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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

聖女

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進展

(※下ネタのため、食事中の方は注意)
 聖女だから復活するのか、復活するから聖女なのか。それは分からないが、とにかくこの聖女様は復活する。その事実が判明してから3日経過したが、その間、聖女様は毎日1回ダンジョン攻略に挑み、死に戻りし、スィートに連泊していた。
 1日当たりのDPは死んだ直後は1割減、その後しばらくすると250DPに戻っている。死んだときは1500程度のDPが入ってくる。どういう仕組みなのかさっぱりわからんけど、不死鳥のフェニと同じ感じのエフェクトだし、そういうスキルなんだろうか。
 というかBランク冒険者のくせに簡単なトラップで死に過ぎだ。同じトラップには2度引っかからないようだが……

「世界は、光神様によって管理されています。この光神様の管理を邪魔する悪魔が作った物、それがダンジョンなのです。なので、ダンジョンは破壊しなければならないのです。どうです、ダンジョンコアの破壊権を渡して下さいますね?」
「ダメです」

 で、回復待ちの間に暇になったのか、聖女様が訪問してきた。
 そのたびに俺が対応しなきゃいけないのが非常に煩わしい。ああ、こいつは俺にとって最悪の敵だな、間違いない。尚、副村長経由で声をかけてから訪問してくれ、という事にしているので、副村長のウォズマも道連れだ。

「はぁ……私がこれほど説いているというのに……」
「ダンジョンは国の管理なので。ああそうだ、冒険者ギルドのギルド長からも許可を得てくださいね」
「……そんなご無体な。ダンジョンはこの村にあるのですから、村長であるあなたの物ですよ」

 違うっつってんだろ。確かに俺のだけどさ。話を逸らすために、別の話題を振ることにした。

「そういえば従者の方はご一緒ではないのですね。なぜですか?」
「彼は私と一緒に居ない方が良いのです。なぜと言われれば、安全のためですね」
「おや、いくら聖女様とはいえ……女性が1人という方が安全なのですか?」
「ええ、彼は簡易祭壇を持っていますから。ご存じのとおり、祭壇があれば聖女は何度も復活できるのです」

 ご存じのとおり、って。聖王国では有名な事なのだろうか。
 というか祭壇とやらが安全地帯にあることで、聖女はそこで安全に復活できる。そういう代物なのか。

「初耳ですな。ウォズマ、知ってたか?」
「いえ、私も初耳です。……聖女様、今の発言は、聞かなかったことにいたしましょう」
「……あら、失礼。聖王国では常識なのですけどね、私のことは」

 知らんがな。とはいえあっさりと不死の秘密を洩らしたな。これは逆に探られているのだろうか?
 それとも聖王国では本当に一般的に常識で、本気のうっかりなのか……これまでの聖女様を見てるとうっかりにみえるけど、もしこれが演技だとしたら、という可能性が拭えない。さもなくばあまりにもアホすぎる。
 頑なに俺から許可を得ようとしているのも、俺がダンジョンマスターということを見抜いているとか……うん、怖いな。可能性が0とは言えないのが怖い。
 が、本気で聖女様がアホの子だとしたらこの警戒はまったくの空回りという事で……くそ、なんていやらしい敵なんだ。

 しかも、ことあるたびに直接なり遠まわしなりで『ダンジョンコアの破壊権ください』と言ってくるから非常に面倒くさくて神経使う。副村長のウォズマは俺が話を振らないと一切話に加わろうとしない。分かち合おうよ、この苦労をさ? 10割くらい任せたい。

 その後、言質を取られないように気を付けつつ1時間ほど雑談して聖女様は帰って行った。
 ……俺の睡眠時間がその分削れたわけだ。聖女様相手にはトラップの殺意マシマシでいくか、どうせ復活するし。


  *

 さて、そんな聖女はさておき、黒い狼のリンだ。メッセンジャーゴーレムに『味付け』をして食べられること数回、今日はなんだかんだで一番弱点になりそうなものを再度試してみることにした。

「おーい、リン。遊びに来たぞ」
『……くあぁふ、なんだ、ケーマじゃないか。またきたのか、今日は、どんな味付けだ? かじっていいか』
「おう、じゃあとりあえず右腕な」

 俺はゴーレムの右腕を差し出す。がぶ、とリンはそれを食いちぎった。もはやそこに遠慮も躊躇も何もない。毒も盛り放題だな、実際盛っててあんまり通用してないけど。
 がりがりもぐもぐと噛み砕いて食べていると、リンは顔を顰めてぺっぺっとゴーレムの腕の欠片を吐きだした。そして、今日の味付けとして腕の中にたっぷり詰めていた、塩も。

