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教えてイッテツ先輩

 さすがにこれ以上は自分では調べようがない。

 かといってセツナに「DP0なんだけどなんで?」とか聞けるはずもない。

 ではどうするか?


「はァ、そんなヤツがきたのかァ」

「そうなんだよ。おかしな話だと思わないかイッテツ」


 A.先達に聞く、だ。

 というわけで借りができても簡単に返せそうなチョロマンダー(チョロいサラマンダー)こと、イッテツに聞くことにした。ご近所同士、困ったときはお互い様だ。今の所一方的にこっちが頼ってる感あるけど。


「別におかしかァねェな、ケーマ、テメェもDP0なんだろォ?」

「いやいや、そいつは冒険者だぞ?」

「あァ? ケーマもそうなんじゃねェのかァ? オメェもニンゲンの冒険者だろォ?」

「俺はダンジョンマスターだから別だろ」

「じゃあそいつもダンジョンマスターなんじゃねェの?」


 ふむ、貴重な意見だ。

 そういう可能性もあるが、他に確認しておきたいことがある。


「ダンジョンマスターやダンジョンコア以外でDPが0の奴って見たこと無いか? 長くやってるイッテツなら何か知ってるんじゃないかと思ったんだが」

「あー……スマン、そもそも1日あたりのDP量なんて見れるの初めて知ったぜェ? ウチは、マァここだけの話、ツィーア山の地脈から入ってくるのが大部分でなァ。侵入者のDPはそうそう気にしねェのよ。なんとなく強さは分かるけどなァ」


 なんと。よもやイッテツが俺より知らないとは想定外だった。


「まァ、そんならダンジョン関連のヤツって可能性が高ェな。かといって、犬獣人とウサギ獣人のハーフってェダンジョンコアは居なかったはずだしマスターかなんかじゃねェか……あっ」


 イッテツは何か思い当たることがあったのか、顎に前足を当ててぽりぽり掻く。


「なんだよ、気になるな、言えって」

「いやなに、前に5番様が言ってたんだがなァ、4番コアのことは知ってるかァ?」

「5番コアと6番コアはこの間見たが、4番コアは見たこと無いな」

「オメェ何やってんの? て、そうかァ。695番がひと悶着あったんだったなァ。こっちもなんか苗字もらったわ……勝ったかァ?」


 ダンジョンバトルに関係なかったダンジョンコアには、今回の事はどう伝わっているんだろうか。……どう答えるか少し考えたが、特に隠す必要もないので素直に答えることにした。


「勝ったよ」

「ククク、そうかァ。さすが俺に勝っただけのこたァあらァな。5番様の率いるクソガキどもはもとより、6番コアのとこの666番にも勝ったかァ。そっかそっかァ」


 にやりとトカゲ顔を嬉しそうにゆがめるイッテツ。

 あの三(すく)みトリオはイッテツにとったらクソガキなのか。


「ちなみに苗字は俺の発案だ」

「ケーマが付けたのかァ。んじゃ俺ァ名前とあわせて、イッテツ・ラビリスハートってェことになるなァ? カッコイイかァ?」


 てしてしと火のついたトカゲ尻尾が愉快そうに床を叩く。

 ……すまん、もっといかつい苗字にするべきだったかな。なんかイッテツのチョロマンダーっぷりとあわせてだいぶラブリーな感じだわ。


「そんなことより、4番コアがどうしたって?」

「あァ、4番コアはな……混沌(カオス)、と言われていたらしい」

混沌(カオス)……そりゃ、どうしてだ?」

「さァ? だが、ハーフってこたァ混ざりモンってことだろ? そいつが4番コアだったりしてなァ」

「イッテツは4番コアを見たことあるのか?」

「いや……見た事ァ無ェな。ダンジョンコアの集会にも来ねェからなァ。……少なくとも俺が産まれてから一度も来てねぇんじゃねェか? 4、500年くらいか?」


 イッテツ、100年単位で年齢曖昧なのか。サラマンダーにドラゴンのペアだともはや時間感覚も大雑把になるんだろうか。


「4番コアはランキングも1桁番台(シングルナンバー)にしては低い、というか他が大体1桁順位なのを考えれば低すぎる位置だったかァ。ガキ共が新しく入ってきたときにちらりと聞かれるくらいで、もう誰も気にしてねェから俺も忘れてたくらいだァ」

