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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

聖女の本気

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聖女の葛藤

「……あれも避けたのか?」
『いや、直撃した。危なかった。少し、体が、削られた』

 しかし、あの光は強すぎたのが逆に良かったそうだ。ジクジクと痛むようにではなく、一瞬で光に触れた所を消滅させてしまった。痛みを感じさせる間も無く、余波で周囲の体を抉り取りつつも、それ以上傷が広がることは無かった。
 あとは、再生すれば元通り、ってわけだ。もしリンが狼の魔物だったらこうはいかなかっただろう……って、スライムってコアとかあるんじゃないの? リン、どこにコアあるんだよ。頭じゃなかったみたいだけど……好きなところに移動できるとか? スライムだしそれもアリだな。

『というわけでケーマ。食うぞ』
「おかわりも要るか? 体が損傷したってんならたくさん食べたほうが良いだろう。普通のゴーレムでいいなら用意するぞ」
『そうだな、よこせ』

 俺は有り余る土を使ってゴーレムを量産し、リンの居る部屋に送り込んだ。DPが使えなくてもゴーレムを使ってダンジョンを掘り進めることはできるから、土と石ならいくらでもある。
 ダンジョンに設置した魔法陣から出てくるゴーレムも産出ペースが落ちてるし、どんどん作らないとな、ゴーレムも。

 リンは、ゴーレムを流れるように食べていく。まるでわんこそばだ。
 狼なだけに、わんこ……とかいっても異世界じゃ通じないよな。うん、何でもない。

『ふぅ、少し、落ち着いた』
「おう、ならよかった。あと1日、頼むぞ」
『ん』

 そして最後に俺の操るメッセンジャーゴーレムをもぐもぐ食べるリン。
 頼もしいヤツだ。あと1日、なんとかやり過ごせばこちらの勝ちだ。

 とはいえ、今日の攻防で聖女はすっかり心折れた気もする。
 ……もしかしたら明日はもう、なんて、そういう事もあり得るな?

  *

 聖女はこめかみを押さえる。
 どうすればいいのか。胴体に大穴を開けても、頭を吹き飛ばしてもダメだった。毒も効かないし……全身を一度に消し飛ばせれば、なんとか、なるだろうか。
 ただしそれにはあの黒い狼が協力してくれないとまず無理だろう。それほどに実力の差は圧倒的だった。今日当たったのは本当に偶然だった。

 ……とりあえず温泉に入ることにした。この宿にいられる時間はもう殆ど無い。なら逆に満喫するしかない。依頼を達成できず、ダンジョンの攻略もできていないのは心苦しいが……まぁ今は置いておこう。

 湯浴み着を着て温泉に入る。大きいお風呂というのは思っていたよりも良いものだ。贅沢で心が豊かになる。今日は温泉にこの宿の従業員が居た。イチカという、パヴェーラ訛りのある奴隷だ。

「あ、聖女様。……お疲れですね?」
「……ええ、分かりますか」
「そりゃまぁ。肩でもおもみしましょうか?」
「いえ、部屋にマッサージ椅子がありますし」

 イチカは、ちゃぷちゃぷとお湯をかき分け、聖女に近寄る。
 聖女とイチカは遊戯室で一緒にネズミレースに興じる仲で、話すことも多い。

「今日のレースにはビビビが出るんやって。どや、大穴狙いで一発」
「……ふむ、それも良いかもしれませんね」

 運か、運ならもうあの黒い狼の頭に【ジャッジメントレイ】を当てたことで使い切ってしまった気がする。ならいっそ当たらないビビビに賭けてみても同じことだろう。

「ん? なんや、悩みでもあるん? ウチでよかったら聞きますよ?」
「ええ、いやまぁ、その。……話すようなことではないですよ」
「まぁまぁ。話すだけでも楽になる事ありますし?」
「……まぁ、イチカになら話しても良いかもしれません」

 そして、聖女は「村長様には内緒ですよ?」と前置きした上で、イチカに悩みを相談した。多少ぼかしたが、国に帰らなければならない事、黒い狼が居て、強すぎて勝てない事。
 あとついでに最近従者が聖女の尻をいやらしい目で見ている気がすること。

「……従者さんも男なんやね……! ってか、聖女様は教義とかで男ダメとかないん?」
「それは問題ないです。でもどちらかといえば村長様の方が情熱的で良いですね。あれほどのアプローチとプレゼント……ふふふ、愛を、愛を感じます!」

 手に入りにくい物品を手に入れて融通してくれたというのがプレゼントなのであって、そのプレゼントが有料かどうかというのは、聖女にとって些細な問題らしい。

「まって? それはアカンよ? うん、アカン。村長はもうパートナーいるから兼ね合いっちゅーもんもあるしな?」
「教義的には問題ありませんよ。人は、甲斐性さえあれば何人のパートナーを囲っても良いのです。『産めよ増やせよ地に満ちよ、そしてすべてを支配せよ』……それが光神様の教えですから。そして私は聖女なので甲斐性があります、村長様のパートナーごと囲えば良いのです」
「光神教、半端()ないな!? しかも聖女様が囲う方かい!」
「当たり前でしょう? 私は聖女ですから」

 ふんす、と鼻を鳴らす聖女。聖女って一体……とイチカは思う。答えは目の前の存在がまさにそうなわけだが。

「ま、まぁそれはさておき、黒い狼なぁ、もう勝てへんなら逃げていいんちゃう? 別に依頼失敗したからって死ぬわけじゃなし」
「名声は落ちますけどね。それに、聖女が敵わないモンスターが巣食ったダンジョンという危険なものを村長様の近くに置いておくのは……」
「え、まって聖女さん? 本気? 本気で村長狙ってるん?」
「狙うかどうかはさておき、あれほど好意を向けられれば悪い気はしませんよ」
「ふーん……しっかし、勝てへんのやろー?」
「……」

 どうしたものか、と聖女は頭に手を当てて考える。

「諦めぇや、そういうのも大事やで」
「そうは言いますけどね……」
「それにここだけの話、このダンジョンって月一くらいで勇者様来るんよ、だから聖女様が頑張らなくても大丈夫やで?」
「……勇者様が? 帝国の勇者様が、ですか?」

 それを聞いて、聖女はふむ、と頷いた。

「……なるほど、私が勝てなくても、と、少し気が楽になりました。まぁ、最後までやれるだけやってみますが」
「そかー」

 聖女の悩みは、多少マシになった。
 温泉に入ってよかった、と聖女は思った。

 そして、
 帝国の勇者が攻略しようとしているダンジョンであれば……先にこちらが攻略してしまって、後々聖王国内に残っている未踏破ダンジョンを紹介するのも良いだろう、と考えていた。

 尚、その日のネズミレースではビビビに大金をかけ、見事にスッた。

( 諦めよ……!諦めろお前!どうしてそこで頑張るんだそこで!
周りのこと見てみろよ!誰もお前のこと応援してないから!
だからこそ、Give up!
 と、感想欄で聖女様への熱いエールをいただきました。これには思わずニッコリです)
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