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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

村、そして侵入者

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改めて接触


 黒い狼こと、リンが起きた頃合いを見計らってニクがゴーレムを操る。
 モニターでリンの様子を窺うため、レイがニクに付いてメニューを開いていた。
 そして今回の俺はマスタールームで待機し、何かあれば、特に何もしない係だ。

 ……何かあった時に引っ張り込むのは引き続きロクコ担当だ。俺が担当しないのはちゃんと訳がある。
 ロクコは平然とモンスターでもないニクたち奴隷組をマスタールームへ回収できるが、これは『奴隷はアイテムだからできる』と俺が思い込ませたからだ。それで実際できてるから元々システム上はできるんだろうが……ハッキリ言って仕様の抜け穴だ。ダンジョンが成長すれば解禁される機能なのかもしれない。

 で、俺はニクやイチカのことをちゃんとアイテム扱いできてるかと言われると……微妙だ。いや実際ロクコには内緒だけど、できる気がしない。
 そんな状態でいざってときに回収をミスったら危ない。ミスるとこをロクコに見せてやっぱりできないじゃないってなるのもアウト。それが理由だ。

 つまり俺の仕事は何もない。見てるだけ。
 しいて言えば準備で黒いメッセンジャーゴーレムと餌になりそうな食料を用意したくらいだ。十分働いたよな?

「もしもし」

 早速ニクがメッセンジャーゴーレムを使って話しかけた。リンは気だるそうにゴーレムを見て、直後、驚きに赤い目を剥いた。

『なッ、きさまは、けーま!? なぜだ、くったはず!』

 ああ、形状的には全く同じハニワシリーズだもんね。色違いなだけじゃ同じに見えるか。

『なぜだ、なぜ生きている、けーま!』
「……それは私のご主人様です」
『ほう、そうか。よく見れば黒い。違うやつか。だが、あいつはもう、わたしが、食った。なら、お前は、わたしの、子分だ』
「……いえ? ちがいますよ?」

 強い=偉い、うん、野生の理論だな。ニクには通じないが。

『……ちがうのか。死んだやつに、忠誠を、誓うとは。あっぱれだ』
「はい、私は死んでもご主人様のものです」
『そうか。それで、なんの用だ』

 リンの問いかけに、ニクは一呼吸おいて答える。……ん? 今ちょっとニュアンスがズレていたような?

「私の子分になりなさい」
『断る! わたしに、主は、いらない!』

 即答で拒否された。まぁそりゃそうだ。で、ここからが交渉だな。ニク操る黒メッセンジャーゴーレムはハンバーガーを取り出した。

「今なら美味しいハンバーガーがついてきますよ?」
『エサはいらない! おまえも、食ってやろう!』
「お腹が空いてないのですか。では、飴玉はいかがですか? 甘くて、美味しいですよ」
『いらないといっている! がるるる!』

 飴玉を取り出すが、リンは激昂状態になっている。
 つーか、あれ? これ、話が噛みあってるようでやっぱりズレてないか? おいニク。リンさん怒ってるぞ。

「飴玉はいらなくて、子分になってくれるんですか?」
『笑止! わたしを、子分にしたければ、わたしを、倒してみろ! そしたら、考えてやる』
「子分になってくれるんですね、ありがとうございます。飴玉です、どうぞ」
『ならない! いらない! お前、食う!』

 そして黒メッセンジャーゴーレムはぱっくんちょされた。同時にロクコがニクとレイを回収し、マスタールームに引っ張り込む。おかえり。

「……じゃれてきたのですが、食べられてしまいました。次は大丈夫です」
「なぁニク。……お前、本当になんとなくでしか狼の言葉分かってないよな?」
「? はい、そうですが」

 堂々と言い切られてしまった。……うん、そうだね、言葉通りだったよ。謙遜であってほしかった。

「……話が噛みあって無かったぞ。というか怒ってた。ものすごく」
「?! だ、だめでしたか?! てっきり照れ隠しかと……」
「ダメだったなぁ。まぁ倒したら子分になるのを考えてくれるって言ってたから、一歩前進したけど」
「も、申し訳ございません……」

 まぁいいか。当初の予定通り俺が……面倒くさいが……交渉するか。……とても面倒くさいが。はぁ。
 で、こんなこともあろうかとちゃんと黒じゃないメッセンジャーゴーレムも用意してある。

「後は任せろ」

 俺はニクの頭をぽんっと撫でて、交渉の準備を始めた。


  *

「おーい、リン。起きてるよな? 話があるんだけど」
『……また、あたらしいのが?!』

 俺がリンに話しかけると、リンは赤い目でメッセンジャーゴーレムを見る。

「はっはっは、俺は桂馬だ。どうだ、ここの住み心地は?」
『けーま、だと! なぜ生きている?! 食っただろ!』
「勘違いするな。俺はあれくらいじゃ死なん。なんならまた食うか?」
『おかしな、ゴーレムだ……確実に、食ったはず、なのに』

 おう。食われたけどな、ゴーレムは。中の人が無事だっただけだ。

『もしかして、さっきの黒いのも、生きてるのか』
「ほう、どうしてだ?」
『食ったのに、あんまり、美味くなかった。ケーマ、お前と同じだ。普通の、ゴーレムくらいの、味だった』

 ……ゴーレムに味の違いがあるのか? いちご味ゴーレムとか。

『けーまは、ユニークモンスター、だから、美味いか、珍しい味が、するかと思ってた』
「元が土なんだからそうそう変わらないだろ」
『ユニークモンスターは、美味いんだ』

 根本的に味覚が別なのかな、普通は土食わないし。それを考えると日本のごはんとかで餌付けは難しいかな?
 俺は餌付けに使えないかと持ってきたドッグフードを取り出した。

「一応こんなもん持ってきたんだが、食うか?」
『なんだ、それは?』
「犬のエサだ。食いたくないなら別に良い」
『いらん』

 そうか、いらないか。……どうしよこれ。ニクに食わすわけにもいかないし。

「で、少し聞いたんだけど、リンを倒せば子分になってくれるんだって?」
『やる気か?』
「ああ、今すぐってわけじゃないけどな。リンが子分になってくれるっていうなら挑むぞ?」
『いいだろう、食ってやる』

 そういうとリンはガァと牙をむいてきた。
 今じゃないって言ってんだろ!

『いただきます!』
「……わかった、また来るよ」

 どうしようかこいつ。ホント話聞いてくれないんだけど。
 マスタールームに回収されつつ、俺はどうしたもんか考えていた。



(あ、冬の童話祭2016参加してみました。わりと童話ではないけど童話ランキング日間1位とったよ!)
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