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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

第三次ダンジョンバトルの準備ターン

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ダンジョンバトル前日

 ダンジョンバトル前日。
 ついにダンジョンが完成し、いよいよ明日がダンジョンバトルの日だ。
 というわけで、今日はダンジョンバトル前の壮行会を兼ねた会食……要するに景気付けの宴会ということになった。

「それでは、明日からのダンジョンバトルの勝利を祈願して――カンパーイ!」

 かんぱーい、と、ミーシャの音頭にあわせて皆が杯を掲げた。
 少人数ながらバイキング形式での立食パーティーだ。料理人も給仕もハクさんの支配下にある人型モンスターなので気兼ねなくダンジョンの話ができる。

 俺達『欲望の洞窟』からは、俺、ロクコ、ニク、イチカ。
 ハクさん達『白の迷宮』からは、ハクさん、クロウェさん、ミーシャ、ドルチェさん、アメリアさん、サリーさんが参加していた。

 サリーさんは今日初めて会ったが、今回唯一ダンジョンバトルの準備に参加しなかったハクさんのパーティーメンバーだ。
 リビングアーマーのお姉さんで、今は食事のため人化してるから中身がある。
 普段は第一騎士団の団長を務めている強者だ。……つーかこの国、ばっちりハクさんの手の中だよな、当然だけど。で、第一会話はこんな感じ。

「今度一試合どうですか? ああ、もちろん真剣で」
「丁重にお断りします。俺は前には出ないし、避けられる戦いは避ける主義なのですよ」
「では今度一試合どうですか? 避けられない状況にしておきますから」
「それもはや脅迫ですよね?」

 その後なんとか俺は「いかに自分が弱いか」を語ってデートのお誘いをお断りした。代わりにニクとイチカが後日模擬戦することになったが、俺は悪くない。

 俺は乾杯で空けた自分のコップにリンゴジュースを注いだ。
 ……え? なんで酒じゃないのかって?
 明日の朝からダンジョンバトルだぞ? 二日酔いで挑めるかっての。ウチの面子は酒禁止だぞ。
 というかなんで前日にやるの? 妨害工作なの? ハクさん実は俺が負ければいいと思ってるよね絶対。ロクコへの『指導権』が手に入ってウハウハだもんね。

 ローストチキンをはぐはぐ食べていると、ロクコとハクさんがやってきた。

「ねぇケーマ、これ美味しいわよ」
「お? なんかチャーハンっぽいな。うん、美味い」
「ふふ。地方ならいざ知らず、ここは帝都の城ですからね。最高級のあらゆる食材や、それを万全に調理できる料理人がいます。ここの食事が美味いのは当然ですよ。……そうそう、料理人に食の神と名高い勇者イシダカの薫陶(くんとう)を受けた直系の弟子がいるのですが、先日頂いた『コメ』を用いて秘伝のレシピがいくつか再現できた、と喜んでいました。その『チャーハン』は再現された1つですね」

 イシダカ、って確かイチカが自分の名前を付けるときに元にした名前だっけ?
 食の神やら海の神だとか言ってたけど、勇者だったのか。
 ちなみに海の神と呼ばれている由来は、魚の調理法やよりよい塩の製法を授け、船乗りの奇病をレモンで治したという伝説があるからだそうな。ああ、海の神ってそういう。
 きっと料理チートな勇者様だったんだろうな。

 そんなことを考えていたら、ハクさんが話しかけてきた。

「さてケーマさん。そういえばダンジョンの名前を決めてませんでしたね?」
「えっ、決めていいんですか? 勝手に決まるもんだと……ああ、そうか、ここに責任者いますもんね」
「はい。せっかくなのでケーマさんの意見を反映しようかと。何か案はありますか?」
「……じゃあ、ハクさんのとこから名前を貰って、『白の浜辺』とかでいいんじゃないですか? 今回のダンジョン、欲望要素ないし」
「あら素敵。ではそれで……ミーシャ、いいわね?」
「はい! 了解しましたー!」

 ミーシャは元気に返事を返した。顔が赤くてもうすでに酔ってそうだけど、大丈夫か?

