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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

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閑話:奇妙な冒険者志願者(兵士視点)

 私は門番だ。
 自分でいうのもなんだがベテランである。
 自慢だが、怪しいやつは見ればわかる。

 そんな私が門の見張りをしていたところ、二人組の旅人がやってきた。
 それは黒髪の男と、同じく黒髪の小さな女の子。
 このあたりでは黒髪というのは珍しいな。……兄妹だろうか?
 ……しかし、女の子に荷物を持たせて自分は手ぶらの男……いや、剣を持っているのか?
 はた目から見ると兄妹なのかと思ったが、よく見ると女の子は犬型の獣人で、奴隷のようだ。なるほど、だから荷物持ちなのだな。
 しかしあのように小さな女の子に荷物を運ばせるとは、いくら奴隷とはいえ気が引けそうなものだが。
 それとも獣人差別主義者なのであろうか? いや、それにしては女の子の身なりがまともだ。
 ちぐはぐな印象を与えるその二人組。なんにせよ、仕事だ。

「止まれ! ツィーアに何の用か!」

 私が叫ぶと、おとなしく止まる二人。

「ああ、すみません。田舎者なもんで。中に入るには何かいるんですかね」

 どうやら敵対したり乱暴に突破したりする意思はないようだ。
 私はこっそりと嘘を感知する魔道具を発動させる。これは門番が持つもので、門での問答において虚偽がないかを調べるものだ。
 私のようなベテラン門番ともなればこのようなものなくとも怪しい輩は分かるのだが、今は貴族のお偉いさんが中央から来ているとかで、間違いの無いよう必ず使用すること、と言われていた。規則ゆえ仕方ない。

「……質問に答えよ。ツィーアに何の用か?」
「えー、冒険者になろうかと思いまして住んでたところを飛び出してきたんですよ」

 なるほど、嘘ではないようだ。冒険者志願というのは成功譚によく聞く話で、一攫千金を狙って仕事のない若者がなるものだ。まぁ、実際はそれほど甘くはないが。

「ふむ。……そちらは奴隷か。奴隷はお前のものか?」
「そうです、たまたま拾いました」

 これも嘘ではないようだ。主人の居ない奴隷は所持することが認められているから問題ない。
 このところ山賊が跋扈していたようだからな、その影響で野良奴隷がいたのだろう。
 身なりがいいのは……この男が奴隷として扱っていないからだろうか?

「何故この時期に来たのだ?」
「ほら、この間山賊の討伐で騎士様が来てたみたいだから道中安全になってるんじゃないかとおもって。実際、ここに来るまで何もありませんでしたよ。平和っていいですね……あれ、もしかして今の時期なにか大変な時期だったんですか? すみません田舎者なもんでそういうの知らなくて」

 ふむ、嘘ではないな。こちらの事情も詳しくは知らないようだ。
 それぞれ事情もあるものだから多少は嘘が含まれていても構わないが、まったく嘘が無いのはよほどの正直者なのだろう。

 「ああ、そうか。すまないな。……ちょっと今、お偉いさんが来てるからな。さっきお前のいってた騎士様の関係だよ」
「そうだったんですか、お仕事大変ですね。では通っても? それとも何か要りますか」

 おっと、門番の仕事をしないとな。
 私は業務的な対応をする。金の話をすると財布の中身を気にしているようだった。
 すかさず案内業務の話をする。
 身分証をとれるまで格安で案内する仕事だ。

 先ほど気が付いたが、この獣人の奴隷はよく見られる奴隷とは違い、嬉々として男に付き従っているようだ。
 荷物についても自分から持とうとしているようだ。よほど扱いが良いのだろう。
 男に頭を撫でられてうれしそうだ。……ふむ、少しわかってきたぞ。

 とりあえず、悪い人間ではなさそうだな。と、私は門の通行を許可し、自ら冒険者ギルドまで案内することにした。

 道中、主従そろって串焼きの屋台に目を引かれていたようで、すこし微笑ましく感じたものだ。
 ツィーアで冒険者登録するというのであれば、この町を拠点として冒険者をするということだ。であれば、また会うこともあるだろう。その時は串焼きくらい奢ってやってもいいかもしれないな。

 冒険者ギルドにつき、さっそくカウンターへ向かう。
 字が書けなければ代筆も請け負う予定だったが、問題ないといって奴隷を呼んだ。

 で、驚いたことにこの奴隷は「ニク」と呼ばれていた。

 それは、その……ニク、とは、ええと、私の記憶が確かなら、性奴隷の呼称だ。どちらかといえば蔑称に近い表現だ。
 つまりこの男は、こんな幼子を、その……そういう趣味なのか。ああ、だから身なりが良かったのだな。ようやく合点がいった。
 ……まぁ、奴隷をどう使おうが私には関係ない。
 しかし、まさかニクという名前で冒険者登録までさせるとは……これでこの獣人少女の名前は、たとえ奴隷から解放されたとしてもニクと呼ばれることだろう。
 登録名を変えることもできるが、基本的には死ぬまで換えないものだ。登録時以上の金もかかるしな。
 しかし手持ちの少ない金をつかってわざわざ登録を……なんという外道だ。門の中に入れたのは早まったかもしれん。
 一見可愛がっているようだが、果たしてどのような憎悪が込められているというのか。

 ……だが奴隷の方が妙に嬉しそうだし、私が口をはさむ必要はないのかもしれない。
 ギルドの受付嬢は「こんな可愛い子を……くっ、私が保護しなきゃ」とか呟いていたが……

 うん、そうだ、私は関係ない。ギルドカードを確認できたので、あとは無関係だとも!
 ふむふむ、ケーマというのだな、よーしよしこれ以上私は無関係だ。
 ということで、さっさと門に戻ることにした。

 さて、仕事しなければなー。
 私はベテラン門番だからな! はっはっは!
ニクの名前について、衝撃の事実がこっそり発覚。
そもそも山賊がまともな名前で呼ぶわけがなかった。

05/21 ニクの名前について、意味の表現を多少マイルドにしました。
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