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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

情報は大事。これはガチ。

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初依頼達成?

 ニクをおいてこっそり外に出た俺は、昼寝できる場所を探して商業地区の方まで歩いて来ていた。
 工業地区からはさほど離れていないが、大通りに近い。屋台もある。……ああ、そういえば屋台で串焼肉があったな。ニクにお土産で買ってってやろうか?
 一応情報収集って言ったからには、多少言い訳できる程度は調べておいた方がいいだろう。そうだ、快適に昼寝ができそうな場所の情報とかいいかもしれない。
 しかし、色々な店があるようだ。パンも売ってる……うん、硬そうだな。山賊たちがメロンパンに目の色を変えてたのを思い出した。
 硬そうなパンは銅貨2枚で3個くらい買えるようだ。

 そういえばダンジョン内じゃないけどメニューは使える。DPの交換はできるんだろうか?
 できるなら依頼消化に使えるかも……あ、DPカタログ見れるけど、交換はできないみたいだ、残念。
 まぁ、実際の品物の値段とDPを比較してみるのも面白いかもしれないな。

「……っと、昼寝できる場所探してるんだった」

 本来の目的をほっといて情報収集してしまっていた。
 俺としたことが、異世界の町という男心をくすぐる素敵環境に浮かれすぎていたようだ。
 しかし、どうにも建物が多く、昼寝に向きそうな場所が見当たらない。
 こういう場合は自分で探すのをあきらめて、地元の人に聞いた方が早いな。
 俺はさっそく情報に詳しそうな店へ向かう。……ふむ、あれは八百屋か。八百屋となれば商品も手ごろな価格だろうし、「これ買うからちょっと話聞かせて作戦」には丁度よさそうだ。
 俺は特に手頃そうな、おそらくリンゴ……うん、リンゴだろこれ。俺が知ってるリンゴよりひと回り小さいが、メロンとかこの世界にもあるみたいだし、リンゴだってあるんだろう。

「おっちゃん、これいくら?」
「おう、そいつは2つで銅貨3枚だ」
「んじゃ、買おう。2つくれ……ああ、袋とかねぇな、ひとつここで食べてっていいかい?」
「あいよ。食べてくのは構わねぇが、少しよけてくれよ。さすがに店の正面に立たれたままじゃ商売の邪魔になるからな」

 俺は八百屋のおっちゃんに銅貨3枚を渡して、リンゴをもらい、少し横によけて、さっそくリンゴにかじりついた。
 ……すっぱ!

「うぉっ……これは……かなりすっぱいね」
「そうか? 今年のリンゴの出来も例年通りだと思うが?」
「ん、いや、ケチつけようってんじゃないんだ、こっちのリンゴを初めて食ったもんでな、驚いただけだ。睨まないでくれ。こっちじゃこれが普通なんだな」
「ああ、なんだそうかい。兄ちゃん旅人かい?」
「冒険者さ。今日この町に来たばっかりでね。……おぉ、すっぱいがその中に甘みがある、いい味だな」
「分かるかい兄ちゃん」

 かなりすっぱい、と言ったときにはギロっと睨まれたが、すぐに警戒を解いてくれた。好感触だ。
 実際すっぱいが、そういう品種だと思って食べるとなかなか悪くない。

「ああ、すっぱいリンゴは砂糖とよく合うって聞いたことがあるな、菓子作りに向いてそうだ」
「へぇ、物知りだね。でもここいらじゃ砂糖なんて貴重品だからな、このリンゴだけでも十分な甘味なのさ」

 へぇ、期せずしてなかなかいい情報を得ることができたな。……ダンジョンで砂糖でも作ってみるか? 砂糖にたかる蟻みたく冒険者がきたりして…… いや、冒険者なしにしても結構いいかもしれないな。脳内やることメモに書いとこう。

「そうなのか。そうだ、ついでに昼寝できるいい場所とか知ってたら教えてくれないか?」
「ハハハ! おもしれーこと聞く兄ちゃんだな! そうだなぁ、昼寝ってなったら、やっぱり中央区の公園がいいんじゃねぇか?」
「へえ、公園なんてあるんだ。そいつは昼寝によさそうだ」
「ああ、でも寝てる間に財布をスられたりしないように気を付けろよ? スられる金があるならウチの果物を買ってけってな!」
「そうだな、気を付けるとしよう。また近くによったらなんか買わせてもらうよ」
「まいど!」

