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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

正体不明の姉妹

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さぐり

 数日経った。
 姉妹の所に手紙の鳥でも来るんじゃないかと思って警戒してはいたのだが、どうやらギルド経由で普通に手紙が届いたらしい。
 そして、手紙にはこうあった。

『村長さんにこの手紙を見せるように』

 ……隠す気ないのかぁ。
 というわけで、今まさにナユタが俺に手紙を持ってきていた。俺はニクをそばに控えさせ、応接間でテーブルを挟んで面会している。セツナは勤務中で居ない。

「村長さん、私の依頼主から村長さんに手紙が届いてるわ」
「ん? ナユタの依頼主って……誰だ? ロクコじゃないんだよな」
「ええ、長期依頼の方ね。ワコークのダイミョーの……ああ、ダイミョーっていうのは、帝国でいう領主みたいなものよ」

 ワコーク。ここでワコーク出てくるのかぁ。

「ナユタたちの出身はワコークなのか?」
「私? いいえ、名前は確かにワコーク風だけど別の所ね。ただの雇われなだけよ」
「ふうん。……で、そのワコークのダイミョーが俺に何の用なんだ?」
「スカウトじゃないかしら。強いって報告したし」

 あ、そこも隠さないんだ。案外オープンなのか? 直接聞いたら色々教えてくれるのかもしれない。

「……あ、そうそう、その前にちょっとこれを見てくれる? このダンジョンで拾ったんだけど、何だかわからなくて」

 ちゃき、と、ナユタは突然俺に『銃』を突きつけた。リボルバー型の拳銃だ。
 銃口を向けられて、分からないと言いつつもトリガーに指もかけられている。俺はびくりと体を固くした。
 ……俺の微妙な反応にさらにニクが反応し、立ちはだかるように俺の前に立った。やだこの子やっぱりカッコイイ……

「あら、反応した(・・・・)わね? やはり――」
「軽く殺気を向けられたらそうなるさ。そっちこそ、実は使い方を心得てるだろう? 手慣れている感じがあるぞ」
「む、そう言われると……」

 ナユタはトリガーから指を放し、銃口を下に向けた。
 ……ちなみに俺は(そんなもの)をダンジョンの宝に入れた覚えはない。そもそもDPカタログにもないし作ってもいない。これは間違いなくナユタの持ち込みだ。
 よく見るとこの拳銃、なんかおかしいか? リボルバーで、しかしハンマーが無い。しかもリボルバーのシリンダー部分は銅……あれ、弾を装填するはずの穴が開いてない? フタか?
 いかんせん実物の銃なんて見たこと無いしガンマニアでもない俺にはそういう種類の銃なんだと言われても真偽は分からないが。

「で、雇用主に殺気を向けるとはどういうことか説明してもらおうかな?」
「……細かいこと気にしてるとハゲるわよ。ごめんなさいクロイヌ先輩ナイフ首に当てないでくださいごめんなさい村長さんごめんなさい生意気しましたはい」

 うん、一瞬でニクが距離を詰めて首にナイフ押し当ててたよ。テーブルに乗ってるのはまぁちょっとはしたないがいいとしよう。ナユタは両手を上げてのホールドアップ状態だった。拳銃も床に落としてる。

「あ、うん。ハゲねぇし。まだ若いし。まぁいい……クロ、放してやれ。とりあえずダイミョーとやらからの手紙を読ませてもらおうか」

 俺は手紙を開く。
 ……一部おかしいけど普通に読めるが、これ、日本語で書かれてないか? この世界の文字は一応読んだうえで日本語が頭に入ってくるんだが、これはどうにも日本語にしか読めない。しいて言えば少々達筆で、「し」が「J」になってたり、妙にひらがなが目立つくらいか。
 反応を見るために狙ってやっているのか、あるいは素なのか。……分からん。

 ちなみに手紙の本文は『拝啓、ごれえぬ村村長様。緑のあざやかな季節、いかがお過ごしでしょうか。よろしければ和国にいらっしゃいませんか? なゆたが失礼をしたと思いますが、私の指示によるものです、申しわけありません。もしあなたが日本人であればぜひお話をお聞きしたいです。その時は一切の交通費、宿泊費をこちら持ちで歓迎します。おさしみやおしょうゆ、おみそ汁があります』とあった。

 しかし日本人がどうのとか、もうね、なんだろうね。
 これ絶対めんどくさいやつだ。超めんどくさい。

 よし決めた。見なかったことにしよう!

