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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

正体不明の姉妹

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自己紹介

 借金勇者ワタル率いる一行は旧謎解きエリアの一角、『強欲の宿屋』と呼ばれる場所へやってきた。

「あれ、こんなところに出店があるんだ」
「あら本当。……保存食と、貸本? へぇ。まぁ割高だけど良いじゃないの」

 メインの小部屋が並んでいる部屋があるのだが、その手前。安全地帯の範囲内で陣取って店をやってる奴が居た。

「店があると、ダンジョンとは思えないな」

 ワタルが苦笑しつつ言う。
 ダイン商会、まぁウチの村の財務省的な商店なんだが、そこに俺が軽く漫画喫茶を思い出しつつ話をしたら本気で屋台を出したんだ。言った俺も驚いたわ。
 利用者はそんな居ないはずなのに、利益は出てるんだろうか? と思うけど、限定した時間の間だけ店を開くことで少し利益を上げているようだ。ここの主な利用者もその時間に合わせて使っている感じだ。

「貸本は前払い、かつ冒険者ギルドのカードを見せて、と。踏み倒しはできないわけね」
「保存食は堅焼きのパンとジャーキーだね。……最近こっちのパン見てなかったなー」

 ナユタとセツナはそれぞれ本と保存食に金を支払っていた。貸本は物語系と教本系とあるが、ナユタが借りたのは物語系のようだ。

「ここがー、新たに発見された変な施設なんですねー」

 ネルネは既にここの施設の事は知っていたが、裏からしか来たことは無い。表から来るのは初めてだったな。
 あくまでここに来たくて連れて来てもらったという体裁なので、興味深そうに小部屋を見つめる。

「じゃあ、さっそく使ってみようか。12時間、結構長いけど」
「2人ずつ入れば多少は暇が潰せるんじゃないかしら」

 ワタルの言葉にナユタが至極当然なことを言った。さすがに1人で過ごすには12時間は長い。

「まってくださいー。私達の時間は有限でー、それなら1回分でもチャンスは多い方が良いと思うんですよー? 部屋も余ってますしー」
「そ、そうだね。さすがに僕はこの中でペア作ったらマズいだろうし!」
「……それもそうね。じゃあ1人1部屋で」

 ネルネの介入により、無事全員バラバラにすることに成功した。これで目的の第一段階は突破だ。

「一応ケーマさんからオフトンを借りてきたから、使ってくれ」
「あら、気が利いてるわね」
「それじゃまた12時間後にお会いしましょうー」

 ワタルが小部屋にオフトンを敷き、4人はそれぞれの部屋に入って扉を閉じる。
 砂時計を回し、12時間のタイマーを起動させた。


  *

 かれこれ1時間が経過したが、セツナは既に飽きていた。そろそろ寝ようかな、とオフトンに入るが、あまり眠くないようでごろごろしていた。
 頃合いか。
 俺はロクコを呼ぶ。呼んで3秒でマスタールームで合流した。

「いよいよあの姉妹の正体が明らかになるのね!」
「かもしれない、だな」

 ゴーレムを操作し、セツナの待機する部屋の裏側から手紙をセットする。そしてタイマーはまだだがアイテムを出す箇所に手紙を落とした。紙を二つ折りにしただけのむき出しの物だが、コトン、とそこそこ音が出る。
 暇を持て余していたセツナはちゃんと気付いてくれたようだ。

『ん? ……まだ12時間たってない、よね?』

 恐る恐る、手紙をつまみあげ、広げるセツナ。
 手紙には公用語で「対話を望むのであれば、砂時計の下の壁を押せ」と書いてある。
 セツナはそれで察してくれたようで、特に悩むそぶりも見せずに砂時計の下の壁を押した。

 ずず、と壁が奥にズレる。20センチほど奥へ移動すると、今度は勝手に横にスライドした。この砂時計付きの壁はゴーレム製のため自走も可能なのだ。セツナの行動を見てこちらで操作しただけの今回限りなギミックだ。
 壁の向こうは通路になっており、少し進むと階段がある。本来従業員用の通路だったが少しだけ見栄えを加工しておいた。

