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第三次ダンジョンバトル:開戦

 気が付いたらニクを抱き枕に寝ていたわけだ。お酒って怖い。

 ……こんなこともあろうかと、ゴーレム目覚まし時計用意しておいてよかった。頭に【ヒーリング】をかける。あー、楽になってきた。

 しかし早めにつぶれて良かった。じゃなきゃアルコール中毒で死ぬまで飲まされてたかもしれん。ハクさんも途中から酔って「おビール様! おビール様を捧げるのです!」とか言って水晶から削り出したとかいうジョッキで飲んでたし。


 とりあえず軽く寝癖を手櫛でおさえつけて、ニクのほっぺをぷにぷにつつく。

 ニクは「んぅ……」と喉がつっかえたような声を漏らしてすぐ起きた。

 俺はあくびをしつつ、同じくまだ眠そうに目をこしこしとこするニクをつれて部屋から出る。

 集合場所の会議室に向かう途中、ロクコと合流した。


「おはようケーマ。ちゃんと起きたのね」

「おはようロクコ。目覚ましかけといて正解だったよ……はぁ、異世界まで来て目覚まし時計に起こされるとか、これっきりにしたいところだ。……つーか元気そうだなお前は」

「え? だって昨日あんなに英気を養ったじゃないの、宴会で」


 そういうロクコの肌はツヤツヤだった。

 ああいう飲み会でちゃんと英気を養えるのは一種の才能なんじゃないかな。俺はむしろ疲れたよ。


 会議室につくと、既にイチカが待っていた。イチカが一番乗りだったようだ。

 イチカの肌もツヤツヤで、十分英気を養えたことがうかがえる……はっ、そういえばニクも心なしか毛艶がいい。もしかして俺だけ変なのか?!


「イチカは案外マメだよな。集合時間に余裕を持ってくるし」

「依頼の期限とか、集合時間を守るのが優秀な冒険者なんやで。これくらいは常識やろ」

「そうか……冒険者やめようかなぁ。そもそも町に入る身分作るのが目的なだけだったし」

「……裏道とはいえBランクにまでなったんやし、そこは頑張ろ? な?」


 最後にハクさんがやってきた。集合時間ピッタリだ。

 ……ハクさんの足取りは軽く、今からのダンジョンバトルをとても楽しみにしている感じだ。俺達が勝っても負けてもハクさんはロクコとの距離が物理的に近づくわけだしな。

 一応これ、ハクさんたち上位コアの代理戦争みたいなもんだと思ったんだけど。


「あらやだ、ケーマさんは負ける気ですか?」

「そりゃ勝つ気ですけど」

「なら私が浮かれていても、何の問題も無いでしょう。今日のダンジョンバトル、私達上位コア(せんぱい)は後ろでアドバイスを出すだけです。しっかりなさいね」

「ええ、ま、いっちょやってやりますよ」

「ロクコちゃん、負けても優しく指導してあげますからね」

「そのときはよろしくお願いします、けど、ケーマは負けませんからっ」


 一度『欲望の洞窟』の闘技場に戻り、そこから『白の浜辺』のコアルームに直通のゲートを通る。コアルームについた俺達は、そのまま安置してあるダミーコア内のマスタールームに入った。

 コアについた俺は、まずは軽く【サモンガーゴイル】で十数体のガーゴイルを出し、ダンジョンバトル用ゲートの予定地に向かわせる。サモン系は術者が気絶すると帰還するってのが欠点だよ。こうしてバトル直前にわざわざ出さなきゃならないからな。

 その他今日活躍する予定のギミックを確認し、そうした仕上げを片付けたところで、いよいよダンジョンバトルの時間がやってきた。


『さーてみんな、時間だ。ダンジョンバトルの準備はできたかい?』


 マスタールームで待機してると、突然知らない声が響いてきた。どこか軽薄そうな、しかしそれでいて逆らうことができない威厳があるような、何を考えているのか分からない声。壁一面がモニターとなり、紺色の法衣に身を包んだ浅黒い肌の黒髪金眼の男が映る。男の顔の半分、目元は仮面で隠されていた。

