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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

聖女の本気

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ウーマ先輩

 黒い狼と聖女が揃ってダンジョンを歩く。途中、何度かゴーレムに襲撃を受けるが、聖女が難なく躱して反撃して片づけるか、黒い狼が聖女への攻撃を防いで、やはり聖女が片づけるかのどちらかだった。

 弓矢を持った多腕の変異種ゴーレムだけではなく、トゲ山の、亀のようなゴーレムが襲い掛かってくるが……聖女からしてみれば普通のゴーレムとさほど変わらず、何の問題もなかった。

 ゴーレムだけではなく、トラップもあった。
 落とし穴にかかった聖女が、黒い狼に襟を咥えられて助けられたり、扉を開けようとした黒い狼に剣がブスリと刺さることもあった。
 ちなみに剣の刺さった狼は、何の傷跡もなく平然としていた。
 【ヒーリング】をかけようか、と聖女が声をかけたが、『ダメージもなく、疲れてもいないのに、なぜだ?』と不思議そうに返された。
 ……完全に刺さって、貫通していたように見えたのだが。

 そうこうしているうちに、【マッピング】によりフロアの全貌が見えてくる。……もうそろそろ行ける道が無い。最後の手段だが、壁を壊してみようか、という話になった頃。
 ゴーレムが無防備に壁の前に座っているのを見つけた。一見普通のゴーレム……しかし、このゴーレムこそ、これまで見た中で一番の変異種だった。

『グルル、ぐる、がう』
『む? ……ぐるるる、ごぁーが、ぐるる』

 狼の言葉を喋るゴーレム。
 デタラメに吠え真似をしているのではなく、確かに黒い狼と会話をしていた。どちらにしても狼の言葉なので聖女にとって内容はさっぱりわからないが。
 しばらく唸るような会話をしたのち、狼が聖女に顔を向ける。

『がるる、ぐるるぅ?』
「え?」
『おっと、人語、だったな。えーと、名前、なんだ?』
「へ、あ、はい、アルカです」

 黒い狼に聞かれて、素直に答えてしまう聖女。

『紹介しよう。お前の先輩、ウーマだ。ウーマ、お前の後輩のアルカだ、仲良くしろ』
「へ? 先輩?」
『……ウーマだ。子分としては先輩だな。できればさっさと帰ってほしいんだがな』

 それは、人間の言葉だった。奇妙な声質で発せられたその音は、まぎれもなく自己紹介だった。心なしか村長の声にも似ている気がする。

「……あの、ゴーレム、ですよね?」
『ゴーレムが喋るのは意外か? リンだって喋っているんだ、不思議はないと思うがな』
「リン?」
『わたしの、名だ。親分と呼べ、ケ……ウーマ』

 そうか、黒い狼の名前はリンというのか。聖女はリンの名前を心に刻んだ。

『おい、アルカ。先輩からのお願いなんだが、今日は帰ってくれないか?』
「それはできません。私は……今日までしか時間が無いので」
『そうか、それは残念だ。……おい親分。これから俺はコイツを倒すから、邪魔しないでくれ』

 ゆっくりと、壁を背にしたまま立ち上がるゴーレムのウーマ。

「待ちなさい、どういう事です?」
『どうもこうも。お前はダンジョンを攻略しにきた冒険者、俺は……そこの親分と違ってダンジョンのモンスターだからな、当然だろう?』

 人間臭く、肩をすくめながらウーマは答えた。ゴーレムのくせに。しかしダンジョンのモンスターであれば、ダンジョンを守るために戦う。それは当然の事だった。

「知能のあるモンスターはダンジョンに縛られず、ダンジョンコアを破壊しても生き残るという研究成果があります。ウーマさんにとっては、その方が都合が良いのでは?」
『いや、ないな。俺はダンジョンコアを守るのが仕事だからな』

 ボス、ということか。しかしボスがボス部屋を離れて徘徊していていいのだろうか?

『気付いているだろうが、このフロアを抜けるには俺を殺すしかない――もっとも、俺は俺の手下を使って戦うけどな。……リン、これ以上手出ししないでくれよ? 本当なら弓矢やトラップでもうカタが付いていたんだぞ』
『ふむ、確かに。ウーマも、アルカも、弱いからな。じゃあ、二人とも、守ってやる。親分、だからな!』
「はい?」
『うん?』

 どうやらウーマもリンが言ってることが分からなかったようだ。聖女と一緒に首をかしげていた。

『……じゃあ、アルカを撃退するから邪魔しないでくれ』
『断る。守る』
『……じゃあこれ以上奥に行くのをやめさせてくれないか?』
『うん? ダメだ。約束したからな』

 やれやれ、とウーマはリンへ声をかけるのを諦め、聖女に向かって直接声をかける。

『行っても無駄だ、お目当てのモノはこの先には無いぞ。アレは片付けたしな』
「……嘘、ですね?」

 ぽつり、と聖女が呟いた。

『……嘘? その根拠はなんだ? 俺は嘘は言っていないぞ』
「【真実の瞳】という、嘘を判別するスキルがあるんですよ。今のあなた、真っ赤ですよ?」
『そうか。……じゃ、どうするんだ?』

 ガイン! と聖女の振るったバトルハンマーが、黒い尻尾に止められていた。
 ウーマは微動だにしなかった。よほど自信があるのか、リンが止めるのが分かっていたのか。

『……リン、邪魔するな』
『邪魔? 何がだ』
『久しぶりに言葉が通じなくなってるな。おいアルカ。退けないか? この先へは俺を倒さなければ進ませないぞ』
「親分? そういうことなので、良いですか?」
『しかたないな。子分同士で、そういうことなら、しかたない。ウーマ、食うぞ』

 直後、ばくっと、ウーマはリンに食べられた。……守るとは何だったのか。

「……守る、のでは?」
『大丈夫だ、いくらでも、生き返るからな、ウーマも』

 ガラガラ、とウーマの背後にあった壁が壊れる。そこには、先へ続く道があった。

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