『進めってことだよね?』

 恐る恐る奥へ進む。
 そしてセツナが進んだ先には小部屋があり、ゴーレムを座らせて待機させている。以前作った通話機能付きメッセンジャーゴーレムだ。
 ダミーコアは万一壊されたらもったいないので置くのはやめておいた。

『ゴー、レム?』

 壁を背に座ってるゴーレムに、首をかしげるセツナ。俺はゴーレムを起動させ、ゴーレム越しに話しかける。

「よぉ。初めまして、でいいかな?」

 ボイスチェンジャーを通したようなダミ声に、セツナはビクンと反応する。

『ゴーレムが喋った!?』
「ハハハ、おかしなことを。対話しに来たんだろ? 喋れなきゃ話にならないじゃないか」
『あ、うん。……そう、だね?』

 疑問形でセツナは頷いた。騙し打ちも警戒してたがちゃんと対話の意思があるようだな。

『君は何者なの?』
「逆に確認したいが、何者だと思う?」
『…………ゴーレム?』
「それは見ての通りだけど、それでいいのか?」
『ええと。……ダンジョンのモンスター?』
「それもその通りだ。……それでいいんだな(・・・・・・・・)?」

 俺が念を押して言うと、セツナは少し考えて、搾り出すように声を出した。

『……ダンジョンコア、なの?』
「まぁそんな感じのだ」

 セツナはゴーレムのことをダンジョンコアだと判断してくれたようだ。コアについてはコアとボス一体型、というのが一般的にも周知されてる事実にあるためまだ正体の判断はできない。……ん? アレはダンジョンボスと言われてるんだっけか? ならやっぱりダンジョン関係者か? ダンジョンマスターと言われればより絞り込めたんだが……ええいまどろっこしい。俺は思い切ってこちらから聞くことにした。

「俺のことはウーマとでも呼んでくれ。で、お前は何者だ?」
『ボクはセツナなの。しがない冒険者だよー』
「一応聞いておこうか。他には?」
『またある時は、ってやつ? ワコークの諜報員なの!』
「それだけ、じゃないだろう?」
『そうなの、しかしてその実体は! とあるダンジョンコアの子供(・・)なの!』

 セツナは無駄にポーズを付けて言い放った。そうか、やはりダンジョン関係の――って、子……だと?
 ちょっとまて、ダンジョンコアって生殖可能なのか?
 俺はロクコを見る。意図を察したロクコは顔を赤くしてぺしぺし俺を叩いた。
 その反応、子供できるの? できないの? どっち?
 ……ハクさんなら知ってるかな。って、うん、聞けない。殺される。
 一応皇帝は初代からの血筋、とは言ってるけど、ハクさんの血筋、とは言ってないからわからないな。
 よし、ここで聞いてハッキリさせておこう。ダンジョンコアは子供が作れるのか?

「えーっと、それは比喩か何かか?」
『本当の意味で。血縁ってことなの』
「ちなみにそのコアの名前は?」
『……ええと、410番コア、って言う方が通じるんだっけ? ボクのパパだったの』

 知らない番号だ。てっきり4番コアとか絡んでるんじゃないかとも思ったけど、さすがにイッテツから聞いたばかりでそれはタイミングが良すぎるか。
 そういえばナユタとは父親が違うと言ってたけど、DP0がそれ由来とすれば納得だ。

「ロクコ、410番コアの事は何か知ってるか?」
「んー……ごめん、さっぱりよ」

 だよな。まぁそこまで有名なコアでもないという事だ。

 というわけで、さぐりさぐりだが、自己紹介が済んだ。こっちが気になっていたことは既に大体わかったようなものだが。
 っと、まだ目的を聞いていなかったな。こうして対話してるくらいだし、あまり乱暴な目的ではないと思うが――さて、ぶっちゃけて聞いてみようか。
(おかげさまで4巻の書籍化作業中です。年末進行嬉しい悲鳴。ただし本業も年末進行。ぎゃーす)
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