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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

閑話の章

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閑話:一般村民冒険者の休日

 やぁ、僕の名前はナンモ。こう見えて冒険者さ!
 え? この質素な服がいかにも村人じゃないかって? いいところに気が付いたね。
 実は僕、このゴレーヌ村の住人でもあるのさ!
 『欲望の洞窟』前にできた村、ゴレーヌ。まぁ名前付いたのはかなり最近だけどね。
 最近は強い狼の魔物が出て色々ピンチだったらしいけど、勇者様のおかげでお皿をお守りにダンジョンに潜る日々さ!

 ま、昨日アイアンゴーレム狩ったから今日はオフなんだけどね。アイアンゴーレム1体狩れば、贅沢しなければ数日は何もしなくていい。相方のイェーネと分けた上でだよ。
 アイアンゴーレムはギルド買い取りじゃなくて直接ダインさんの商店に持ち込んでるけど、1体で銀貨15枚になるかなり美味しい獲物さ。ただ、鉄の塊なだけあって凄い重いから、気をつけないと

 一応クーサンに建ててもらった家があるから宿代もかからない。ちょっと寒いけど。
 暖炉は無いけど、家の中で焚火ができるからそれでしのいでるよ。当然、火事には気を付けてね。
 まぁ、燃料の節約にって村長が温泉使わせてくれるから、ツィーアに住んでた頃よりむしろお金が掛からない位さ。

 さて、今日は朝ごはんは安パンだ。村の備蓄の小麦粉を使って、宿のカマドで作ってもらった一品だ。安くて質の悪い小麦なんだけど、キヌエさんが作るとまた極上の味になる気がするね。がじっ……硬い。冷めるとさすがに硬くなるな。うん、まぁ、なんだ。でもキヌエさんが作ってくれたパンだから! 美味(うま)し!
 いやぁ、料理上手な人っていいよね。キヌエさん美人だし。どこか儚い雰囲気がまるで妖精のようで、もうなんというか結婚したい。

 うん、今日は宿に行ってみるか。ダイン商店で売ってるアクセサリーでもプレゼントしてみようかな? てか、アクセサリーの品揃えが地味に充実してるんだよね。何故か。
 というわけで、ダイン商店でこのダンジョンの特産品、アイアンゴーレムの鉄指輪を買ってみた。アイアンゴーレムが銀貨15枚で売れるのに対して、この指輪ひとつで銅貨50枚っていうのはわりと暴利だよね、でも買っちゃう。

 さてさて、今日の受付は……おおっと! ネルネちゃんじゃないか!
 ネルネちゃんはレイさんやキヌエさんに比べれば一見地味だけど、その実魔法の素養がすごいんだよね。何気にネルネちゃんがつくった光の魔道具をダイン商店に卸してるとかなんとか。きっと錬金術師見習いなんだろうね。
 ダンジョン街、ってほどじゃないけど、ダンジョン前にできた集落は、その性質上魔石が安く手に入るから、そういう魔石を使う職人なんかはそこを拠点に修行したりするらしい。だからダンジョン付近の集落って、その規模に似合わず魔道具が安くて充実してたりするんだ。
 おっと話が逸れちゃったよ。ハハハ。まぁ何が言いたいかっていうと、ネルネちゃんも結婚したい相手のひとりってわけさ。冒険者の夫を支える錬金術師の妻、なんて、いい感じだろ?

「やぁネルネちゃん、今日はいい天気だね」
「いらっしゃいませー。えー、あー、そうですねー。お泊りですかー?」
「いや、温泉に入りにね!」
「温泉のみはー、村民なら無料ですがー、それ以外は銅貨10枚ですー」
「いや、僕村民だから! ほら、村民の証!」

 僕は村民の証である鉄製のタグを見せる。これは村長が鍛冶屋のカンタラさんに作らせた代物で、ひとつひとつ番号と名前が刻まれているんだ。僕はなんと18番、良い数字だろ? え? どこがって? ハハハ、良い数字っていったら良い数字なんだよ。
 それにしてもネルネちゃんってば、何度も来てて気心が知れてるからっていつもこういう冗談を挟んでくれてるんだ。こりゃープロポーズまであと10歩切ってるレベルだろ?
 フフフ、モテる男はつらいぜ!

