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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

情報は大事。これはガチ。

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はじめての人里二日目

 朝ごはんにハムサンドを買い食いしつつ、今日は朝から冒険者ギルドにやってきた。
 早朝の冒険者ギルドは、かなり人がごった返していた。
 見ていると、掲示板に貼り出された依頼を取り合っているようだ。
 ……うーん、混ざりたくない……

「ご主人様」

 ニクが「任せて!」と言わんばかりのキラキラした眼差しを向けてくる。
 …………正直、通勤ラッシュのようなところに小さな子供を一人向かわせるのは気が引けるが……

「よし、よさそうな依頼をとってこい!」
「はいっ」

 ニクは嬉々として人の波に突っ込んでいった。小さな体があっという間に飲まれて見えなくなる……
 しばらくして、依頼票を2枚、口に咥えて戻ってきた。
 よーしよしよし、と頭と顎をこちょこちょ撫でてやると、ニクは嬉しそうに身もだえた。
 どう見ても犬です本当にありがとうございました。

 さて、取ってきた依頼は……「配達10件 報酬:銅貨10枚 ランクG以上 1人以上 備考:今日中に配達すること」と「ウサギの討伐 報酬:1匹分の肉を銅貨10枚で買い取り ランクG以上 1人以上 備考:最低3匹、最大10匹まで 当日狩ったもののみ」か。
 なるほど、郵便配達ならマップと布の服ゴーレムでどうにでもできるし、ウサギくらいなら討伐できそうな気がする。丁度いいだろう。俺はさっそく依頼票をカウンターに持って行った。

「……昨日町に来たばかりのあなたに郵便配達は荷が重いのでは? おススメはしません」

 ……おう、またあんたか。カウンターにいたのは、昨日と同じ受付嬢さんだった。

「届け先をしっかり教えてくれれば問題ないです」
「流石に現地まで連れていくとなると、自分で手紙を届けたほうが早いでしょう?」
「そこまでしっかり教えてくれとは言っていないですが」
「しかも討伐系依頼も一緒に受けるのですか。無謀ですね」
「無謀ですか?」
「ええ、無謀です。よほど自信があるのですね、特にウサギの依頼ですが、こちらは串焼肉屋の屋台で使用するためのものです。あなたが腰にさした素人丸出しの剣でグチャグチャになった肉は、いったいいくらまで買い叩かれるのでしょうね?」
「まぁそこは相方にまかせるので」

 正直戦闘系はニクの方が強い。

「……尚、ギルドカードを作るときに説明したと思いますが、依頼達成できなかった場合は罰金と、何らかの処分があります。良いですね?」
「ええ、かまいません」

 ごめん、それ聞いてなかったわ。
 ともかく俺とニクのギルドカードを差出し、依頼を受理してもらう。

「……受理しました。せいぜいお気をつけて。ああ、配達依頼については裏手にまわって担当者から受け取ってください」
「はい、どうも」

 やたら睨んでくる受付嬢さんだが、仕事はちゃんとしてくれてるし言っている内容は喧嘩腰なのを除けば正しいアドバイスだ。有能な人なんだろうな。もしかして勘違いされやすいタイプだったりする人なのかもしれない。

「よし、それじゃ行くぞニク」
「はい」

 俺とニクはカウンターを後にして、まずは配達依頼をこなすべく、裏手にまわった。

  *

 配達依頼については俺とニクで手分けをして、あっさり終了した。
 ……俺の足が筋肉痛で思うように動かず、ゆっくりと比較的近場の3件を片付けている間に、ニクがさっさと他7件を片付けてしまった。布の服ゴーレムによるナビゲートと補正があるとはいえ、優秀だなと褒めざるを得ない。撫でてやると得意げに尻尾がパタパタするのも可愛くて癒される。

 ここまで終わってまだ午前中である。これならウサギの方も余裕だろう。
 と、そういえばウサギってどこで狩れるんだろうか。しまった、情報が全然無いぞ。
 とりあえず、依頼人のところに行ってみて聞いてみよう。

 依頼人は串焼肉の屋台をやっていた。
 油ののった肉が焼ける良い匂いが漂っている。反射的に口の中によだれが出てきたのを、ごくりと喉を鳴らして飲み込んだ。

「お、ウサギ肉の依頼を受けた冒険者か。で、肉は? みたところ持ってなさそうだが」
「ああいや、まだこれから行くところなんだ」
「そうか。肉を使うの来週だからな、今日中にしっかり狩ってきてくれればいい。夕方まではここで肉焼いてるからな。で、そんなら何の用だ?」

