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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

聖女

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聖女(3)



 その日も、聖女アルカはダンジョンに潜っていった。

 聖女アルカは、単体(ソロ)でのダンジョンの攻略に特化した存在である。
 単体の戦力としても優秀なのは当然だが、【復活】という超レアスキルを持ち、死んでも生き返る。死ぬまでの経験を引き継いで復活するため、いずれはダンジョンを攻略できるのだ。

 死んでも生き返るので、ただの兵士には到底使用出来ない高価なスキルスクロールをいくつも使い、数多くのスキルを身につけている。特に、ダンジョン攻略に向いているスキルが多い。
 【収納】のスキルにより、水や食料の心配をすることなくダンジョンに潜ることができる。【ヒーリング】により、多少の傷ならすぐ治せる。他にも【ダンジョン罠感知】というスキルなんかもあった。これはダンジョンの罠を感知することができるスキルだ。

 ただ、おかしなことにこのダンジョンでは聖女のもつ【ダンジョン罠感知】のスキルが殆ど機能しなかった。
 なぜかは分からない。もちろん光神様の加護であるスキルだが万能というわけではなく、人によって仕掛けられた罠には反応しないなど不完全な部分もある。……だが、それでも普段なら10個あるうちの10個が分かるのに、このダンジョンでは10個あるうちの3個程度しか感知できないといった調子だ。
 最近はこのスキルに頼ってダンジョンに潜っていたのだが、あまりに使い物にならなかったので、途中からスキルを使用しない斥候技能による罠探索に切り替えた。……手作業での罠探索は久しぶりということもあり、当初思っていたより多くの罠で引っかかってしまい、探索が難航していた。

 もっとも、1度ひっかかった罠は【マッピング】のスキルによって記録しているので、2度引っかかることは無い。
 迷路だって一度通れば道は完全に記録される。それに元々ギルドと交渉してマップを貰っていたため、比較的容易に攻略が進んでいた。
 迷宮エリアである第2、第3階層を抜ける聖女。ここまで何度死に戻りしたことか……と振り返る。

「……もっと奥へ行ってみますか」

 迷宮エリアの次は特に何もなかった。以前はここに謎解きの扉があったらしい。
 特に罠も見当たらないので、さらに奥へ潜っていく。聖女が引き返すことは、無い。もしあるとすればダンジョンを攻略して歩いて帰る余裕があった時のみだ。

 第4階層を抜けると、そこには螺旋階段がある。罠は……スキルによる感知はできないが……これまでの傾向からして、あるだろう。慎重に螺旋階段を下りていく――壁が突き出て、中央の吹き抜けに押し出されそうになる。慌てて階段を駆け下りた。
 いや、訂正しよう。階段がパカっと折れて足を踏み外し、落ちた。

「おぐふっ?! ……、■■、■■■■■■――【ヒーリング】……ッ」

 衝撃で骨が何本か折れたが、まだ死んでいない。回復魔法で折れた骨を治す。回復手段が無ければ別途自決する必要があったところだ。……負傷も治ったところで探索を再開する。

 螺旋階段を降りきった(落ち切った?)先は、部屋になっていた。扉を開けた瞬間、不気味な生温かい空気がぞわりと聖女の肌を撫でた。寒くはないのに、殺気を感じて鳥肌が立つ。みると、黒い狼が居た。

 黒い狼が飛びかかってくる姿が見えた一瞬後には、死んでいた。


「くはぁ!」
「お目覚めですか、アルカ様! お体に異常は……」
「……ないわ。……ふぅ、死にましたか」

 聖女は、宿の一室で目が覚めた。上半身を食いちぎられ、飲み込まれたところで意識が途絶えた。
 ぐちゃりと自分の体を磨り潰される感覚。常人なら1度でも味わいたくないであろう激痛と不快感。
 しかし聖女は平然としていた。死ぬのも、慣れたものだ。
 聖女が聖女足りえるのも、死に対する抵抗の無さと、何度も死を味わっても壊れない精神の強さゆえだろう。
 いや、逆にもう壊れきっているのかもしれないが……
 少なくとも他人の目から見て、聖女は普通に会話ができ、話が通じる人間に見えるから問題ない。

「ターゲット……依頼の方の、にやられたわ」
「なるほど……依頼は、お受けになられるのですか?」
「そうね、もう少し様子をみましょう。まぁ、こちらも毒を食らわせてやったけど……効いたかは分からないし」

 聖女は様々な毒を身に着けていた。故に、毒に耐性の無いモンスターであれば聖女が食われた時点で勝利だ。
 この毒はいざという時は身体ごと食わせて相手を毒殺するためのものでもあり、身動きが取れない状況に陥った時の自決用でもあった。服の他、体内にもいくつか仕込んでいる。……今回はしていないが、別のダンジョンに潜る際、帰る時間に合わせた遅効性の毒を飲んでいくことすらあった。

「なんにせよ、明日また見てきます。これで決まってくれていれば、楽なのですけど」
「そうであれば嬉しいのですが」

 従者のセントは、寂しそうな笑顔で聖女の言葉に頷いた。

  *

 リンに齧られた聖女が光の粒になって消え、宿の一室で復活するのを確認した。
 とりあえず今日のところはこれで大丈夫だろう。1日あたりのDPはまた225になっていた。……上半身丸ごと食われたと思うんだけど、そこは関係ないのか。

「へぇ、あの狼を螺旋階段エリアのすぐ先に配置したのね」
「ああ。聖女に罠は2度効かない……なら、単純にもっと強い魔物を配置して防衛させればいい。奇襲ではなく正面から圧倒できるなら尚いい」

 もっとも、これが逆の立場なら『何このクソゲー』になるんだけどな。リンをあそこまで誘導するのにすごく苦労したんだ、少しくらいいいじゃないか。

『おぉいケーマ、これで、ストレスは、消えたか?』

 リンが俺を呼んで吠えていた。
 ……よしよし、甘いシロップを詰めたメッセンジャーゴーレムを向かわせようじゃないか。砂糖水の味付けはリンも好きみたいだしな。

 え? 聖女は腹にはたまらなかったけど、少しピリっとしつつまったりとしてて中々美味かったって?
 いいオヤツってことか。また来たらその調子で食ってくれていいぞ。

(最近あんまり見直しができてないので、ミスってたらごめんね。感想とかで教えてくれるとありがたいです)
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