『むが?! ぺっぺっ!』
「お? どうしたリン。不味かったか?」
『最悪だ! よくもこんな、マズイ、味付けができるな……今日は、もう帰っていいぞ』
「そんなこと言わずにもっと話そうぜ、こちとら最近変な奴がきてストレス溜まってるんだよ」
『そ、そうか……ストレス、たまってるから、こんな変な味に、なるんだな……ううむ』

 塩。そう、リンの弱点は塩だった。塩酸とかの方が効きそうなものだが、塩の方がマズいらしい。むしろ塩酸はピリピリするけど結構イケると言っていた。
 塩だけ、っていうのが聖なるモノという属性でもついてるのだろうか。清めの塩とかそんな感じで。それに加えてナメクジに塩かけた時のように水分が奪われている、というのもあるんだろうか。
 なんにせよ、色々試した中で唯一リンが『これはマズすぎて食べたくない』とはっきり言ったのが、塩だった。体に詰めたのを丸ごと食わせた時はのたうち回って吐いていたし、今日に至っては片腕を食べさせただけでこれだもんな。
 よし、対リン用の装備として岩塩入り鉄装備を大量生産しておこう。

『なぁケーマ。おまえは、もう、わたしの子分といっても、いいくらいだと、思うんだ。そうだろ?』
「ん? そうなのか?」
『そうだ。お前は、わたしに、食い物を、献上してる。だから、わたしの、子分だ』

 なるほど、言われてみれば毎日食べられに行っているもんな。
 あれ、これまさか……餌付け成功したのか?

『しかも、マズイとはいえ、飽きないように、味付けを工夫する、いいやつだ。おまえは』
「そう言われると工夫した甲斐があったよ」
『だから、お前がこれ以上、マズイ味に、ならないように……ストレスの、解消を、手伝ってやる』
「本当か! そりゃありがたい」

 もっとも、今のストレスの半分はリンが居るせいなんだけどな。
 ……この部屋から移動してもらうように頼んでみるか。できるだけ穏便に移動してもらうような言い訳なら考えている。今こそその言い訳を使う時だ!

「あー、実はな、リンがこの部屋にいるのも、結構ストレスなんだ」
『む?! わたしの、せいだというのか?!』
「そうだ。実はここ……トイレでな? リンがずっと居ると、用が足せなくて……」
『ちょっとまて、こ、ここは、トイレ、だったのか? それは……ええと、ゴーレムが、トイレ使うのか?』

 おお、よかった。リン本人はトイレとか使ってる気配が無かったから、理解できない可能性もあったんだが。

「そうだ。……恥ずかしいが、実際に使うところ、見せようか」
『ええっ!? ちょ、ちょっとまて、そういうの、は、見せるもんじゃ、ないだろう!』
「いやいや、だってゴーレムなのにトイレが必要だなんて、実際見ないと信じられないだろ? ちょっとまってろ、今出すから……フンッ!」

 俺はメッセンジャーゴーレムをしゃがませ、リンから見えない方に光の魔道具を送り込む。
 そしてそのまま、ごろん、と光るそれを床に落としてみせた。

「ふぅ、スッキリした。んで、これをこうだ」
『なぁッ?!』

 さらに光の魔道具を拾ってダミーコアにあてがい、今度は回収する。……リンからしてみれば、ゴーレムの排泄物がダミーコアに吸い込まれていったように見えたことだろう。
 どうだ、汚いだろ、だから絶対これは喰うんじゃないぞ? という牽制だ。

 と、マスタールームで光る魔道具を回収したロクコから通信が入った。

『あのさぁケーマ……いくらダミーコアとはいえ、ダンジョンコアをその扱いするのは最悪な気分なんだけど』
「しかたないだろ、我慢しろ」

 俺自身、これはひどいと思ってるんだから。そんで、ひどい物じゃないと効果が無いんだ。

『……わ、わかった。この部屋からは、出よう……しかしケーマ、おまえの、その、クソは、光って、暖かいのか』
「そうだな、しかもくっつくぞ。なんだ気に入ったのか? ひとつやろうか? さすがに人前でするのは緊張したからな、まだ腹の中に残ってるのが……」
『いや、いい。いらん。……だが、ううむ。この部屋くらいの、暖かい部屋は、ないか?』
「ん? それくらいでいいなら別の部屋を同じくらいに暖かくしておこう。ちょっとまってろ」
『ま、まて! 部屋にクソを、ぬりたくるとかは、しない、よな?!』

 気持ち悪いことを言うな。まぁ心配な気持ちは分かるけど。
 でもあれだ、お前、丸呑みしてるってことは排泄物もまとめて食ってるってことだからな? 言わないでおいてやるけど。

「しない。温度を弄るだけだ。まかせとけ」
『そうか、ならいい』

 ……リンの誘導に成功した。
 俺は思わずメッセンジャーゴーレムごしにガッツポーズをとった。


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