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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

ダンジョンコアの集会

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『父』

 ダンジョンコアたちは、一斉に上空のモニターに映る男を見た。当然ロクコも。

「父様……ご尊顔を拝めるのは2年ぶりね」

 『父上』『父様』の他、『王』『神』といった呼び方すらされている、浅黒い肌の黒髪金眼の男。紺色の法衣に身を包んでいた。ロクコはご尊顔と言ったが、顔の半分、目元を仮面で隠している。隠れていない口元にはうっすらと笑みを浮かべていた。
 正体、という意味ではここいいるダンジョンコアの誰も知らない。
 だが少なくとも、ここにいるダンジョンコアは全員、彼によって産み出された。それは揺るぎない事実であった。

 彼こそは『第0番(はじまり)のダンジョンコア』で、すべてのダンジョンコアは彼の『ダミーコア』なのだ、というダンジョンコアもいる。尚、この説は一定の支持を得ていたりする。

 多くのダンジョンコアが人化により人型をとろうとしているのも、『父』である彼が人型をしているから――少なくとも、人型で姿を現しているから、という理由だ。
 そのため、最初から人型であるハクは妬みの対象でもあった。
 ……ハクがロクコのダンジョンとしての順位を下げさせていたのは、その妬みの対象になりにくいように、という意図もあった。

『おや、少し減ったかな? 悲しいね。そろそろ新しい子たちを補充しようかなぁ。どう思う? 1番』
「はっ、父上がそう思われたのなら、そうすべきではないでしょうか」

 騎士姿の1番コアが『父』の問いに答えた。このダンジョンコアの集会の中で一番――『父』を除き――強く、最古参で、影響力のある者だ。1桁のシングルナンバーは伊達ではない。

『んー。つまらない回答だね。他の意見を持ってる子はいるかい?』

 だが、そんな1番コアの回答はお気に召さなかったのか、『父』は他のコアたちに意見を求めた。――が、誰も、意見を言わない。いや、言えないのだ。
 ここで意見してしまうというのは、1番コアに逆らうという事でもある。そもそも『父』に意見するというのは、とても畏れ多いことだ。

「意見、よろしいでしょうか。お父様?」

 そんな中、1人のコアが手を挙げる。
 誰だ、この命知らずは――と、視線が集まる。

『なんだい? 89番、僕に意見してくれるのかい?』

 嬉しそうに『父』の声が弾む。89番コア……ハクは、にっこりと笑顔を浮かべた。

「600番台はまだ7割ほど生き残っております。新たな弟妹たちを産むのは、尚早かもしれません。もう少し減ってからでも良いのではないでしょうか?」
「『裏切者』がそれを言うか!」

 グララァ、と大地が震えるような声が響く。
 黒いドラゴンの5番コアがハクと『父』の会話に割り込んだ。が、『父』はやんわりと5番をたしなめる。

『5番。今、僕が89番の話を聞いてるんだ。この次に聞かせてもらうよ』
「しっ、失礼しました、父よ! しかし!」
『次に聞くと言ってるだろう? 5番は賢いからね、大人しく待てるだろう?』
「は、はい……」

 賢いから待てるだろう、といわれて、それでも食って掛かるのは『父』の言うことを否定することになる。5番コアは引き下がるしかなかった。
 そして『父』は、改めてハクに問う。

『それで、89番はどれくらいまで減ったら次の子たちを出すべきだ、と考えているんだい?』
「600番台の生存数が5割未満になったら、でしょうか。今までもその位で追加の弟妹を増やしていましたし」
『なるほど分かりやすい意見だ。参考になったよ、ありがとう』

 お褒めに与り、光栄ですわ。と、ハクは(うやうや)しく頭を下げた。

『それじゃ、次は5番の意見を聞くよ。どうだい?』
「はっ! 父よ、そこの89番は『裏切者』、同胞狩りです。死んだダンジョンコアも、大半はそこの89番の手引きによるもの。ダンジョンの生存数とやらを細かく把握しているのもそのためでしょう。……そのような89番の意見など、聞くに値しないかと!」
『ふむ。89番、そうなのかい?』
「ええ、確かに私は私が生きるために他のダンジョンコアを間引いていますわ、お父様。問題ありまして?」

 ハクは臆面(おくめん)も無く言い放った。

『ないね。生きるために他者を犠牲にする――実に正しい姿だ。うん? これ、去年も言った気がするね』
「毎年の事ですわ、お父様」
『そうか。まぁ、それでもここに居る皆は僕のかわいい子供たちだ。程々にね』
「ええ、心得ております」

 くすり、とハクは笑みをこぼした。
 そう、ハクが『裏切者』と罵倒されるのはいつもの事。『父』にほどほどにと諭されるのも、いつもの事だった。

『それで、5番はどうだい? 新しい子を産むのに、意見は?』
「そ、それは……父の思うままにされるのが、一番良い、と」
『うん、ありがとう。他の子にも聞いてみようかなぁ……』

 つまらなそうにつぶやいた後、きょろきょろと質問相手を探す『父』。

『おっ』

 その視線は、ちょうどロクコの方を向いて止まった。
 びくっと、ロクコが震える。……まさか、指名される? されちゃう?

