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帝都観光(2)


 魔道具屋で『永久万年筆』をひとつ購入し、【収納】にしまう。

 ダンジョンに戻ったら同じのを作れるかネルネに調べてもらおう。

 その後、ぶらぶら歩きながらいくつかの店を見学させてもらった。


「次はそうね……冒険者ギルドに行きましょうか。今なら依頼ラッシュも落ち着いて空いてるでしょうし」


 再びハクさんの案内で、商業通りから冒険者通りに向かった。

 そして、でかでかとした看板を掲げた、石造りの大きな建物――冒険者ギルド本部がそこにあった。倉庫や解体場が併設されている。

 これとツィーアにある冒険者ギルドを比べたら、屋敷と小屋くらいの差があるんじゃないか。ましてやうちのダンジョンにある出張所なんか犬小屋だ。


 入口から堂々と入ると、中はまるでカフェ付きの市役所、といった洗練された内装だった。カフェ部分で昼間から酒盛りしている冒険者がいて色々台無しだけど。


「お、かわいい子達……みねぇ顔だな。あと眠そうな顔したにーちゃんか」

「ほう、こりゃ将来が楽しみな美人さんじゃねぇか」


 近くにいた冒険者に、歩いて距離を詰められる。

 絡まれるか、と身構える。……あの、ハクさん、なにニヤニヤして俺の後ろに隠れてるんですかね? ロクコ、その「やっちまいな!」的な顔は何さ。ニク、ナイフはしまっておきなさい、そう、柄に手をかけるまではOK。


「おう、坊主。ここは冒険者ギルドだ」


 ひときわゴツい、リーダー的な男が俺を呼ぶ。

 ……ゴーレムアシストあるけど、勝てる気がしねぇ。どうするか……

 対応に困っていると、ぽん、と肩に手を置かれた。


「ゆっくりしてきな。年長者として、しっかりお嬢ちゃん達を守るんだぞ。ほら、飴玉をくれてやろう。みんなで食べな」

「で、出たぁー! トコイ兄貴の飴ちゃんだぁー! 蜂蜜を飴玉にしたドン傭兵団愛用の嗜好品ッ!」

「子供好きなのに子供に怖がられている兄貴が編み出した必殺技、飴ちゃん! さすが兄貴、個人の稼ぎの殆どを孤児院に寄付してるだけのことはあるぜー!」

「顔が怖くて子供に警戒されるのも慣れっこだぁー! 笑顔で近づいて泣かれること100回越えは伊達じゃねぇー!」

「おい、黙れカルビ、ハラミ、ロース」


 なんかめっちゃいい人だった。俺は紙袋に入った4個の飴玉を受け取った。


「ええと」

「……いやすまん、怖がらせちまったか? あ、お、俺は怪しいモンじゃないぞ。俺はBランク冒険者でな、そこそこ名前も知れてる。なんならギルド職員に聞いてもらってもいいぞ」

「あ、はい……じゃあ念のため」


 すいませーん、とギルド職員に確認したところ、取り巻きの3人が言っていたことはすべて事実らしい。顔が怖いけど面倒見がよく子供好きのBランク冒険者、兼傭兵団の団長なんだとか。

 緊張して損した。


「お前……迷わずギルド職員に確認したな……いや、いいんだけどさ。初対面の俺が嘘ついてる可能性がある以上、確認するのが正解だ。ふふ、それでいい、それでいいんだ……子供たちを守るために、しっかりしているいい保護者じゃないか、ハハハ」


 泣きそうな声で「困ったことがあったら頼ってくれていいぞ」と言って、ゴツイ男と取り巻き達は去っていった。


「……なんだったんです?」

「ある種、このギルドの名物になっている有名冒険者の一人よ。今回『使える』手駒のひとつね。丁度会えたのは運がよかったわ。……ああ、使う場合の交渉は自分でやって頂戴」


 ハクさんに尋ねると、そんな返答を頂いた。

 ……なるほど。『当日に冒険者を呼び込んで戦わせる』という作戦はハクさんも想定内ってことか。で、傭兵団なので金で動かせる、と。使うかどうかはさておき、覚えておくか。


「さて……一応、ここのギルド長を紹介しておきましょうか。ついてきなさい」

「あれ、ギルド長って……ハクさんじゃないんですか?」

「私はグランドマスターですから。普段は部下に任せてるのよ」


 そう言ってカウンターの裏へ向かう。職員に止められることもなく、階段を上り、ギルド長室へ。ハクさんは、軽くノックして返事を待つ。

 が、しばらく待っても返事がなかったので、ハクさんは平然とギルド長室の扉を開いた。


「すぴゃー……すぴぃ……にゃふふふ……」


 ギルド長室では、ピンク色の猫耳娘が執務用の机に伏せって寝ていた。

 ……柔らかな日差しの中、暖かい室内はよく眠れそうだ。俺も寝たくなってきた。


 って、まさかこれがギルド長なのか?

 ハクさんはおもむろに木槌を取り出し、寝こけていた猫耳頭に振り下ろす。

 ゴヅン、と鈍く痛そうな音がして、猫耳娘は飛び起きた。

 ……気持ちよく寝ている所を殴って起こすとか、なんという鬼畜。


「ぴぎゃ?! な、なにっ、敵、敵襲?! あっ、ハク様!」

「おはようミーシャ、お仕事は?」

「ハッ! 滞りなく問題は一切ありません! 喧嘩はありましたが問題はないです!」


 びしっと敬礼するも、口周りと机にはよだれの跡がある。机の方はむしろ池だ。


「ロクコちゃん、ケーマさん。直接会うのは初めてでしょうから紹介しますね。ワーキャットのミーシャ。私のパーティーメンバーのひとりです。ダンジョンのモンスターでもあります」

「ミーシャです! ワーキャットだけどギルドでは猫獣人で通してます!」

「元気な猫ね! ロクコよ」

「ケーマです。よろしくお願いします?」


 見た目としてはかわいらしい女の子に、猫耳と猫尻尾だ。

 猫獣人とワーキャットはどう違うのだろう?


「これ、一応人化した姿なので。戻ると手が肘まで毛に覆われたりしますよ? もっとモフモフになります」


 あ、人化とかできるんだ。そしてモフモフなのか。

 それと、魔物なので体のどこかに魔石がある、というのも違いか。


「ミーシャはこれでも一応現役のAランク冒険者なので、据えておくだけでも効果があるんですよ。戦闘力もありますし。……他に細かい仕事を任せられないというのもありますが」


 そんな事情が……適材適所って大事だよね。


「失礼な! こう見えて、知将なんですよ私は。なんたってハク様も解けなかった『簡単』の問題を一発で解いたんですから!」

「……」

「いだっ?! ハク様、つねらないでくださぁい!」


 ああ、初めてのダンジョンバトルの時の謎解きだな。「この問題の答えは『簡単』です」という、頭がいい人ほどハマる問題だったけど……そうか、こいつが解いたのか。

 問題を全く深く考えなければあっさり解ける問題だから……うん、納得だな。


「……仕事中に居眠りしていたので、あとで罰を与えましょう」

「ひい?! す、すみませんでしたぁ!」



(ちょっと書籍化作業が遅れ気味です。投稿ペースは守りたい(希望)

 あと、朗読の第2回目がきてるみたいです)

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[気になる点] どうやって冒険者をダンジョンバトルに巻き込むんだろうな?
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