「あー。はい、確認しましたー。どうぞー」
「うん、ありがとう。どうだい今夜、僕の家に遊びに来ない?」
「あー、そーゆーの、ウチやってないんでー」

 ネルネちゃんに名残惜しげに見送られつつ温泉に向かう。
 温泉には、他の村民が入っていることもある。おおっと、あれは村民ナンバー1桁のゴゾーさんじゃないか! お酒を持ち込んでるぞ! すごい筋肉だぞ! まさにドワーフ!

「お? ナンモじゃねぇか。お前も今日は休みか」
「ええ、昨日アイアンゴーレム狩れましたから」
「ほう、何体狩ったよ、3体くらいか?」
「相方と1体です。ゴゾーさんは?」
「あー、一昨日にロップとケーマつれて5体は狩ったな」

 3人で5体って……銀貨15枚が5体って……ええと、銀貨50枚かな?

「銀貨75枚な。ひとりあたりは銀貨25枚だ」
「あ、はい、分かってましたよ? 常識ですよ常識」
「そうか、ナンモは計算ができるんだな。俺はそういうのロップに任せてるからよ」

 ああ、ゴゾーさんらしいと思ってしまった。
 しかし銀貨25枚かぁ、1日でそれだけ稼げたらそりゃいつでも酒を飲んでるわけだ。
 ……というか、ケーマって普通に言ってるけど、村長だよね?
 村長って冒険者してたんだ? 知らなかった。

「ここだけの話、ケーマが一緒の時はアイアンゴーレムと出くわしやすいんだ。ありゃ、ケーマが良い鼻してるからだな」
「え、村長って鼻がいいんですか? アイアンゴーレムってそんな特徴的なニオイしますっけ」
「バカか、ニオイとは限らず鋭い感覚してることを鼻が良いっていうんだよ」
「へぇ! そりゃいいこと聞いた。イェーネにそれとなく使って自慢してやろ」
「おう……あ、飲むか?」
「いただきます!」

 そう言ってゴゾーさんからお酒を一口貰う。
 こうやって、先輩冒険者との交流が自然とできるっていうのもこの村の魅力さ。
 と、そこで温泉に新たな客がやって来た。

「ん? 誰か入ってたか」
「お? ケーマじゃねぇか! こいこい、ちょうどお前の話をしてたところだ」
「そ、村長!」

 入ってきたのはケーマ村長だった。筋肉とか全然ないけど、本当に冒険者やってるんだろうか? 普通、重い荷物運んだりする分、下っ端でもある程度筋肉が付くもんだけど。

「まぁまずはかけつけ1杯ってな。飲め」
「断る。俺は酒はあまり飲めないからな」

 不遜にもゴゾーさんのお酒を断る村長。この村でゴゾーさんのお酒を断れるのはこの人くらいだろうな。他の人は嬉々として飲むし。だってゴゾーさんの持ってるお酒、凄い美味しいんだもの。

「ちっ、つれねぇやつだなー。まあいいか、ケーマだし。それよか今度コイツとゴーレム狩りにいってみたりとかどうよ?」
「えっ?!」

 急なお誘い。こ、これは僕にも一日銀貨25枚のチャンスが!?

「やだよ面倒くさい。それに一昨日ゴゾーと行ったばかりだろ。ゴゾー、もう使い切ったとか言わないよな?」
「あんなん酒代にすぐ消えるわ! つーかゴーレムさまさまだなぁ、こんな美味い狩場滅多にないぜ、人もまだ少ないし」
「そうか……ここから増えるのか、人。……ますます村長の仕事が忙しくなるな、眠い」

 あ、あれ? 僕の銀貨25枚の話は? 一瞬で消えた? はぁぁ……

「あ、あのー。そ、村長? その、村長って冒険者だったんですねぇ」
「うん? そうだよ、一応Dランク」
「おっ。同じランクですね! ……前衛には見えないですけど、後衛で?」
「後衛だな。前衛はクロがいるから」

 クロというと……ああ! クロちゃんか! そっか、村長のパーティーメンバーだったんだな。
 クロちゃんは女の子で、名前がニクとかいうとんでもない子なんだけど……その実力はもっととんでもない。よくやってる模擬戦で、体格で侮って痛い目を見た冒険者は多い。僕もそのひとりで、普通に負けた。
 あの見た目に合わない腕力は反則だと思うんだよね……