 なかなかいい感じで情報収集できたな。
 ちなみにリンゴをDPで出そうとした場合、食糧カテゴリでリンゴ10個、5DPだ。
 もっとも、これで出てくるリンゴは多分俺が知ってる甘いリンゴなのであんまり比較にはならないだろうな。……いや、パン詰め合わせで固いパンが選べるんだから、リンゴも選べるかもしれないな。

 さて、中央の公園か……日当たりがちょうどいい木陰とかあるかな?
 俺はもうひとつのリンゴを齧りつつ、公園に向かった。……んー、すっぱいなコレ。

  *

 中央の公園では何事もなく昼寝ができた。
 念のため昼寝の邪魔をするやつが居たら撃退するように布の服ゴーレムには命令しておいたが、特に邪魔はされなかったらしい。しかしぐっすり寝てしまった、2時間程。

 ……やっべぇ、寝すぎた。ニク怒ってねぇかな。

 情報としては「ここらのリンゴはすっぱく、砂糖が貴重品」「中央の公園が昼寝に最適」という2種の情報が手に入った。まぁすぐにやれそうなことも思いついたし、面目も立つだろう。
 少し駆け足で便所掃除依頼のあった鍛冶屋へ急ぐ。
 外で待ってる様子もなかったので、こっそりとトイレに侵入した。

「ご主人様、いかがでしたか」
「おう、ちゃんと情報収集してきたぞ。そっちはどうだった?」
「いっかいだけ、掃除中って追い返しました。そのあとまたきましたが、こんどは1時間たってたので終わったといいました。サインをもらって、ご主人様を待ってました」

 あ、そういえばどこで待ってろって言ってなかったな……うん、ほんとごめん。

「別にトイレじゃなくて表で待ってて良かったんだぞ?」
「す、すみません。おしおきですか?」

 ニクは、申し訳なさそうにうつむいてもじもじしていた。
 いや、俺が言ってなかったのが悪いんだしお仕置きなんてしないよ?
 俺は、ニクの頭をできるだけ優しく撫でた。柔らかい髪が心地よい触り心地だ。犬耳もやわらかい。

「あぅ……」

 ニクはきょとん、としていたが、撫で続けていたらしばらくして恥ずかしそうにはにかんだ。
 さらに撫でてたら感極まったのか、遠慮しがちに右腕に抱き付いてきた。何この子可愛いんだけど。

 しっかりニクをねぎらったところでニクを連れてトイレを出た。

「……終わったのか?」

 トイレから出てきたところで依頼人に話しかけられた。

「ん? ええ。終わりましたよ」
「そうか……嬢ちゃん、こいつが死んだら俺のとこに来な、悪いようにはしないぞ」
「いやです」

 いきなり真剣な顔して何言ってんだこのオッサン、とおもったけど、ニクは即座に断った。
 ……なんか俺のこと睨んでるんだけど。
 よっぽど気に入られたんだろうか、ニク。俺が昼寝している間に何があった。

「……そうか。だが、冒険者だと何があるかわからないからな。覚えておいてくれ」
「ご主人様、いきましょう」
「お、おう」

 一方、ニクはもはや完全に無視である。本当に何があった。
 だが、実際俺はいつ何があるかわからないダンジョンマスターだ。死ぬ気はないが、死ぬ可能性は常にある。俺にできるのはその可能性を限りなく0に近づけるだけだ。
 まぁ、少しくらい死んだあとの根回しというのも必要かもしれない。
 俺は、依頼人のオッサンに向かって、ひとつ頼むことにした。

「……もし俺が死んでこいつが路頭に迷ってたら、気が向いたらでいいんで、助けてやってくれませんか?」
「フン、いわれんでも嬢ちゃんなら助けてやるさ……お前なんぞにはもったいない良い子だ」
「なら頼みます。まぁ、そう簡単にくたばる気はないですが」

 職人のオッサンは、驚いた顔をして、少し考えた後、頷いた。思った通り、悪いやつじゃなさそうだ。
 オッサンにも言ったけど、簡単にくたばる気はさらさらない。
 会ったばかり、それも依頼者に何を言ってるんだ、って感じだけど、ほんの少しだけ安心した。

「……わたし、捨てられる、のですか……?」

 ニクはそんな会話を聞いて、あたかも車で初めて遠くまでお出かけしたペットみたくなっていた。
 とりあえず「何言ってんだ、捨てるわけないだろ」と頭をくしゃくしゃに撫でてやったら元気になったのでよしとする。




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