 と、その時「くぅん」とかわいいおなかの音が聞こえた。もちろん俺ではない、ニクだ。
 しかしそういえば昼ごはんがまだだったな。

「……そうだな、まず串焼肉を2本貰おうか。あと、どこでウサギが狩れるのか教えてくれ」
「あいよ。2本で、銅貨10枚……うん、ちょうどだな。で、ウサギなら町の外だよ。西門の方がいるんじゃないかな、ツィーア山寄りの森、のちょっと手前くらいにいるぞ……ああ、解体に自信がないならそのまま持ってこいよ」
「そうか、ありがとう。それじゃ行ってくるよ」

 俺は串焼肉を受け取り、1本をニクに渡す。
 代わりにニクは、俺に銅貨5枚を渡そうとする。が、俺は受け取らなかった。

「これは情報を買うための必要経費だから要らん。それに、奴隷に飯をやるのは主人の義務だろ。さ、食うぞ」
「……えと、それじゃあこれはどうしたら……」
「ああ、ニクが欲しいと思ったものを買うときに使えばいい。欲しいものに足りなきゃ貯めとけ」
「えと……その、はい」

 ニクは、財布代わりの小袋に銅貨を仕舞う。そして串焼肉にかぶりついた。
 ……うん、そうだな、不味くはない。決して不味くはないんだが、少し生臭くて、あとハンバーガーに比べたら味付けが薄くて物足りなさがあるな。そんな顔をしていた。

  *

 西門でギルドの依頼票を見せると、通行料を払わずに門の外に出ることができた。
 そして森に向かっている最中、一匹目のウサギを見つけた。

「きゅ?」

 なんと……白くてかわいい。赤いおめめがキュートな小動物だ。もふもふだ。もふもふが草をはむはむしている。
 が、次の瞬間ニクが首をすぱんと切断していた。右手にはゴーレムナイフ、振動モードで楽々切断だ。

「おにくです」
「お、おう。よくやった、偉いぞ」

 この子容赦ないな。
 まだ首からどくどくと血を流すウサギの死体の足をもって、ある程度血抜きをし、血があまりでなくなってからぽいっと革袋に放り込む。切り落とした頭もついでに入れておいた。

 俺、ニクが居なかったらこの依頼心折れて達成できなかったかもしれない。……ダンジョンで冒険者が死ぬより罪悪感があるなぁ。

 まぁこのあと俺もウサギの頭を刎ねたけどね。日頃から食べてるお肉は誰かが殺した肉なのだ、それを食べた時点で俺もそれに加担している。なら、ここで殺せない道理はないな、食べる肉だし。
 ゴーレムブレードと布の服ゴーレムのアシストにより、俺でも綺麗に首を刎ねることができた。
 返り血を少し浴びてしまったが、『浄化』ですぐに奇麗になった。
 ……あれ、そういえばニクさんは返り血の一滴も浴びてないんですね、マジ尊敬っすわ。

 さて、そんなこんなで10匹分のウサギ肉を依頼人のところまで持ってきた。
 内訳? ニク8、俺2ですが、何か? ニクってばウサギ見つけて即斬するんだもん。
 俺にもやらせてっていったらちゃんと見つけたのを差し出してきたよ、両手で逃げないように捕まえたやつを。
 あと1匹は俺が自力(ゴーレムアシストあり)で倒したものだ。
 もうニク1人でいいんじゃないかな。

「へぇ、こいつは……兄ちゃん、見かけはひょろいが、いい腕してるんだね」

 すんません、それこっちの子の成果なんですよ。
 俺はニク先生が次々狩ってくるウサギの足を持って突っ立ってる係で、血が出なくなったら袋にポイしてただけなんですよ。ニク先生が単独で森にはいって、俺はぼーっとウサギの足もって森の外で待ってただけなんスよ。

 ともあれ、依頼人には高評価をいただけた。血抜きのおかげで袋の中に放り込んでおいたのに毛皮もいい状態だったのが大きかった。一匹以外はそれぞれ最大の銅貨10枚でお買い上げとなり、銅貨97枚……を、殆どの状態がよかったのでおまけしてもらって、銀貨1枚の収入となった。

 え? 7枚だったやつ? そうだよ俺が自力でやったやつだよ。悪かったな、胴体真っ二つだったよ。




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