「えー? 大丈夫ですよぉ、酔ってませんにゃー」
「酔ってるやつはみんなそう言うんだぞ」
「じゃあ酔ってますにゃー、ごろにゃーん」
「酔ってるじゃないか」
「くっそーはめられたー。……というかケーマさーん? なんか私だけ扱いが軽くないですかねぇ?」
「そりゃもう、ミーシャは良く寝てるから親しみを込めてだよ。言わせんな恥ずかしい」
「あれあれ、それってもしかして私のこと口説いてます? なんならこの後一緒に寝ます? 今夜は寝かさないですよ」
「いや寝かせろよ。明日命がけの大事な試合あるんだよ離れろくださいお願いしますコラ」

 ミーシャが俺に絡みつくように抱き着いてきた。くっそ力強くて振りほどけないぞ。

「ちょっとミーシャ! ケーマは私のパートナーなんだから離れなさいよ!」
「にゃはっにゃはははー! じょーだんですよー、ロクコ様かーわーいーいー♪ ほーらケーマさんちゅーしましょ、ちゅー」
「コイツ酒癖悪すぎだろ……」

 ミーシャの顔を手でガードしつつハクさんに止めてくれと目を向ける。
 ……あ、ダメだこの人助ける気ないぞ。ロクコを抱っこしてご満悦状態だ。
 って、くすぐったいから手をなめるなミーシャ! ざらざらしてて少し痛いぞ?!

「こらミーシャ。ケーマ様から離れなさい」
「アメリア―♪ かじっていい? しっぽかじかじしていい?」
「ダメです。……すみませんケーマ様、この子、お酒入るといつもこんなで」

 ラミアの蛇尻尾(足)を俺とミーシャの間に割り込ませ、ぐいっと器用に引きはがすアメリアさん。やれやれ、助かった。
 と、思ったのだが、

「お詫びと言っては何ですが、私がお相手しましょうか。大丈夫、優しくしますから」
「あれ、アメリアさん酔ってます? 酔ってますよね?」
「ほら、私の足、ひんやりしてて気持ちよくないですか?」

 鱗に覆われた尻尾(足)を俺に巻き付け、柔らかな双丘を押し付けて俺を誘惑してくるアメリアさん。
 ……ひんやりした尻尾(足)の触感で少し頭が冷えてきた。分かったぞ、これ、ハニートラップだ。だってハクさんがさっきからニヤニヤしてるし、ロクコに「ケーマさんのこと、信じてるんでしょう? なら大丈夫よ」とか耳打ちしてるし、ロクコはロクコで「ぐぬぬ」と俺を信じて見守っているし。
 手を出そうものならひどい目に合って明日の試合もズタボロとかそういう流れなんじゃないか。しまった、敵は身内に居た。

「とりあえず離れてくれませんか? アメリアさん」
「あらつれない。私の足にこれほど情熱的な目線を注いでくださったというのに」
「じゃ、次は私の番かしら? アメリアの時間終了ねー」

 もはや隠す気が無くなってきて、次はレイスのドルチェさんだ。おい、もしかしてあとクロウェさんとサリーさんも来る気か?

「ところで私、レイスだから足とか無いんだけど……どう思う?」
「守備範囲外ですね。人化してから出直して来てください」
「わぁ清々しくて浄化されそう。……それじゃ、次サリーで」

 やる気無いな! いや助かるけど。

「帝国騎士は色仕掛け(ハニートラップ)などという卑劣な手は使わない! ゆえに! パスで!」
「あー。サリー彼氏居るもんね。じゃあ仕方ない」
「ななな、そ、そんなことないわよ?!」
「あら? そうだったのですかサリー。水臭い、言ってくださいよ。相手はどなた?」
「ハク様、私は生涯帝国の騎士であると誓った身です。色恋にうつつを抜かしたりなどしておりません」
「いや、帝国騎士団長にハニートラップ仕掛けられてる可能性があるじゃない。身元は調べないとダメよ?」
「パルメはそんなんじゃないです!」
「へぇ、パルメっていうのね。国際指名手配の結婚詐欺師だったりしないかしら?」
「罪の捏造とかダメですからね?!」

 クスクスと楽しそうに笑うハクさん。よかった、サリーさんは大丈夫そうだ。
 あとは、とクロウェさんを探す。……あれ? 居ない?

「あれ、クロウェはどこ行ったの? この流れならシメはクロウェでしょ。逃げた?」
「かも。ハク様一筋なところあるものね」

 それならそれで助かったな。ほっと一息つく。

「じゃ、代わりにウチが色仕掛けするで! ご主人様ー」
「おうイチカ。命令だ、おとなしく飯食ってろ」
「命令じゃしゃーないなー。あ、ロクコ様メロン食う? 取ってくるで」
「メロンパンそっくりのアレね。ええ、お願い」

 ふぅ、これで全員撃退したか。満足したかい、ハクさん。俺にセクハラは効かないぜ?
 ハクさんはにっこり笑顔を見せる。

「では、ご褒美に私がお酌してあげましょう。エールで良いですよね?」
「え、いえ。明日があるんでお酒はちょっと」
「ほう。私のお酒が飲めないと……?」

 最後の関門はパワハラだった。

 俺は屈した。くそう……

(そういえばサイン本ちょっと作りました。詳しくは活動報告にて)
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