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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

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とりあえず一泊。

 冒険者ギルドに戻ったころにはもうすっかり日が暮れていた。

「……はい、依頼達成おめでとうございます。こちら報酬の銅貨8枚です」

 無愛想を通り越してなんか睨んでくる受付嬢さん。銅貨は確かに8枚入っていた。
 ふん、そんなに睨まれてもニクの扱いは改悪したりしないぜ。

「それと、お嬢さんの方には特別報酬として銅貨1枚を追加です。依頼人より、お嬢さんの方に直接渡すように、と言付けがありました。どうぞ」
「へぇ、よかったなニク」
「は、はい」

 差し出された銅貨をカウンター越しに受け取るニク。
 ニクは小さいため、受付嬢さんがだいぶ身を乗り出して渡していた。

「……ご主人様、どうぞ」

 そして受け取るや否や俺にその銅貨を差し出してくる。
 ……いや、それはとっといたほうがいいんじゃないか?

「……それはニクの好きに使えよ」
「ど、どうぞ」

 かたくなに差し出してくる。……いつまでもカウンター前でこうしてたら邪魔だな。しかたない、ここは受け取っておこう。あとでニクにお小遣いとしてあげなおせばいいか。

「わかった、ありがとう」
「ん……♪」

 銅貨を受け取り、頭をなでてやる。ニクは実に嬉しそうだ。犬尻尾がぱたぱたしておる。
 お、おう、受付嬢さん、睨むなよ。すぐどくからさ。……あ、そうだ。

「このあたりで宿をとりたいんですが、いいところありません?」
「南門外のスラムであれば銅貨4枚もあれば寝床は確保できますよ、安全は保障しませんが……ああ、なんならそちらのお嬢さんは私が預かって差し上げましょうか? タダでもいいですよ」
「いや、遠慮しておきます……」

 な、何をたくらんでるんだこの受付嬢。っていうかそこ近づくなって言ってたところじゃないか?
 そしてニクに何をする気なんだ?! もしかして一晩預かってひどいことする気なのか?!
 くっ、よくわからんが受付嬢さんは警戒した方がよさそうだな。

「……1泊、銅貨40枚以内でぐっすり眠れる宿、飯がうまければ尚いいです」
「ではこのあたりでは、『眠れる小鳥亭』が良いでしょう。1泊銅貨35枚、1食付きです」

 それはなかなか好条件そうだ。しっかり仕事してくれる受付嬢さんは受付嬢の鑑だな。
 地図をみせてもらい場所も分かったところでさっそく行ってみることにした。
 本来、日収銅貨8枚の冒険者じゃ泊まれないところだが、ダンジョンマスターが本業の俺には些細なことだ。まぁ実際資金は心許ないけど。
 ……あ、明日からはもうちょっと稼いでおこう。今日は町に来てすぐギルド登録してそのついでにちょっと仕事しただけだもんな……ああ、でもあんなあっさり終わるとはいえ仕事をしてしまった。
 働かないで安全とお金だけ手に入らないかなぁ……

 ダンジョンを拠点にするにしても、全力で走って半日くらいは離れているので日帰りはしがたい。歩いていけば1日がかりだと思う。
 どうしても1泊は必要になるわけだ……で、こちらがその『眠れる小鳥亭』である。
 木造のきれいな宿だ。受付嬢さんのおススメ、ありがたいです。何企んでるかは知らないけど。
 扉を開けると、受付におかみさんが座っていた。

「すみません、冒険者ギルドで紹介されてきたんですが、部屋あいてますか?」
「うん? ああ、空いてるよ。ギルドの紹介か。お客さん冒険者かい? うちは飯付きで1泊銅貨35枚だけど……ん? そっちの子は奴隷ね。奴隷はどうする? 納屋なら銅貨5枚で貸すけども」
「ああ、こいつは一緒の部屋で寝たいんですが……追加料金いりますか?」
「……そういうことなら追加料金はいらないわ。奴隷の飯はどうする? 銅貨2枚だけど」
「じゃあそれで。1泊頼みます」

 銅貨が足りなくなっていたので、銀貨1枚と銅貨7枚を渡そうとして、そういえばおつりは全部銅貨だと気づいて銀貨1枚だけ渡す。
 おつりは銅貨63枚……これ、数えるの面倒だな、とおもってたけど、コインケースみたいな道具をつかって10枚ずつ数えていて、それほど面倒でもなかった。便利な道具があるもんだな。ただ、まず銅貨100枚を出してそこから37枚を抜く、という手順だったのが少し気になった。

