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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

閑話の章

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閑話:勇者ワタルとリン

閑話:勇者ワタルとリン

「なんと! そんな危ない魔物が住み着いちゃったんですか、任せてください!」

 ワタルにリン……というか、脅威となっている魔物について話をした。
 先日、ハクさんにリンのことを相談したら「じゃ、ワタルを寄こすわ。アレなら何とかなるでしょ」と、派遣されてきたのだ。
 実際、実力としてはどちらが勝ってもおかしくないくらいで、どちらが死んでもある意味美味しい所だ。――ワタルの借金についても、払いきる前に死んだらハクさんが払ってくれるらしいし。

 そしてあっさり依頼票を持っていく勇者ワタル。さて、リンは勇者に勝てるのだろうか? 実に見物である。高みの見物としゃれこもう。

  *

 ワタルはサクサクとダンジョンを進み、あっさりとリンの部屋まで到着した。

「……さて、と」

 ワタルが扉を開けると、そこには黒い狼が臨戦態勢で待ち構えているのが見えた。

『がるるる!』
「おぉ、強そうだ……ドラゴンよりも強いかな?」

 先に仕掛けたのはリン。大きく口を開け、噛みつこうとする。……が、ワタルは鼻先をゴィン!と横から殴り飛ばした。
 リンはそのまま壁に激突。べちゃぁ! と黒い染みになった。

「……一撃? いや、今の手ごたえ、まさか」

 ワタルが予期した通り、リンはまだ死んでいなかった。壁の染みはじゅるりと一つにまとまり、再び狼の姿をとった。

「げげ、やっぱりそういうモンスターか。スライムってやつかな?」
『ぐるる……! ここは、通さない!』
「へぇ、喋るのか。……ますます苦手だなぁ。戦いたくないや」

 言いながら、腰に差した剣を抜く。相手は既に牙を剥いている、こちらも相応の準備をしなければ、あっさり殺されかねない。
 気軽に受けた依頼だったけど、間違ったかも――なんて考えているのが顔に出ていた。

『がるるるッ! ……炎よ、燃え盛れ、弾けろ――【ファイアボム】!』
「うわぁあ?! ちょ、魔法とか聞いてないんだけど!」

 リンの放った炎の爆弾を、剣で切り裂くワタル。真っ二つになった炎の爆弾は、ワタルの背後で爆発した。

『ほう、やるな』
「あーびっくりした。うん、わかった。話そう! 話せばわかる!」
『む? いいだろう』
「えっ、マジ? あ、いや、うん、話してくれるならいいんだけどさ」

 ワタルは、適当に口走ったことにちゃんと反応されたことに驚きを隠せなかった。
 モンスターとはいえ言葉の通じる相手を切るのはさすがに抵抗がある。それが快楽殺人犯とかならまた別ではあるが。
 リンによって被害者は出ているものの、それは今はさておくことにした。そもそもダンジョンに潜る冒険者はいつだって死ぬ覚悟があるとされている以上、ダンジョン内での被害者は実質ノーカウントだ。
 そしてダンジョン外での被害者は聞いていない。よって交渉してみる価値はある、とワタルは判断したようだ。

『じゃあまず食ってやるから、おとなしくしろ』
「うん、なんで?! なんでまず食うのかな?!」
『とりあえず、食ってから、話をする』
「それ、話す相手お腹の中だよねぇ?! 死んじゃうって!」
『いや? いままで、ふたりほど、食われてから、話をしたぞ?』

 むしろこれまで2人も食われてから話ができる人間がいたのか。とワタルは驚いた。
 もっとも、リンが区別してないだけで片方は実際はゴーレムだが。

『そういうわけで、食う』
「わー! タンマタンマ! しかたない、ここはお弁当のサンドイッチを分けてあげようじゃないか、そっちで我慢してくれ」
『さんどいっち? なんだそれは』
「……ふっふっふ、このダンジョンの入り口前にある宿屋の朝ごはんなんだけどね、頼んでお昼に包んでもらったのさ! 白パンを使った実に美味しいサンドイッチでね、特に味の決め手はマヨネーズだね!」
『わかった、食ってやるから、よこせ』

 興味が引かれたのか、リンは前足をくいくいと招くように動かし、催促した。

「【収納】っと。……ほらこれ。お皿に置いて、ここに置くからね?」
『うむ』

 白い皿にサンドイッチを乗せて部屋の中央に置く。ワタルが離れた後、リンが近づきくんくんとサンドイッチの匂いをかいで――お行儀よく一口で皿ごと平らげた。

「ちょっ! その白いお皿、お気に入りだったんだけど……ま、まぁいいか、まだ4枚あるし。このダンジョンで産出した白いお皿……」
『ほう、この、さんどいっち、うまいな。つるつる、してて、がりがり、だ』
「……キュウリのことかな? えーと、まだあるけど、食べる?」
『よこせ』

