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第三次ダンジョンバトル:戦い(10)


 #Side魔王チーム


 帝王チームのダンジョンを進む666番コア。

 切り札である【クリムゾンロード】を使ってしまったのは痛かったが、後悔はしていない。さすがに鉄球に対してこの身を晒すのは厳しい所がある。

 と、そこに通信が入る。


『アイディ、ボス部屋が突破された』

「そう。でも、ダミーコアは見つけられないでしょうね」

『ああ。見つけられないだろうな』


 666番コアのマスターは、自信に満ちた声で答えた。ダミーコアの隠し場所は絶対に見つからないという自信がある。そんな声だ。


「それで、私たちのダンジョンの方は?」

『予定通り、機能停止してるよ。なにせ――コアが、ここにあるからな』


 黒鎧の中。そここそが、ダミーコアの隠し場所だった。

 バスケットボール大の大きさのダミーコアだが、リビングアーマーである黒鎧の腹に綺麗に収まっていた。


 敵のダンジョンは、最高戦力で攻めるべきだ。

 護衛対象であるダミーコアは、最高戦力が守るべきだ。

 この2つを矛盾なく両立させるため、666番コアとそのマスターが考えた策。

 それこそが『最高戦力にダミーコアを搭載する』という暴挙だった。


 これは前々からダンジョンバトルに向けて考えていた策でもあった。

 このために今回のルールを『ダミーコアへのタッチ』ではなく『ダミーコアの破壊』にしてもらったのだ。万一鎧の中に敵の手が入ってきても、タッチだけでは負けにならないように。いい機会だった。


 ダンジョン自体は、5万DP程度で適当に5階層を作った。トラップの殆どはダンジョンが停止しても動作する独立したものを用意し、モンスターは殆どが【サモンスケルトン】によるもの。そして最後のボス部屋は、飾りだ。

 途中、水攻めをせき止めるために1回ボス部屋を作り、骨の魚をDPで出すことにはなったが――まぁ、時間稼ぎとしては十分だった。

 そして残りのDPは、666番コア自身の強化のために、ほぼすべて注ぎ込んでいる。


「ふふふ、まさか695番コアも、ダミーコアがここにあるとは思わないでしょう」

『ダンジョンを外まで調べに行ってるみたいだ。……終わるまでダンジョンを這い回って居てもらおう』


 そして更に奥へと進む666番コア。

 歩みを進める先に部屋があった。


「マスター、開けなさい」

『うん』


 マスターの操るスケルトンに扉を開けさせる。すると、扉からにゅるんと、半透明の触手が伸びてきてスケルトンを捕まえた。


『うわっ?! く、このっ』


 【サモンスケルトン】で召喚された素手、せいぜい骨の棍棒といった装備では、その触手――テンタクルスライムには、一切のダメージを与えられない。


『ちっ。別のスケルトンに切り替える』

「マスター。いくら【サモンスケルトン】でスケルトンが出し放題と言っても、ダンジョン外では私の魔力もすぐ尽きてしまうわよ? 丁寧に戦って頂戴(ちょうだい)

『今のは必要経費だろう』


 扉がある以上、そこに何か仕掛けか待ち伏せがあることは分かっていた。そのためにスケルトンに開けさせたのだから、必要経費というのは間違っていない。

 が、それはそれ。666番コアはくすりと笑う。


「おしおき、追加よ。楽しみにしていなさい」

『……』

「あら。返事が無いわね」

『はぁ……わかった』

「それでいいのよ、マスター。貴方は所詮(しょせん)、私の傀儡(かいらい)なのだから」


 炎を(まと)う魔剣を振り、テンタクルスライムの触手を焼く。

 じゅわ、と水が蒸発するような音がして、テンタクルスライムは触手をひっこめる。……スライムの弱点は、火や魔法攻撃。この魔剣はまさに弱点そのものだった。


「それにしても珍しいスライムを連れてきたわね。ボスかしら? どう思う(じじ)様」

『テンタクルスライムか。物理無効で多少厄介ではあるが……弱点は、言うまでも無いのう。ボスというのもあり得るわい。しかしこいつ、かなりDPがかかるものと思ったが……持ち込みか?』

「あら、持ち込みだなんて。695番たら――そんなに私とのダンジョンバトルが楽しみだったのかしら?」


 部屋の中に入ると――そこには、ゴーレムにガーゴイルを始めとした、軍勢ともいえる戦力が集まっていた。ダンジョンの方にも送られているサハギンや、先ほど見たタコ、さらに空飛ぶイカ、とよく分からないのも居る。先ほどのテンタクルスライムも、だ。

 ……数が多いな、と666番コアは素直に思った。


「素敵な歓迎ね。このパーティー、ダンスパートナーには困らなそうだわ」

『切って捨てるほどいる、な』

「ふふ、(たぎ)るわ……」


 666番コアは赤く燃える魔剣を構え、モンスターの群れに突っ込んだ。



 #Sideケーマ


「ボス部屋の扉はダミー、か」


 イチカの報告を受ける。


「せや。結局ボス部屋の扉は壊して開けたんやけども、土の壁があるだけの、ただの扉やったで」

「そうか、『工事中』の張り紙は無かったか」

「『工事中』の張り紙? なんで?」

「いや、なんでもない。こっちの話。……で、先へ進む通路が見つからない、と」

「うん。見落としがあったんやと思う、もう一度1階から探し直すわ」

「いや、いい」


 俺はイチカを止めた。ニクに念のためダンジョンの入り口から外も探させたが、ダンジョンの場所が魔王の支配する魔国領のどこかであるということくらいしかわからなかった。

 ……どうしたものか、と、少しだけ考えたが、結論はすぐに出た。


「まぁいいか」

「いいって……どうするのよ、666番コアのダンジョンが攻略できなきゃ勝てないじゃないの」

「なにいってんだロクコ」


 俺はぽむ、とロクコの肩に手を置いて言う。


「敵のダンジョンコアならウチのダンジョンに入ってきてるんだろ?」

「……あっ」


 そう、ダミーコアがどこにあろうと、例えば、どこかにダミーコアを隠して持ち込んできたとかしたとしても、だ。

 今侵入している666番コアを倒せば、結果的に勝利になることには違いないのだ。

 戦闘不能にすれば敵の侵攻戦力は無くなるし、あるいはうっかり破壊すればその時点で敵がいなくなる(・・・・・)ので確実に勝利。


 うん。


 666番コアは、よほどの自信家か、突き抜けたバカかだな。

 後者だと嬉しい。




(やっと執筆環境が戻って更新できた。でもあとで直すかも)

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― 新着の感想 ―
[一言] ダンジョンが死んでるかの判断って壁を切るとかで出来ますよね? 見かけ通りの強度だったり、再生しなかったり。 そもそも構造をあまり語っていませんが、ダンジョンの材料は水圧に耐えられるんでしょう…
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