 とりあえずは読めないフリだ。
 俺は、手紙を広げたまま、横にしたり、ひっくり返したり、目を細めて睨んだり、日に透かしてみたりしてからニクに渡した。

「ふむ、クロ。これ読めるか?」
「あら。村長さんは文字が読めないの?」
「……読み書きは苦手なんだ。で、どうだクロ」
「あの、ご主人様。こちら、わたしには読めない文字で書かれているようです」

 ニクは教育の結果こちらで一般的に使われている文字は読めるようになっている。つまり、これはやっぱり日本語で書かれているんだろうな。ワコーク、謎が多いぞ。
 そういえばワタルは結局ワコークに行ったんだろうか? 今度話を聞いてみよう。

「そうか。ならこのあたりの文字じゃないってことか、俺が読めなかったのも当然だったな」

 俺は自分が読めなかったのはバカだったからじゃないぞアピールをした。……ちょっとわざとらしすぎただろうか。

「で、なんて書かれてるんだ? ナユタは読めるんだろう?」
「ええ。……ふむふむ、やはりスカウトのようね。雇用条件が書かれているわ、年収金貨1千枚らしいわよ? まるでAランク冒険者の収入ね」

 年収金貨1千枚なんてどこにも書いてないぞ? 事前に取り決めでもあったんだろうか。おっと、気づかない。俺は何も見ていなかった。読めなかった。

「生憎だが俺はこの村の村長だからな、責任もある。断らせてもらうよ。……金にも困ってないし、何より胡散(うさん)臭い」
「あら残念、同僚になったら面白くなると思ったのに。ああ、クロイヌ先輩にも誘いが来てるわよ?」
「ご主人様がお断りするのであれば、わたしもお断りします」
「よね。分かってたわ。じゃあこっちは私の方で断られたって返信しておくから」

 ナユタはひらひらと手を振りつつ、軽く答えた。
 見なかったことにするので正解のようだ。よっしゃ。

「それはそうと、そのアイテムを良く見せてくれないか? このダンジョンから出てきたと言っていたが俺も初めて見たよ。村長としてチェックしておきたいし、できれば買い取りたいところだが」

 俺は銃に対して探りを入れる。
 買い取り、という言葉でナユタはぴくんと尻尾を揺らした。

「あー、ごめんなさい。本当はこれ、私の手作りなのよ。だからダンジョンから出てきたっていうのは嘘ね」
「へぇ手作りか。武器かと思ったが、もしかして魔道具なのか?」
「……お察しの通り、魔道具の武器よ。勇者の世界の武器を再現しようとしているものよ。威力は、今のところ……ま、ほぼオモチャね」

 と言って、壁に向かって銃を撃つ。ぱすん、と気の抜けたような音がして、カツンとまるで軽く投げた石が壁に当たったような音がした。

 ……見に行くと、まるで吹き矢の矢のような、円錐の弾が転がっていた。弾丸ってこんな形じゃないよな? もっと流線形だったはずだ。しかもこれ、触った感じ素材は鉄のようだ。鉛じゃないんだ、へぇ。

「本物は爆発で弾を飛ばす、という原理らしいんだけどね。魔道具で再現しようとしてもなかなか狙い通りに飛ばないし、木の壁にも刺さらない程度の威力しかないの。目に入ったら危ないかなってくらいね。……正直、弾を単純に投げた方が威力高いの。はぁ……やっぱりやり方見直すべきかしら」

 どうやら完全にナユタの試行錯誤による品らしい。
 銃や火薬についての知識はあんまり伝えられていないのかもな。見た目は驚いたけど。

「……勇者様の世界の魔道具を再現か。それが本来なら武器になるほどの威力が出るってことは、勇者様の世界はさぞ魔法が発達してるんだろうな」
「あら? 逆よ。あちらの世界には魔法が一切無いらしいの」
「そうなのか? じゃあどうやって爆発させてるんだよ」
「そこの資料が無いのよ。見た目だけはあったけど……ううむ、勇者に話を聞いてみたいのだけれど、村長さん知り合いに勇者とか居ない?」
「ああ、居るぞ」

 俺がそう言うと、ナユタはガタッとテーブルに身を乗り出した。

「……その、紹介してくれないかしら。紹介料は支払うから」
「今度来たら紹介してやろう」

 そろそろ勇者ワタルが借金の支払いにやってくる頃だ。
 この間のダンジョンバトルに合わせてハクさんが無茶な仕事を押し付けたとかで、前に来たのはダンジョンバトルの前だった。尚、来てない分は前払いで払ってもらってる。

 どうせ受付やウェイトレスやってたら会うんだし、紹介料は別にいらないけどな。

(見なかったことにしよう:超法規的措置ならぬ超勇者的措置。
 あ、そいえば3巻表紙ができてました。詳しくは活動報告にて)
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