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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

狙われたゴレーヌ村

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魅了

(ケーマは しょうきを うしなっている!)

 ふっ、スイラを一瞬で倒してしまった。
 しかしこの感触、実に心地よい……はっ、なぜ俺は腕をとる形で寝技を!?
 なぜ足を固めて堪能する技を選ばなかったんだ! バカか!

「な、い、一体何が……」
「足払い、そして腕ひしぎ十字固め……なに、ただの対人戦用の武術の技さ」
「くぅっ、は、放しなさいっ」
「おう」

 スイラが離せというので、俺はスイラを解放した。
 ふふふ、これで足を固めて堪能する技が使えるな。スイラ、なんて気が利く女性(ひと)なんだ。

「さて、次はどうする?」
「……く、私は皆のためにも負けるわけには……ッ」
「じゃあ俺に負けろと? ふっ、いいだろう。まいったよ」
「……んん?」

 まぁどうせ勝ち負けなど意味は無い。
 なら負けたことにしようじゃないか。ん? なんだスイラが不思議そうな顔をしてるな。負けるわけにはいかないって言ってたのに、勝っても嬉しくなかったんだろうか?
 ふーむ、乙女心は複雑だな。

「1回回って手を振ってみてください」
「おう。こうか?」

 よく分からんが、スイラがやって欲しいというならやろうじゃないか。
 スイラの言う通りに、1回くるりと回って手を振る。

「魅了、されてるの……?」
「まってくださいお姉さま、さっきも私がそれを試しました。まだ演技かも」
「じゃあ、えっと……じゃあさっきの書類にサインして?」

 上目遣いは卑怯だぞ! くそう、こんなんサインするしかないじゃないか!

「わかった。……これでいいか?」

 スイラが改めて差し出した書類に、俺はサラサラっとサインした。ちなみに俺はこちらの世界の文字は読めても書けないのだが、グローブ型ゴーレムにロクコ協力の下いくつかの単語を覚えさせてカタコトで書けるようにしている。自分の名前もその一つだ。
 スイラは手元に戻ってきた書類を見て、間違いなくサインされていることを確認していた。んん? なんだ鳩が豆鉄砲食らったような顔して。そんな顔もなんて素敵なんだ。

「……やったわ、ね?」
「す、すごいですお姉さま! 好みの違う男性まで魅了してしまうだなんて!」
「いいえ、ちがうわミチル。この男……もともと幼児性愛者(ロリコン)ではなかったようね」

 ああ、そういえば俺のことを幼児性愛者(ロリコン)と勘違いしていたのか。まったく、俺はいつも否定しているというのに誰がそんな噂を流したのやら。そのせいでスイラに変な勘違いをさせてしまった。……今度徹底的に聞き込みして犯人を締め上げてやらないとな。

「……村長、あなたの誰にも言えない秘密を教えなさい」
「ふむ? 誰にも言えない秘密……それを2人の秘密にしようということか?」
「そうです。おっと、ミチルの事は無視しておいてください」
「分かった。それで、俺の誰にも(・・・)言えない秘密だな?」

 誰にも言えない、となると難しいな。大きな秘密と言えばここがダンジョンであることだが、それはロクコたちには言えることだし、俺が仮面の土魔法使いナリキンということだってロクコたちは知っている。
 つまりロクコにも言えない俺の秘密……なんかあったっけか? うーん、スイラと秘密を共有するためにもひねり出さなければ……あっ。

「実は……いまだにパートナーって単語の意味をはかりかねているんだが、最近パートナーのロクコがさりげなく距離を詰めて来ていてちょっと怖いんだ……」

 うん、これならロクコにも言えない秘密だな。スイラと秘密を共有しちゃったぜ。

「……ノロケかしら?」
「ふふ、そう聞こえてしまったかい? 大丈夫、俺の心に居るのはスイラだけだよ」
「あら嬉しい。では他には無いかしら? そうね、人に言えない性癖とか」
「うーん、人に言えない(・・・・・・)性癖か。難しいな……」
幼女性愛者(ロリコン)ではないのよね」
「違うぞ」

 俺は足フェチだが、別段隠しているわけでもない。むしろ割とオープンだ。ロクコにもホイホイことあるごとに言ってるし。そしてニクあたりはたまに俺の部屋に靴下忘れてくあたりいろいろ解ってる感がある。
 そうなると、俺の人に言えない性癖は……うーん、やっぱり難しい。そもそもダンジョンマスターになってから性欲あんまりって感じだしな?
 だが! スイラが求めるというなら答えるのが男ってもんだ!