 ……これが『父』か。思っていたより若い見た目だ。


『魔王チーム、準備できておりますぞ父上』

『龍王チーム、問題ありませぬ、父よ』

「帝王チーム。準備万端ですわ、お父様」


 3チームの上位コアが(うやうや)しく答えた。……ハクさんも頭を下げるあたり、やっぱり偉いんだなぁ、とどうでも良いことを考える。


『よーし、それじゃあはじめ――る前に。下位コア(こうはい)組は何か言いたいことあるかい?』

『666番ですが――695番、これは私とあなたの決闘よ』

『ちょっと! あ、650番よ。言っとくけど、私達が勝たせてもらうからね。アンタらは合わせても2コア、私達は3コアよ3コア! 私達が勝つに決まってるでしょ!』

「……695番だけど、私は別に言う事ないわ。さっさと始めましょ、私が勝つから」


 言うなぁ、ロクコ。かなり強気じゃないか。


『はっはっは、みんなやる気十分だね。じゃあ、始めるよ。……5秒前ー、4、3、2、1……3チーム戦ダンジョンバトル、スタート!』


 『父』の開始宣言と共に、あらかじめ指定した部屋に、ぶぉんっ! とゲートが2つ開いた。

 部屋にはゴーレムをたっぷり用意してある。背に箱を背負っているゴーレムもいる。箱の中身は、索敵要員だ。


 直後、早速、片方のゲートからドバドバと勢いよく腕位の太さがある蛇があふれ出てきた。どうやらこっちが龍王チームのゲートのようだな。

 もう片方からはカラカラカタカタと動く人骨……スケルトンがやってくる。魔王チームは、こういうので来たか。

 出てきた蛇とスケルトンをゴーレム隊に対処させつつ、俺はニクに指示を飛ばした。


「じゃ、早速いくか。水没ギミック発動だ」

「わかりました。第一水門、開門します」


 ニクがモニターをぽちっと操作する。


 ドドドドドドドド……ドバァア!


 ダンジョンのフロアと海をつなぐ水門。そこから大量の海水が入り込み、一番下(・・・)の、ゲートの部屋があるフロアが、海水に蹂躙されていく。

 今開けたのは、最下位層のフロアと海をつなぐ水門だ。


 実は今回のダンジョンバトルにあたり、水没ギミックを十全に活用するためにダンジョンの形を少し考えたものにした。

 塔型、といえば分かるだろうか。あれは入口が地面の階にあって、そこから上に攻略していく形だ。そこで、もし上の階から水があふれて流れてきたらどうなるだろうか。


 そりゃ、下へ向かって流されるに決まってる。水は上から下へ流れるモンだからな。


 これを地面を掘るダンジョンで再現したのだ。入口を最下層、コアを第一層に置くという、通常とは逆の配置で。……もっとも、この第一層に入るには一度最下層の入り口に行かなければ行けないので、最奥と言う意味では通常のダンジョンと同じだけど。


「まったく、ケーマさんの発想には驚かされますね」

「はっはっは、これなら単に水没させるより水による押し戻しで妨害ができますからね」


 水没してるだけでは、相手もゴーレムのような息の必要が無いモンスターだと効果が無い。だが、押し寄せる鉄砲水であれば十分な足止め、いや、攻撃にもなる。

 今モニターで映っている勢いで水が押し寄せて来たら、正直潰れる自信があるぞ俺。


 マップでみると既に最下層の9割が水没した。道の作りを工夫したので、最終的にゲートのある部屋に勢いをたっぷり乗せた海水が押し寄せる。排水溝の行きつく先がこのゲート部屋だと思ってくれればいいだろう。


 俺は、タイミングを見計らってゲートのある部屋の扉を開けた。

 そしてゲートのある部屋に海水が流れ込み、荒れ狂う水流は津波の如く、戦闘中だった蛇とスケルトンとゴーレムを、まとめて敵のゲートへ押し流した。




(今月、2巻が発売されるそうですよ?)

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