「なるほどな。ところで忘れてたついでにトイという単語に心当たりはあるか」

「トイ? サッパリ分からないな」


 こっちはだめか。まぁそれはさておき、俺はイッテツにちょいちょいと手招きした。

 ずいっとテーブルに身を乗り出すように耳(側頭部?)を寄せて来るイッテツ。

 尚、この部屋には俺達2人だけなのでまったく必要ないが、ノリがいい。


「……ちょっと実験したいから手伝ってくれないか?」

「いいぜェ? 俺も気になるからなァ。ただし、実験の結果は全部共有しろよォ?」

「当然だ。助かるよ、お隣さん」

「嘘ついたらァ――えェと、こういうときはアレだっけか、針千本ごと丸齧りっつーのかァ?」

「神の尖兵から伝わった約束破りの制裁なら『針千本飲ます』だな。剣や鉄を食えるサラマンダーやドラゴンならともかく、普通の人間ならまず死ぬ。つまり命を賭けるという意味だ」

「マジか。ニンゲンすげェな」

「だがこの制裁には抜け穴があってな。魚にハリセンボンという名前の――」


 小粋な神の尖兵トークで仲を深めたところで、簡単な実験をした。針千本飲むのも丸齧りも嫌だし結果を隠す意味もないので正直に結果を伝える。

 『火炎窟』への扉があるロクコが作ったフェニの箱庭エリアで実験をした結果、よそのダンジョンの通常のモンスターはごく少量のDPが入ってくることが分かった。


 そして、メニュー権限を持つモンスターの場合、これは0DPになった。

 おそらくハクさんの所のクロウェが0DPだったのもそういう事だろう。


「へェ。メニューが使えるようにしたらそうなるんだな。もういいぞ『燃える火』」


 イッテツがそう言うと、炎の精霊は「ガフゥン」と熱い火の息を吐いて戻っていった。

 ちなみに『燃える火』というのはドラゴン語で「燃える火」という意味の名前だそうな。そのまんま翻訳機能でそう聞こえるので、おそらくレドラが付けたのだろう。見た目が空飛ぶたき火って感じだ。……ドラゴン的には燃えない火もあるのか?


「アレはウチのダンジョンでも手軽に安くて結構便利な奴でなァ、溶岩浴ができれば飯代もかからねェしゴキゲンでなァ」

「そうなのか……ウチのダンジョンには暑苦しそうだな。フェニのところに置くにはよさそうだが」


 と、カタログを見ると『炎の精霊:40万DP』だった。高いよ。


「あァ? あー、うちだと20万くらいだがなァ。アレじゃね? 俺ァサラマンダーだしよォ」

「そういえばそうだったな」


 ……あるいは、ツィーア山の大部分を占拠してるのも関係してるかもな?

 どちらにせよ、コアのイッテツはサラマンダーでマスターのレドラはレッドドラゴン。さらにダンジョンの場所が火山であり、非常に火に特化している構成といえよう。それなら炎の精霊が安くなって当然というものだ。


「DP稼ぎのためにメニュー機能つけてないモンスター交換しない?」

「……それはダメなァ。さっきの炎の精霊でメニューないやつでも1日あたり20DPなんだろォ? 効率をいう気は無ェがさすがに窮屈すぎらァ」

「だな。こっちから送るモンスターも思いつかんし」


 まあ、これで1つ分かったことがある。

 モンスターを他のダンジョンに送り込む場合、バレやすい。仮にメニュー機能が使える場合は0DPになるのでなおさらだ。


 ……セツナ、その正体はどこかのダンジョンのモンスターで、メニュー機能の使える幹部、とかか?

 なんにせよコアやマスターじゃなくても結構簡単に0DPになる条件が分かった。

 一度、落とし穴とかでダミーコアのある所に呼び出してみるかな?


(25日に3巻発売しました。

 あ、そういえばイラスト担当のよう太さんの初画集も26日発売でした。通常版の表紙はロクコ(大)だそうです)

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