「あ、そうだ。最近、女の子になったときの感覚がちょっと快感でな」
「……女装癖ということでしょうか?」
「そんなとこだろうか? こう、可愛くなるのってちょっと楽しかったな」
「ふむ、これは弱みになりそうですね……」

 弱み? なるのかどうかわからないが、スイラが嬉しそうだし別にいいか。
 いっそスイラに変身してイチャイチャとかもいいかもしれない。

「あと、女同士もいいかもしれないって最近思ってるかな?」
「そうですか。なら今度、夢の中で女の子にして可愛がってあげましょうか? 現実では味わえない感覚ですよ」
「そいつは素敵だ。楽しみにしておくよ」

 実際は【超変身】で現実にも女の子になれるんだが、女性の申し出は断らないのが良い男ってなもの、かもしれん? だと思う。きっと、多分。

「それじゃあ、やられたら嫌なことは?」
「寝るのを邪魔されることだ。俺に関係ない理由でもしそれをやられたら、俺は……そいつを敵と認識して全力でブッ潰す。俺の眠りを妨げる奴は全員敵だ」

 今度の質問は答えやすくていいな。フフフ、でも君なら特別に俺を起こしてもいいんだぜ? スイラの声を聴けるなら、それは十分起きる理由に……ギリギリなるかもしれないな。いや、微妙? うーん。スイラでもちょっとそこは考えさせて。

「……仮にやったらどうなるのかしら?」
「あいつらは、ダンジョンに食わせたんだったっけかな? いい思い出だよ」

 うん、山賊たちは良い養分だった。まぁあれはロクコに頼まれてって感じだったけどな。
 ……あれ? スイラちょっと引いてる?

「おっと、すまない。怖がらせてしまったかな?」
「い、いえ。何でもないのよ大丈夫」
「ならいいけど」
「……お姉さま、この人ヤバくないですか? 人殺してますよ?」
「逆に考えるのよミチル。これは弱みになるわ」

 別に俺が直接手を下したわけじゃないが、まぁ確かにダンジョンのことは弱みになるかな? うん、さすがスイラだ。特に俺から付け加えて言う事もないな。

「……まぁ、このくらいで良いでしょう。それじゃあ村長さん、貴方は自分の部屋に帰って、また会う時まで私達の事は忘れなさい。ここであったことも秘密よ。……でも、この書類にサインしたことだけは、納得しておくこと」
「分かった。それじゃあ俺は部屋に帰るよ」
「いい子ね。ご褒美を上げるわ」

 そう言うと、スイラは俺に顔を近づけて――
 ――唇と唇を優しく触れ合わせ、軽く舌を差し込んできた。
 甘く柔らかい舌に、俺は腰から力が抜け倒れそうになるが……何とか耐える。
 心臓が、ばっくんばっくん鳴っている。きっと、顔も真っ赤になっているだろう。

「ッ……っぷは、ぅ、こ、これは……足にくるな」
「ぷは。あら、可愛い。……キスだけでこんなになっちゃうだなんて、案外ウブなのね?」
「あ、あまり見ないでくれ。恥ずかしい」
「あらこれは……パートナーさんに悪いことしちゃったかしら? フフ」
「なに、ロクコは関係ないさ……」

 その後俺は、宿に自分の足で戻っていった。
 そしてスイラの言う通り、スイラとミチルのことを忘れるのであった。

(次の水曜は更新できないかもしれませぬ)
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