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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

気まぐれな災厄

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とても関わりたくない人


 レオナは、セツナの拳を優しく握り、撫でた。

「……面白いかどうかで、ボクの体を弄ったの?」
「そうよ? それがどうしたの?」
「外道ッ」

 反対側の手で殴りかかるが、その手が届く前に力が抜け、セツナは倒れた。

「あ……あれ……力、が……」
「私の得意なマッサージのちょっとした応用よ。はいスイラ、食べちゃっていいわよーサキュバス的な意味で」
「ええっ!? ……い、いただきますけど、いいんですか? お孫さんなんですよね?」
「いいのいいの。セツナは特製だからとっても美味しいわよ? 腰砕けになっちゃうんだから……気絶させておいて、そこに転がしておけばいいのよねー?」

 レオナは動けなくなったセツナをサキュバスに渡し、ナユタを見る。

「ちょ、ちょっとおばあちゃん? つまり、私達のお願いは聞いてくれないって事?」
「あら、ナユタもお願いがあるの? もっとおっぱい大きくしてほしいとか? ……うん、丁度いいの(サキュバス)が集まってるから、好きなのと交換してあげるわよ?」
「いらないわよ! それより、私のパパが目を覚まさないのはおばあちゃんの仕業よね?」
「ん? ああ、アレ? んー……きっと何かしたし私の仕業なんだろうけど全く記憶にないわー、ゴメンね?」
「ぐ……ッ こ、このぉ……!」
「あはは、ナユタは怒った顔の方が素敵ね! 大丈夫よ、錬金術を極めたら作れる賢者の石あるでしょ? あれで作る霊薬を使えば起きるわ。あの薬、大抵の状態異常は治るからね。ほら、これが賢者の石の見本よ?」

 【収納】の異次元から、おもむろに赤くほのかに光る石を取り出すレオナ。
 おそらくこれが、賢者の石なのだろう。

「ッ、そいつをよこしなさい!」
「あははっ、良いわよー。……【超錬金】。はい、もうただの石ころだけど」

 レオナは赤い石を灰色の――ただの石に変えてナユタに投げて渡す。
 ナユタはそれでもその石を受け取る。少しでも手がかりが欲しかったが、錬金術のスキルを発動して改めて調べてもそれはただの石以外の何物でもなかった。

「……どこまでおちょくれば気が済むって言うの……!」
「ナユタが錬金術を自力で極めてくれるって信じてるだけよ。ただの人間でもほんの90年で作れるんだから、ナユタなら30年もあれば余裕でしょ? まぁ私は錬金術初めて3日で作ったけど!」

 くすくすくす、と(かん)(さわ)る笑いをするレオナ。ナユタはそれを睨みつけるが、なんの効果も無い。
 レオナは、やさしくナユタの頭を撫でる。いつの間にか撫でられていたことに気付いたナユタだったが、もう体に力は入らなくなっていた。

「それじゃ、ナユタもおやすみなさい? 大丈夫。可愛い孫たちだもの。その白衣と体操服は残しておいてあげる。……下着は貰うけど♪」
「く、ぅ……、この、変態……」

 どさりと崩れ落ちるナユタ。
 こうして、2人とレオナの対面は一方的な結果に終わった。

  *

 レオナは、思っていた以上にとんでもない存在だった。
 まず武力。セツナの全力攻撃を軽く受け止めるあたり、うちの戦力で勝てる見込みは全くなさそうだ。しかも動きが全く見えなかった。瞬間移動だろアレ、時間止めてんじゃないか?
 次に制圧力。マッサージかなにか分からないが、セツナとナユタの2人を一瞬にして無力化し、気絶させた。今2人はサキュバスのごはんである。女でも容赦なく食べちゃうんだなサキュバス。
 そして錬金術。話が本当なら、素材さえあれば他人でもかまわず不老にできるようだ。しかも、賢者の石とかいう超レアアイテム――DPカタログで見ると1個で500万越え――を持ち出し、それをただの石にした。……いつでも作れる、ってことだろうな。【超錬金】とかいうスキルで。勇者スキルはチートだろチート。

 ……あと、何より一番厄介なのは、性格が最悪ということだ。
 こんなやつに目を付けられた日には、夜もまともに眠れる気がしない。ハクさんが機会があれば殺せと手紙に書いた理由が分かった気がする。

「ケーマぁ……」

 呼ばれて隣を見ると、ロクコがほんのり赤い顔でふらついていた。

「おう、今日は比較的大丈夫そうだけど、部屋に戻らなくて大丈夫だったのか?」
「ん、だいじょぶ。今日は私達が相手をしたんじゃなくて、あのアルバイト2人が相手してたからかしら。余波は食らった感じだけど」
「余波はあるのか。そりゃ迂闊に散歩もできないな」
「ケーマならそれを口実にずっと寝そうな所ね」

 よく分かってるじゃないかロクコ、さすがパートナー。

「ところでロクコは、レオナのことどう思った?」
「ん? そうねぇ……迷惑かけられるんじゃなかったら、一周回って好ましい、かしら? なんていうか、自分のやりたいようにやる感じが」
「迷惑かけられる前提なら?」
「ハク姉様と同意見で、殺した方が良いわね。その方が世界のためになるんじゃないかしら。……ケーマこそ、どう思ったの?」
「こいつに付きまとわれたら眠れなくなりそうだ、と思ったよ」

 ケーマらしいわね、とロクコは笑った。

「で、どうするの?」
「そうだなぁ……放置でいいかな? 下手につつきたくない。ウチの故郷には藪をつついて蛇を出す、という言葉があってな」
「レオナをダンジョンに置いて、セツナたちに居場所をリークした時点でもうガッツリつついてると思うけど?」

 言われてみれば確かに既につつきまくっていた。
 ……というか「レオナがここに居ると聞いて来た」ってセツナがもろに言ってたけど、完全にリークしたのバレちゃってるよな? せめて口止めしとくべきだったか。

「ま、まぁ、うん。そのうちサキュバス達ごと何か適当な内職でも割り振るか……居るだけでDPになるけど、暇にさせなきゃ抑え込めるんじゃないかな。仕事がいやになって出て行ってくれるのも期待しつつ?」
「どんな仕事を任せるか期待しとくわ」

 レオナが、まさかあれ程までデタラメな存在だとは思わなかった。とりあえず、こちらが情報をリークしたことを怒って何かしてこないように祈っておこう。


  *

 レオナにセツナ達をけしかけたその日、俺は食堂で晩飯を食べていた。
 今日はそこそこ混んでいるなぁ、と思いつつ食堂の端っこのテーブル席でのんびり食べていたのだが……ふと声がかかった。混んでる時はよくある相席の誘いだった。

「すいませーん、ここ相席いいですか?」

 まだ他にも席が空いてるテーブルはあるのだが、俺が村長だからか、はたまた気安そうな若造だからか声がかかりやすい。
 さしあたって断る理由もない、俺は顔を上げつつ答える。

「ああ。別にいい、ぞ……ッ?!」
「あら。私の顔に何かついてました?」

 何かついていたどころではない。
 黒髪をポニーテールにした、赤い瞳の女性が――
 ――レオナが、目の前にいた。

 やべぇ、俺、死ぬかもしれん。

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