「得意魔法とかあるんすか? ああ、言わない主義なら別にいいんですが」
「悪いな、秘密だ」

 村長はそのあとすぐに上がっていった。クールだねぇ。どうやら寝る前に少し体を温めに来ただけ、らしい。……まだお昼だよね? え、もう寝るの? ぐーたらだねぇ。

「はぁ、しっかし村長があのクロちゃんのパーティーメンバーだったとは……あれ? ということはクロちゃんのご主人様っていうのってもしかして?」
「おう、ケーマだな。よくクロが甘えてるぞ」
「……あの、クロちゃんの名前って『ご主人様が付けた』って聞いたような……?」
「ナンモ。……人の性癖は、そっとしてやるのが一番だ」

 うわぁ、何も言えねぇ。
 あ、ちなみに性癖といえば、僕はへそが好きだよ? くりくりっとしてて愛らしいよね! ゴゾーさんはお酒が飲める人が好きらしい……ああ、ロップさんか。納得。

 と、そんなこんなで温泉でしっかりばっちり体を温めた後、お昼ご飯を食べることにした。キヌエさんの手作りおにぎりだといいなぁ。
 食堂に向かう僕。キヌエさん居るかなー?

「キヌエさーん」
「ん? 今日はキヌエさんは夜シフトですよ?」

 そう言って出迎えてくれたのは、銀髪の美女、レイちゃんだ。
 スタイルもよく、というか、なんでこの宿には僕の嫁候補が沢山いるんだろうね?

「あ、そうなの? まぁレイちゃんに会えたからそれはそれで嬉しいんだけどね」
「今日の昼はおにぎりですよ。銅貨5枚です」
「今日も綺麗な銀髪だね。おにぎり、ひとつもらおうか。ついでにレイちゃんの笑顔も」
「スマイルひとつで銅貨5枚なので合わせて銅貨11枚ですね。」
「あ、有料なんだ。……あれ? 11枚ってちょっと増えてない? 10枚じゃないの?」
「え? あ。……お客さんだけの特別サービスですよ?」
「わかった、払おうじゃないか!」

 ふっ、僕だけの特別サービスか……! 悪い気はしないな。僕は銅貨11枚をレイちゃんに支払った。

「それではこちら、おにぎりです。……にこっ!」

 おうふっ! なんていい笑顔だ、結婚したくなってしまうな。
 まるで太陽のような、そんな優しい笑顔だった。
 ちなみにレイちゃんの作るおにぎりは、たまに塩がものすごい入っているにも拘らず、なぜか普通に食べられるという不思議なおにぎりだったりもする。きっと愛が詰まってるから食べられるんだろうな。

「ふふ、良い笑顔だ。どうだい、今夜一緒に食事でも」
「Sランク定食奢ってくださる? 食券だけでいいわ、にこっ!」

 さすがに金貨5枚は厳しいな! ふふ、照れちゃって。でも、本気で嫌っていう訳じゃないのは分かってるさ。だってそうだろう? 本当に嫌なら条件なんて出さないはずさ。つまり、これができたら結婚してもいいってことだよな。
 やれやれ、またモテてしまった。

 お昼のおにぎりは、今日は普通のおにぎりだった。具は何か黒いもじゃもじゃしたもの……パヴェーラ産のコンブとかいうやつだったかな? まぁ悪くなかった。レイちゃんの愛の味がしたよ。

 さぁて、昼も食べたし、何しようかな。……っと、そういえばそろそろネズミレースの時間じゃないか? うん、どうせ暇だし行ってみるか!
 僕は今度は遊戯室へ向かう。入場は無料。ネズミたちのレ―スを見るだけでもわりと楽しいもんだ。

「あれ、イェーネじゃないか。ここに居たのか」
「ん? ナンモ。お前も来たのか」

 相方のイェーネだ。手に賭札を持ってる……あっ、なんだろう。ダメな気がする。

「勝ってるかい?」
「おう、次のレースで取り返してみせらぁ」

 うん、これはダメな流れだね。……ということは、逆にイェーネが賭けてないのに賭ければ当たるんじゃないか?