「一泊分だね。あー、飯は部屋まで運んだ方がいいかい?」
「頼めるなら」
「よし、それじゃあそういうことで……そうそう、部屋を出る前にシーツに『浄化』くらいはかけておいてくれるとありがたいね。それじゃこれ鍵。部屋番号は7、1階の一番奥だよ」

 鍵を受け取り、部屋に向かう。
 「7」とこちらの世界の数字が書かれたドアを鍵を使って開けると、中はいかにも宿屋です、といわんばかりの部屋だった。
 窓は……ああ、窓ガラスとかじゃなくて木の板がはめてある。観音開きの戸みたいだ。そういえばガラスってこっちの世界あるのかな? なければ水ゴーレムの価値が爆上がりな気がする。
 灯りとしては光の魔道具が設置されていた。魔石を置くとスイッチが入り点灯するそうで、この宿の目玉とのことだ。魔石は自前で用意するか宿で売っているものを使えばいいようだ。
 尚、魔石が無くても自前で魔力を流せれば点灯させることはできる……流し続ける必要はあるけど。
 ちなみに初めて聞いたけど、魔石は使っていると摩耗して最後には消滅するらしい。定期的に魔力を流してやると長持ちすると言われているようだ。

 そして肝心のベッドであるが、木の箱に薄いシーツがかかったような感じだった。だいぶ固い。というかほぼ板だコレ。
 一応布を何枚か重ねた敷布がある分、公園のベンチより多少マシって程度じゃなかろうか。
 5DPの『オフトン』がとても上等な寝具に思えてきた。実際上等なんだろうけど。

「わたしは床でねます、か?」
「いや、一緒に寝ようか。寒そうだ」

 今日はご飯を食べたらもうさっさと寝よう。……実はさっきから筋肉痛が結構キてるのだ。
 明日は激痛に耐えかねて布の服ゴーレムに強引に体を動かしてもらわなきゃ動けないかもしれん……
 そう思いつつ、自分とニクに『浄化』をかけて、飯を待つ。

「ああ、そうだ今日の報酬の分配をしなきゃな」

 俺は銅貨5枚を取り出し、ニクに渡す。山分け+追加報酬分だ。

「こん、こんなに、いただけませんっ! わたし、何もしてないのに」
「ニクが依頼を見つけて俺の『浄化』ならできるって教えてくれただろう? だからいいんだよ、とっとけ」
「で、でも……」
「串焼肉がちょうど銅貨5枚だったっけなぁ……俺、ニクと一緒に串焼肉食べたいなー」
「……も、貰っておきます」

 串焼肉の話をしたせいか、くぅぅ、と腹の虫が鳴く音が聞こえた。
 俺じゃない。ニクだ。
 ……そういえばツィーアついてからなにも食べさせてなかったっけ。朝飯だけだ。
 俺だけリンゴ食っててちょっと罪悪感がある。

 しばらくして、宿の人が飯を部屋に持ってきてくれた。
 俺の分はパン2個と野菜スープ、ニクのほうはパン2個のみだ。なるほど、こういう違いがあるのか。
 俺は野菜スープをニクと仲良く半分こし、硬いパンを無理やり喉の奥に押し込んだ。
 野菜スープ自体はなかなか美味しかったよ。うん。薄味だったけど、野菜のうまみが出ている感じで。

  *

 さて、一晩あけて部屋を出る。身体はコキコキと硬いが、筋肉痛はそれほど重症でもなかった、助かった。
 今回はニクもおもらしすることなくしっかり抱き枕の務めを果たすことができた。寝る前のトイレは大事だよね。いっしょに寝るにあたって服を脱ごうとしていたのはさすがにアウトだろうと止めたけど。
 そういえば出る前にシーツを『浄化』しておいてくれと言われたことを思い出し、さくっときれいにしておいた。『浄化』も慣れたもんだ。……うっかり余波で部屋中が綺麗になったのはご愛嬌だろう。ま、まぁ綺麗になる分には構わないはずだ。

「ニク、忘れ物は無いか?」
「だいじょうぶ、です」
「よーし、それじゃ朝飯代わりに屋台で何か買ってくか」
「は、はいっ」

 俺は『眠れる小鳥亭』のおかみさんに鍵を返し、宿を出た。
 これが手ごろな値段の一般的な宿屋……これも情報収集の成果だな。
 そういえばロクコはダンジョンに1人で大丈夫だっただろうか……大丈夫だろうな。俺が来る前は1人だったんだし。

 そろそろダンジョンのマスタールームが恋しくなってきた。
 もっと有益な情報をさっさと集めて帰ろう……


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