『112番、どうだい、君は意見あるかい?』

 ちがったかー。そっちかー。と、ロクコは安堵のため息をついた。

「あァー……そーだ、ですなァ、第5番も言ってた、ましたが、父上の好きにすればいいと思う……いますぞォ。しいて言えば、新しいガキどもが来るのは楽しみだァってくらいですかァ? ま、今出さなくても気長に待つさァ」
『へぇ。楽しみ、か。そりゃいいね』

 無理矢理に慣れない敬語を使って、色々とおかしくなってるイッテツの意見に、くっくっと笑う『父』。5番コアは、イッテツに「よくやった!」と視線を送っていた。

『じゃ、ついでにそこの695番。君はどうだい?』
「……はぇ?!」

 急に『父』から話をふられて、びくりと硬直するロクコ。
 ……不意打ちは止めてほしい、そう思いつつ、ゆっくりと声を出す。

「え、ええと……わ、私は、その、今、一番下の600番台だから……後輩ができるのなら、嬉しいかも、だけ、ですけど。……抜かされたら、複雑な気分になるとおもいます」
『ははは、複雑、ね。君らしくていいとおもうよ、695番』

 かぁぁ、とロクコの顔が赤くなる。君らしくていい、とは、つまり「ロクコらしい」という印象があるほどロクコのことを見ているということでもある。
 やはり、DPランキングが最下位というのは逆に目立つのだろうか?
 発言したロクコに対し、ハクはにこやかな笑顔を向けていた。
 ほっと息をはくロクコ。自分でもわかるけど、相当緊張していたようだ。

 その後も数名のコアに話を聞く。が、やはりその意見は「『父』のやりたいように」という、1番コアの意見に追従したような、そんな内容ばかりだった。
 ――私も、そういう風に言っとけば目立たなかったかも。
 と、ロクコは今更そんなことを思っていた。

『うん、今年はやめておこうか。来年また考えよう』

 『父』がそう言ってパン、と手を叩いた。
 空気がほっと緩む。

『いいかいみんな。僕に要望や質問、意見があれば、この宴の間に言っておくれよ? こういった機会でもなければ、僕はあまり君たちに干渉できないからね』

 にこり、と、仮面に隠れていない口周りで笑顔を作る『父』。そこに、1人のダンジョンコア――壮年の男に人化した――が、声を上げた。

「おお、我らが神よ! それではどうか我が願いを聞き入れては貰えませぬか」
『早速だね。なんだい380番、なんでもいってくれたまえよ。けど、僕のことは父と呼んでくれると嬉しいなぁ』
「そんな畏れ多い、矮小な私めごときを息子などと……私めはあくまで神のしもべでございます」
『あーうん、それでお願いというのは?』

 380番コアは跪き、願いを言った。

「はっ! 神のご威光を示す奇跡を! 死者の蘇生を願いとうございます!」
『おや? あれ、できなかったっけ? お気に入りの子の復活って』
「私めが蘇生をお願いしたいのは、我が兄、379番コアでございます! 咋冬、卑劣なる89番の魔の手にかかり、邪神の尖兵の餌食となり……」
『あー……379番か。双子のコアだったね、君達は。うん、けどごめんね、それはダメなんだ』
「何故でございますか?! 神の力をもってすれば!!」

 「できない」ではなく「ダメ」。この2つには大きな違いがある。……『父』の力をもってすれば、破壊され、死んだコアすら生き返らせることも可能なようだ。
 しかし『父』は380番コアに諭すように、無情に告げる。

『そういう決まりだからね』

 それは、『父』すらも何かのル-ルに縛られている、と、そういうことだった。

『ああそうだ! 379番と同じ見た目のモンスターを作れるようにしてあげよう。あの子は君と同じで人化もできたよね? DPをほんの少し使うけど、見分けがつかない程にそっくりなモンスターだ。これで380番も寂しくないだろう? 好きなだけ作ると良い』

 380番コアは一瞬驚いた表情をして、拝むように頭を下げた。

「それは……いえ、神よ。お慈悲、感謝いたします」
『うん、喜んでくれてなによりだよ』

 380番コアは地に頭を付けて震えていた。
 本当に感謝して喜んでいるのか。それはロクコには分からなかった。

(おう、特設ページの内容が更新されておりました。活動報告でコメント貰って初めて気が付いたぞぃ。
 あと3つめのレビューいただきました。ありがとうございます)
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