チーム戦
「――とまぁ、そんなわけで。ダンジョンバトルをすることになったわ」
3日ほど不在だったロクコが帰ってきたと思ったら、いきなりダンジョンバトルの話をしだしやがった。
というか『父』とかマジ何者だよ。神様? 神様だろ絶対。
「……ちなみにそれ、1日目だよな? あと2日何してたの?」
「え? そりゃ食べたり飲んだり騒いだりお茶したり……なんたって210位ですし? 63位の112番コアことイッテツにも勝った実績がありますし? うふふふふ」
こいつ、調子に乗りまくってるな。210位ってのがそんなにいい順位なのか?
とりあえず、今聞いておかなければならない重要な問題点はダンジョンバトルだ。
「で、なんでハクさんの代わりに俺らがダンジョンバトルしなきゃなんないんだ?」
「それは父様の意向だから従うしかないわよ?」
「……断ったらどうなるの?」
「その場合、ハク姉様を敵に回すことになるわね。絶対イヤよ?」
あ、うん。それは俺もイヤだわ。確実に死ねる。
「……で、ルールが……3チーム戦だったっけ?」
「ええ」
ロクコ曰く、6番コアと666番コアの『魔王チーム』、5番コアと650~652番コアの『龍王チーム』、そして我らがハクさんと俺らの『帝王チーム』に分かれた、変則チーム戦らしい。
ダンジョンは新しく作り、ダミーコアを1つだけ用意する。
ダミーコアを破壊されたら負け。これは今回、タッチではなく破壊だそうな。
使用可能なDPは、ダミーコア含めて50万DPまで。
試合開始は1ヶ月後。それまでにダンジョンを用意すること。
……そして、ここからが俺としては厄介なルールだ。
上位コアの領地にて、上位コアのDPを使って、上位コアと協力してダンジョンを作ること。
本気でかかるなら、ハクさんに手の内を晒さなければならない。晒さないのであれば、【クリエイトゴーレム】を使わずにダンジョンを作れということだ。
……いざというときの切り札に【クリエイトゴーレム】は隠しておきたいのだが、そうなると、今までのうちのダンジョンの作り方は通用しない。
50万もDPがあれば十分かとも思うけど、それは相手も同じ条件だ。いかにしてDPをケチり、より多くの内容を盛り込むかが肝となるだろう……。
ちなみに持ち込みは、上位コア組は禁止だけど下位コア組はOKらしい。……ハクさんからの助っ人はダメ、と。
ハクさんが捨てた要らない魔剣とかその他いろいろをたまたま拾ったりもダメか。ダメだろうな。
……とりあえずロクコに200回ほど1000DPガチャしてもらうか? ロクコの運ならプラス収支になるだろ、たぶん。
「ん? でもそのダンジョンバトルの間、こっちのダンジョンはどうすればいいんだ。さすがに放置とか危なすぎるだろ?」
「それね。父様いわく、期間中は空間をつなげてくれるらしいわ。だからダンジョンには毎日戻ってこれるんだって」
「空間をつなげる……ダンジョンバトルみたいにか」
さすが『父』とかいう胡散臭い奴だ。そういう桁外れなことも平気でやってのける。
「というか、あのダンジョンバトルで空間つなげるのを父様がやってるらしいわ」
「お前のとーちゃんスゲーな。一度顔を見てみたいわ」
「まぁ今回のダンジョンバトル開始のときに見れるかもね?」
ちなみに今回のダンジョンバトル用にDPのやり取りの上限、現在使用DPとかの表示もメニューに追加されていた。対応早いな。
「で、どことどこがつながるんだ? さすがに村のど真ん中に帝都への直通ゲートが開くとかになったら大騒ぎどころじゃないぞ」
「うちのダンジョンの奥、ちょうど闘技場のあるところと、帝都のハク姉さまのいる離宮を繋げてくれるらしいわ。ケーマがダンジョン作るとこ決めたらそこに改めてつなげ直してくれるんだって」
至れり尽くせりだな。
俺はふぅ、と息を吐く。ここまでお膳立てされてしまっては、逃げ道がない。逃げるつもりはないのに逆に逃げたくなるくらいだ。
「で、俺はどうすればいいのかな」
「ハク姉さまが迎えに来るから、そしたら帝都にいくわよ」
「……こっちでの仕事できる要員が不足しないか?」
「不安なら新しく呼べば?」
そうか、新しく増やすという手があったな。
そもそも今の3人娘はその先駆けとして呼んだんだったわ。……結構DPも溜まってるし、ダンジョン運営専用のオペレーター的なのも召喚してもいいかもしれない。
「ふふふ、なんたって210位の私よ。DPならあるわよ!」
「そうだなー。よし、レイに5万DPくらい渡して好きに部下を呼んでもらうか……」
「……なんでレイ?」
「あいつはこのダンジョンに詳しいからな。ニクとイチカはDPつかえないし、キヌエさんは宿の家事に夢中だし、ネルネは研究に没頭してる。……消去法とも言える。それに、一応あの3人のリーダーだしなぁ」
「なるほど、私の次の次くらいにダンジョンに詳しいわけね」
なんだかんだレイは3人娘のまとめ役になっていた。最初に出てきたというのもあるけど、なんだかんだ面倒見は良い。生活面ではキヌエさんが一番だけど。
「まぁいいわ。ケーマ、帝都いったらその、えっと、しょ、ショッピング、したいわ。い、一緒に行かない?」
「……うん、荷物持ちならニクを貸そう」
ハクさんの庭でデートのお誘いか。それ、俺が死ぬだろ?
「……私はケーマと行きたいのよ」
「さすがにハクさんの監視下でそれはちょっと」
「ケーマはハク姉様のこと恐れ過ぎじゃない? ハク姉様とっても優しいのよ?」
お前がそう思うんならそうなんだろうな、お前に対してはな……!
(この小説の書籍、第1巻、4月25日発売! すでに22日には本屋に並んでたみたいですね。
あ、記念SSを活動報告にUPしてます。短いのを今日もう1個うpします。活動報告に)