 今度は皿を食べられてもいいように木の皿をつかうことにした。サンドイッチをとりだし、木の皿にのせて床に置く。

『おい。さっきのと、ちがうぞ! がるるる!』
「……そっちか! 美味しかったのって皿か! 皿の方か! くそうわかったよ、ほら」

 ワタルは、こんどは白い皿だけを置いた。
 ……宝箱から出た5枚セットのヤツだから、あと3枚はある。

『む? 今度は、上に載ってる、ヤツが、ないのか』
「そっちも奪う気?! いや、いいけどさ。ほら、こっちがサンドイッチね。こっちはお皿だから」

 ワタルがさらにサンドイッチを置くと、リンがまたぱくりと一口で、やはり皿ごと食べた。

『うむ。あぐ、もぐ。……がり、ごり……ふむ。さんどいっち、うまいな。けど、やっぱり、上のは、いらないな』
「チクショウ! 僕のお昼ご飯を返せ! あとその上のがサンドイッチで、下のは皿だってば!」
『くく、なかなか、見どころの、あるやつだ。いいだろう、話を、してやる。もうひとつ、よこせ』
「わぁいありがとう! こんちくしょー!」

 ちなみに、何気にワタルの勇者としてのユニークスキル、【超幸運:Lv1】が働いていたのだろう。なんでそうなったのかは分からないが、一緒に酒盛りして大盛り上がりと相成った。そのまま寝入ってしまったのだが、暖房が効いていたため風邪はひかなかった。

  *

「とまぁ、なんかそんなわけで意気投合しちゃいまして」
「おい勇者様? それで、モンスターを倒さず帰ってきたって?」

 勇者はのこのこと帰ってきた。リンは今なお無事にダンジョンの一室を守っている。
 というか酒臭いぞ、ちゃんと『浄化』しろよ。つーか、借金返すまで禁酒するんじゃなかったのかよ。

「いやいやいや、当然ただ帰ってきたわけじゃあないですよ! 約束を取り付けました!」
「約束?」
「遭遇しても、無抵抗で白い皿を差し出せば命はとらないそうです!」

 ドヤァ、と見事なドヤ顔を決める勇者ワタル。殴りたい。
 しかし約束自体は悪くない。リンのいう「約束」なら、リンが守れる以上は守るだろう。今回の場合はうっかり忘れたりしなければ大丈夫だ。
 ……白い皿の販売価格を少し上げておこう。買い取り価格は据え置きでいいか。

「あ、それと白くない皿でも半殺しで逃がしてくれるそうです!」
「えぇー……で、それ信用していいの?」
「いいと思いますよ?」
「根拠は?」
「勘……ですかね? いや、本来悪いモンスターじゃないと思うんですよ、あの狼?」

 たぶん言ってることは間違っていないだろうだけに、腹立たしい。しかしここは村長として、そして冒険者としてツッコミを入れなければいけないところだ。

「……それで、ダンジョンの奥に行きたい場合はどうしろって?」
「あっ」
「あっ、じゃねぇよこの馬鹿勇者!」
「いや、でもその! 春になったら出てくそうなので! それまで我慢ってことで!」

 こいつ、そこまで聞きこんでやがったか、なんてヤツだ。
 結局、なんだかんだあってリンは勇者に退治されなかった。依頼の成功報酬は払うわけにはいかないが、とりあえず有益な情報料ということで白い皿を5枚くれてやった。

 結局手持ちのは全部食われてしまったらしくやたら喜んでいたので、まぁよしとする。


(前回言った通り、モブ名は随時募集中です。それで、できれば活動報告の方でお願いします。活動報告のほうがあとから参照しやすいのです)
『このライトノベルがすごい!2018』ライトノベルBESTランキングWebアンケート、9月24日(日)23:59まで!
回答したら、抽選で20名様に全国共通図書カード(500円分)が当たるそうですよ?

https://questant.jp/q/konorano2018

よろしければ文庫1位のところに以下のように記入してみてください。

タイトル:絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで
著者名(レーベル名):鬼影スパナ(オーバーラップ文庫)
コメント(例):チキンタツタ美味しい! それはさておき一番好きなラノベです
+注意+
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