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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

聖女の本気

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聖女と黒い狼

(今回も短いので、明日また投稿しますね)
 黒い狼の案内に、おとなしくついていく聖女アルカ。
 どうしてこうなったのかを考えるものの、答えは出そうになかった。
 だが、いつも単独で潜っていたので、こうしてダンジョンを迷わず先導されるというのも悪くない。テイマーにでもなった気分だった。

『む? ……ここは壁だったか?』

 訂正しよう、迷っていた。
 しかし次の瞬間、黒い狼はとんでもないことを言った。

『……壊すか? くんくん……うん、いけるな』
「えっ、壊せるんですか?」
『壊せるぞ。わたしは、強い、からな。壊して、やっても、いいぞ』

 ダンジョンの壁を破壊するとは、何て規格外なモンスターだと聖女は思った。
 しかし【トリィティ】の効果中は、なぜかダンジョンの壁が異様な速度で直ることを聖女は知っていた。それこそ、完全に壊したとしても0.1秒で直る程だ。巻き込まれて壁の中に閉じ込められ死んだこともある。あれで1日潰してしまったのは痛かった。

「いえ、良いです。道を探しましょう」
『そうか』

 来た道を戻る黒い狼。それについていこうとして、聖女はふと、風を切る音を耳にした。

「ッ!」

 反射的に首を傾け頭の位置をずらす。直後に、頭があった位置に矢が飛来した。
 そして走る痛み。1発目の影に隠れていたもう一発が聖女の肩に刺さっていた。
 狙撃だ。それもかなり高度な。矢の飛んできた方角を見ると、そこに両手に弓を装備したゴーレムが居た。いや、両手というのはおかしいか。なぜならそのゴーレムには手足が4本ずつあったから。背中から伸びる手が、矢に弓を同時につがえていた。

 が、即座に黒い狼がこれを捕食。2撃目が放たれることは無かった。

「くっ、ゴーレムのくせに……やりますね。■■、■■■■■■■■――【ヒーリング】」

 強引に矢を引き抜く。(やじり)についていた『反し』によって肉が抉られるが、気にするほどではない。それより軽い痺れがあったので傷口をさらに多めに抉り取り、毒消しを塗り込んでから自分に回復魔法をかける。抉られた血肉を癒しの魔力が補い、回復していく。
 そこに、黒い狼が戻ってくる。

『おい、子分を、撃ったから、食ったが、まずかったか?』
「……いえ、助かりました」
『ふむ、ならいい。いくぞ』

 そう言って何事も無かったかのように歩く黒い狼。
 ……その後ろを再びついていく聖女。何気に、守られたということに気が付いた。

 たいしたことは無い。ただ変異種のゴーレムに狙撃されただけ。それだけだ。
 毒を使うモンスターくらいいくらでもいるし、弓矢を使うモンスターも居る。手足が4本ずつあるモンスターだって居る。
 しかし狼がゴーレムを対処してくれなければ毒矢をもう1撃放たれて、対処も遅れただろう。

『む』

 狼の尻尾が動く。そして矢が地面に4本落ちた。
 新たな狙撃には聖女も気付いていた。が、今度は2倍になっていることまでは気付かなかった。今度は2体の変異種が居た。……変異種なのに、同じようなものが複数いるとは、そういう新種なのだろうか。命名するならヘカトンケイルゴーレムとかどうだろう。

『アレは、どうする?』
「……倒します」

 聖女は【収納】からバトルハンマーをとりだした。やはりゴーレムにはこれだろう。変異種と言えど、基本は変わらないはずだ。
 今度は狼は手出ししなかった。……聖女に後ろから襲い掛かるということもなかった。
 あっさりとゴーレムを片付け、黒い狼の元に戻る。

『では、行くか』
「……はい」

 聖女はいつも独りでダンジョンに潜っていた。そして、独りで死んで、独りで攻略していた。生き返られる仲間が居れば話は別だったのだが、あいにくそういう人物とは今まで会ったことが無い。探せばいないこともないのだろうが……
 なので、守ってもらうというのは初めてのコトだった。
 それが討伐対象の、敵であるはずの狼によるものだったのは意外だったが。

 ……胸が、とくんと鳴った気がする。
 先ほどの解毒が少し遅くて毒が少しだけ回ったのかもしれない。

『む? こっちも、壁か。……壊すか』
「いえ、【マッピング】がありますし、もう少し回り道を探しましょう。壊すのは最後の手段です」
『そうか。まぁいい。……ちゃんと、ついて来いよ、お前は、弱いんだから、な』
「……そう、ですね。ふふふ」

 道を探すようにフラフラ見つつ歩く黒い狼に、おとなしく、ついてく聖女。
 こうして誰かの後ろを付いて戦場を歩くというのも、初めてだ。
 仮に道案内を頼むとしても、先頭を歩くのは聖女だった。他人は聖女が守るべき、限りある命だったから。聖女が一番強かったから。

 それが今は、自分より強い黒い狼に『弱いからちゃんとついてこい』と守られてしまっている。

 聖女は、かつてない新鮮な気持ちで、ダンジョンを歩く。
 もう少し時間をかけて攻略してもいいかもしれない、などと思いつつ。
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