「どいつに賭けたんだ?」
「ああ、オラニハサンポと、アオノテンテキの2点買いだ」
「じゃあ僕は他のに賭けるよ……おいおい、オンソクとかド本命じゃないか。こっち買った方が良いんじゃないか?」
「オンソクは今日2回目だからな。1回目はぶっちぎった分、疲労があるだろう」

 そういうもんかね。と、僕はオンソクの賭札を購入した。銅貨5枚分だ。
 結果としては、オラニハサンポがゴールまであと3歩というところで立ち止まり、アオノテンテキはなぜか半分まで行った後逆走してスタート地点へ。
 勝ったのはオンソクだった。途中まではとことこのんびり歩いていたのだが、オラニハサンポがゴール前で止まると同時に猛ダッシュ。転がり込む勢いでゴールした。
 尚、ついでに出走していたビビビはスタート地点で寝てた。

 ……銅貨5枚が7枚になった。うん、今日はいけそうな気がする!


 うーん、いい天気だぁ(現実逃避)
 いや、そのね? 行けると思ったんだよ。幸先は良かった。次もエレキマウス賭けたのがポーンと当たってさ。けどその後がダメだった。ユメノクニに有り金ほぼ全部持ってかれた。
 いやさ、賭け札の売り子がイチカって時点でなんか察するべきだったのかもしれない。

「……休日は今日で返上だな。明日はアイアンゴーレム狙いでいこうか」
「うん……あー、惜しかった。あそこでやめておけば……!」

 はぁ、とため息をついて晩御飯を食べに行く。一応、備蓄の小麦粉があるから、パンならひとつ銅貨1枚で作ってもらえるのだ。
 夕方になって食堂に行くと、そこには愛しのキヌエさんが居た。
 薄緑色なやさしいオーラがマジ妖精なキヌエさんだ。おもわず誰もが「さん」を付けて呼んでしまう、それがキヌエさんだ。

「おや、いらっしゃいませ。……またパンですか? ナンモさん」
「たはは、面目ない……」

 そんなキヌエさんは、僕の名前をしっかり覚えてくれている。
 キヌエさん、やっぱり僕のことが……
 と、そういえばポケットにしまっていた指輪を思い出す。

「そうだ、キヌエさん。今日はプレゼントがありまして」
「おや、なんでしょう?」
「こ、この指輪でひゅ!」
「あら、素敵……んー、ではお礼に、ベーコンおまけしておきますね?」

 そう言って、キヌエさんはいつの間にか焼き上がっていたパンに切り込みをいれて、そこにベーコンを一切れ挟んでくれた。
 ……キヌエさん、マジ精霊。清らかなる存在……!
 このサービスは結婚カウントダウン5秒前の証に違いない。

「あの、よかったら指輪を付けてるところ、見せてもらってもいいでしょうか?」
「ふふ、仕事中ですから一回だけですよ?」

 そう言って、キヌエさんは僕が買った指輪を、左手の人差し指に一回はめた所を見せてくれた。仕事中だからとすぐに外しちゃったけど。
 …………うん、ネズミレースでの賭け金に換えなくてよかった。あそこ、なぜかアクセサリーの買い取りもしてくれるからな……

「それではまた。今度はちゃんとご飯を注文してくださいね」
「は、はいっ!」

 僕はベーコンの挟まったパンを受け取り、上機嫌で家に帰った。名前を呼び合い、ディナー(パン)を作ってもらう仲。これはもはや結婚しているといっても過言ではないのではなかろうか。

「いやぁ、キヌエさんマジいい人だわ。俺にもチーズオマケしてくれたし」
「イェーネ、お前の分は僕のおこぼれなんだからな? 僕に感謝しろよ」
「はいはい、っと、それじゃあ早く寝ろよー? 明日はゴーレム狩りだぞー」

 オフトンにぽふっと横になる。
 ゴーレムの魔石も集めればいい値段で買い取ってくれるけど、やっぱりアイアンゴーレムがいいよなぁ……
 次の休日はいつになる事やら、と考えつつ、僕は眠りに落ちた。
(書籍化の作業中なう…… あ、今回のモブの名前は、活動報告の募集から採用)
『このライトノベルがすごい!2018』ライトノベルBESTランキングWebアンケート、9月24日(日)23:59まで!
回答したら、抽選で20名様に全国共通図書カード(500円分)が当たるそうですよ?

https://questant.jp/q/konorano2018

よろしければ文庫1位のところに以下のように記入してみてください。

タイトル:絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで
著者名(レーベル名):鬼影スパナ(オーバーラップ文庫)
コメント(例):チキンタツタ美味しい! それはさておき一番好きなラノベです
+注意+
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