サキュバス
(推敲不足なので後で書き直すかもです)
一応ロクコには説明した。
「なるほど、つまりケーマは幼女を縄で縛ったり首輪を付けたりしたと」
「うん、人聞きが悪い」
一応ちゃんと分かってくれてるはずだが……なぜ幼女形態で俺の脛を蹴る。痛い。せめて大きい方にしてくれ。
「というか、それならこっちもサキュバス召喚したらいいじゃない。セツナからの情報で1人は召喚するって言ってたじゃないの、あれはどうしたのよ?」
「……おう、あとで呼ぼうと思ってすっかり忘れてた。うん、今ならDP的にもサキュバスの召喚もいけるだろう。早速召喚しよう」
というわけでカタログチェックだ。……んん? 3万DP? 前に見た時よりだいぶ安くなってるぞ。あれか、サキュバス関係者が近くに多くいるからか?
「まぁいいや。召喚してみようか。宿の従業員にも良いだろうし……」
「サキュバスも相当期待できそうね。クロウェみたいな執事服着せるのもいいかも」
というわけで、いったんマスタールームに移動してサキュバスを召喚することにした。
3万DPを消費し、久々にぶぉんと魔法陣が広がるのを見る。
魔法陣が1mくらいの大きさになると、そこから1人の女性が現れ――なかった。
「……あれ?」
「失敗したの?」
よく見ると、代わりに指輪が1つ落ちていた。
「なんだこの指輪。さっきまでなかったよな?」
「あ、まってケーマ。これ、サキュバスっぽいわ」
「……は? なんだって?」
サキュバス? これ、指輪だぞ。宝石のように透明な魔石が付いてるけど。
どうなってるんだ? と指輪を拾うと――
『マスター。初めまして』
「ん? ……おお、声がする。これ、サキュバスの声か?」
「そうみたいね。ほらこれみて」
俺はロクコに見せられてカタログを見直す。
するとそこには『サキュバス(3万DP) ※実体無し』と書かれていた。
よく見ると赤字でくっきりと。完全に見落としていた。
「……残念だが従業員にはできないか。どうしようコレ。サキュバスのおみ足ちょっと期待してたんだけど」
「よしケーマ、あとで私の部屋で正座ね」
えっ解せぬ。なんでや。
しかしこれ、実体無しってどういうことなんだ? これでどうしろって言うんだろう。
「えっと……何ができるんだ? 実体無しで」
『実体がないので、憑依したり夢の中を渡ったりすることができます』
「ほう、憑依するのか。で、憑依した後はずっと憑依しっぱなしとか?」
『いえ、いつでも解除可能です。一応指輪が本体なので、離せば抜けます』
「へぇ。……俺にも憑依できたりするのか?」
『はい! ……あ、すみません。マスターは魔力と夢力が強すぎるのでマスターの全面的な協力がなければ憑依できません』
夢力ってなんだよ。あとロクコは「ケーマが……サキュバス!? その発想は無かったわ」とかブツブツ言っていた。男ならインキュバスじゃないのか。
「むしろ男かどうかは関係ないのか?」
『はい。ただ、男性は私が憑依すると男の娘になります』
「ごめん、もっかい言って?」
『男性の方は、私が憑依すると男の娘になります。特にマスターは魔力と夢力が強いので、仮に私が憑依できていたら絶世の美人になれますよ。表を歩けば襲われ、護衛を付ければ護衛に襲われるレベルの超サキュバスです、最強です』
……それは果たして最強なのか?
とりあえず俺への憑依は見送ることにした。
「というわけでロクコ、はいこれ」
「……うん? 私はもう指輪持ってるけど? ケーマからのプレゼントのを」
「いや、試しに憑依してもらおうかなって」
『ロクコ様は……おお! これまた素晴らしい魔力と夢力と性欲を……ぐへへ……おっと』
うん、今指輪の魔石が妖しく輝いた気がしたぞ。さすがサキュバス指輪、曰く付き以外の何物でもないぜ。
……ロクコにつけさせるのもやめておいた方がよさそうだな。ダンジョンコアの身として何かあっちゃ困るし。
「よしキャンセルだ。他の奴につけてもらおうか」
「む。まぁ、仕方ないわね」
『ええっ!? 私が憑依すればもれなくサキュバス標準の際どくてエッチな衣装になるんですよ!? マスター、ロクコ様の際どくてエッチな衣装姿を見たくないんですか?』
「間に合ってます」
『なるほど、既に体の隅々まで見せ合っている仲でしたか、これは失礼をば』
俺は指輪を叩きつけたくなったが、なんとかこらえた。
とりあえず、誰につけるのが一番いいんだろう。俺とロクコは、配下を一通り呼んでみることにした。
まず最初に呼んでみたのは、魔物3人娘。
「この中ではどうだ?」
『ええと、銀髪の吸血鬼の方が一番適性が高そうですね。ただ、私にはどうしようもない呪いがかかっているようで……残りの2人は同じくらいです。微妙な感じですね。お2人とも、性欲あるんですかねぇ?』
攻撃力0の特性はサキュバスを憑依させてもダメそうだな。そして性欲の有無も相性のパラメータになるようだ。……お家妖精で家事命のキヌエさんに、魔女見習いで研究三昧のネルネ。うん、確かに性欲薄そうだ。
「マスター。吸血鬼とサキュバスはどちらも夜の住人で、人型で、ニンゲン共を襲うという共通点はありますがッ! 吸血鬼とサキュバスは全くの別物ですからね!!」
「それは分かってる。とりあえず適性を見てもらっただけだ」
『とりあえず1回誰かに憑依してみてもいいですか?』
「……だそうだけど、どうする?」
「はーい、では私がー。私に憑依していいですよー?」
と、立候補したのはネルネだった。おや意外。
さっそく指輪をネルネに渡すと、右手の中指にはめた。
『憑依!』
ひゅん、と風がネルネを包み、次の瞬間にはネルネの服が布面積のやたら少ない水着に白衣という痴女スタイルに変化した。
ついでに言うと胸が気持ち大きくなったんじゃないかなって気がする。そしてなにより脚が目を引く。
「へぇー、服が変わるんですねー。これは応用すれば一瞬で装備を変える魔法とかにー?」
自分の体を触りつつ確かめるネルネ。無駄に色っぽく、柔らかな手つきでつつーっと体の形を確かめるようになぞって触る。
「胸も大きくなってますねー。肉体改造系の魔法にも応用できるとこがー……? ふふふ、思いのほか勉強になりそうですー」
「ふむ、じゃあサキュバスはネルネに憑依させて運用するか?」
『あー、すみません。憑依解除していいですか? 酔ってきました。解除!』
酔うもんなのか。オイ。
俺が良いとも悪いとも言う前に、サキュバスの憑依が解けた。ネルネの恰好が元の研究者スタイルに戻る。露出が少ない、田舎娘っぽい素朴さがある普通の可愛い女の子だ。
『……ふう! がんばりました、どうでしたか!』
「何、時間制限あるの?」
『ネルネ先輩は頭の中でヤバいくらい高速思考されてまして、その、あれです。たぶんこの人、性欲全然なくて研究欲しかないんじゃないかなぁって……』
ネルネ、のんびりしてるように見えて脳内で考えまくってるタイプだったのか……キヌエさんも料理のレシピや掃除の手順で埋め尽くされていて性欲があるかどうか怪しそうなもんだ。
というわけで3人娘に憑依させて運用するのは諦めた方がよさそうだった。
(……クリスマス? い、いせかいにそんなこといわれても……)