表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/620

閑話:お土産と技術革新

「……おおおおー! これは素晴らしいですー!」


 帝都観光のお土産に、『永久万年筆くん』をネルネにあげたら、そりゃもうものすごく喜んでくれた。


「ぐぐぬ、分解したい……けどこれ、プロテクトがかかってて、分解したら魔法陣が消失する仕掛けがあるそうです……!」

「そんなのがあるのか?」

「説明書のスミにかいてありましたー! さすがは『勇者工房』ってことですねー」


 神の尖兵、勇者のチートスキルというやつだろうか。


「ふーむ、それだと同じのを作るのは無理そうかな」

「魔力を流せばインクが補充されるようですねー。水、と、黒い……土、かしらー?」


 ちなみに万年筆の横面は透明な板がついており、そこでインクの残量が見えるようになっていた。

 ついでに言うと、インクの色は黒だけではなく赤、青、緑といったカラフルなものもあった。今回買ったのは一番ベーシックな黒だけだけど。


「インクって水で作るのか?」

「ちがうんですかー?」

「いや、知らんけど。油とか使うんじゃないか?」


 ちなみに普通のインクは? というと、これまた『勇者工房』製の『インクメイカーくん』という魔道具を使って作るらしい。どこが普通なんだ……


「……つまり、その『勇者工房』ってところがひたすら技術を独占してるってことかな」

「ですねー。あるいは、他は誰も真似できなかったとかー」


 数百年とか工房を存続させてるあたり、『魔道具を作る魔道具』とか作ってそうだよな。あるいは、まだ本人が生きてたりして。

 ……深く考えないようにしよう。


 ちなみに『薪要らずの鍋』や『加熱鍋くん』は買わなかったが、そういうものがあると話した。


「前にマスターが言ってた『コンロ』のほうが使い勝手いいですねー。普通の鍋でも使えて、交換も簡単ですしー。魔道具なら鉄板一枚ですから場所もとりませんよー?」

「……いわれてみれば便利だな、コンロ」

「あ、そーだ。ガー君、試作の火16番もってきてー……はーい、ありがとー」


 助手のガーゴイルが無言のままサッと箱を持ってきて、ネルネに渡した。

 ガーゴイルから箱を受け取ったネルネが頭をなでると、ガーゴイルは満足したのか部屋の角に戻っていった。

 箱の中に入っていたのは、魔法陣が刻まれた素焼きの板だった。


「こちらが試作コンロですー。試作なので土製ですが、以前のコタツを作ったときのダイヤル魔法陣をつかってるので、強弱の調整もできますよー」


 試作コンロには、ダイヤルと、鍋を置く五徳(ごとく)がわりに5個の突起がついていた。いつの間にこんな便利グッズ作ってたんだお前。

 冒険者のたしなみとして俺用にひとつ作ってもらおうかな。一応Bランク冒険者になったんだし、そういうお役立ちグッズは欲しいところだ。


「さすがネルネ、そんなの作ってたんだな」

「……マスターのおかげですよー。土で作ってるからカバンにいれて持ち運ぶと割れますけど、マスターなら鉄板で簡単に量産できますよねー?」


 鉄板で量産するのはできなくはないが、面倒くさい。とても。

 それに使ってるうちにコンロ全体が熱くなりそうだ。

 それならとりあえず持ち運びを考えずに、その素焼きの板使ってひとつ作ってもらおう。試作品の一品モノとかいいじゃないか。


「そうだな、素焼きの板をハメ込める木の土台は作れるか? 突起部分は強度ほしいからそこだけ穴開けて鉄板刺そう。えーっと、……ここは穴開けても魔法陣に影響ないよな?」


 俺は素焼きの板をちょいっと預かり、【クリエイトゴーレム】で余白となっている部分を削り、突起の部分を穴にする。あとはこれに合うように木の板を作って、鉄板刺すだけで完成するだろう。

 うん、薄型コンロ、良い感じになりそうだ。


「……それなら持ち運ぶとき、木でフタすれば割れる心配も減りますねー。それなら土製のままで、ご主人様の手を煩わせることなく私でも作れますよー」

「お、いいね。さすがネルネだ。じゃあそれで作ってくれ」


 おっ、フタまで作ってくれるのか。やっぱりうちの研究員は優秀だな。

 俺は魔法陣の描かれた素焼きの板をネルネに返した。完成したらゴゾーに見せびらかしたろ。


「私が優秀なんじゃなくて、ご主人様のおかげですよー」

「謙遜するなよネルネ。これからも期待してるぞ!」

「……謙遜でなくですねー? アイディアがですねー」


 はぁふ、とネルネがため息をつく。


「魔石使い放題で、土で魔法陣作っていいとか、カンタラ師匠が聞いたら目をむいて気絶するレベルですからねー?」

「あっ。そういえばオーブンにタイマーつけたいんだけど、ゴーレムタイマーと連動するようにできる? ひねって元の位置に戻るまでONにしておく感じのスイッチがあればいいんだけど」

「ほらまたそうやって技術革新するー!? うわあああん」


 ネルネがぽかぽか叩いてきた。

 ははは、ういやつめ。ちょっとだけ痛いからそのくらいにしておくれ。



 尚、後日「それで作って」が「その方針で量産して」という意味に伝わっていたらしく、差し当たって10個の薄型コンロが完成した。

 量産可能になっただと……1つで良かったのに。


 ネルネにはボーナスとして研究室用に卓上オーブントースター(不死鳥の卵殻製)をあげることにした。コンロと不死鳥の卵殻を【クリエイトゴーレム】でコネコネして作ってみたらそれらしいのができたからな。

 これでトーストとかも食べ放題だ。喜んでくれるだろうか。


「……カンタラ師匠、悶死レベルですねー。いや、研究室で簡単に素焼きできるし、ますます(はかど)りますー」

「あ、そうなるんだ」

「はいー、ありがとうございますー。……あと卓上オーブンとか、また新しいですー」


 ……まぁ、喜んでくれたようでなによりだよ。

 とりあえず残りのコンロはキヌエさんに1つ上げて、あとはダンジョンの宝箱に入れようかな。大当たり枠で。



(何気に高性能すぎる薄型コンロ、末端価格金貨十数枚とかになりそう。

 これで鉄性だったら耐久性が跳ね上がってさらに……!)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ版 絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 12巻、2025/07/25発売!
(連載ページ→コミックガルド版
だんぼるコミカライズ版11
だんぼるコミカライズ版1 だんぼるコミカライズ版2 だんぼるコミカライズ版3 だんぼるコミカライズ版4 だんぼるコミカライズ版5 だんぼるコミカライズ版6 だんぼるコミカライズ版7 だんぼるコミカライズ版8 だんぼるコミカライズ版9 だんぼるコミカライズ版10 だんぼるコミカライズ版11

【完結】絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 全17巻、発売中!
だんぼる1 だんぼる2 だんぼる3 だんぼる4 だんぼる5 だんぼる6 だんぼる7 だんぼる8 だんぼる9 だんぼる10 だんぼる11 だんぼる12 だんぼる13 だんぼる14 だんぼる15 だんぼる16 だんぼる17

異世界ぬいぐるみ無双、全2巻発売中。こちらもよろしくね。
N-Starの「異世界ぬいぐるみ無双 ~俺のスキルが『人形使い』~」【完結】

「あとはご自由にどうぞ!」の書影です! Ixy先生の書いたカリーナちゃんだぁ!!!
1588.jpg 1657.jpg 1837.jpg

コミカライズ版はこちら! 2巻出るよ!
9784758086806.jpg


新作、コミカライズお嬢様ですわー!!
TsDDXVyH
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