想定内だ。今のうちにルート変更して複数人対応のアトラクションにしておこう。

「まぁ今日は楽しくレオナ達の攻略を見物しようじゃないか」
「楽しく、ねぇ?」

 ロクコがモニターを見ると、スイラが足を滑らせて落ちそうになるのを、レオナが笑いながらつかまえていた。

(4巻発売中なう。)
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