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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

村、そして侵入者

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私にいいアイディアがある。

 寝て起きたら、ロクコが俺の顔を覗き込んでいた。

「……なんで寝たの?」
「え? いや、その」
「セーザ」
「え? せ、正座?」
「うん、セーザ。して。ね?」

 そして俺はなぜか正座させられた。なぜだ。
 いいじゃないか寝ても。こちとら人間なんだぞ、睡眠が必要なんだよ。

「で、なんで寝たの? 私がピンチなのに」
「……それは、生物学的な質問かな? 人間は、寝ないと死んじゃうんだ」
「ひと晩くらいは寝なくても大丈夫でしょ、直前まで寝てたわけだし」

 いや、まぁそれもそうなんだけどね。けどよく考えてほしい。寝起きだったんだぞ。寝起きだったということは、凄く眠いのこらえて頑張ったんだ。イッテツを起こして相談したり、よくやったと思うよ俺。マジで。
 戦闘で役に立てなかった分頑張ったよ?

「私のために起きててくれてもいいじゃないの」
「ちがうぞロクコ。俺は寝ないと本来のスペックが発揮できない、つまり、全力を出すために寝たんだ」
「……ほんとに?」
「ホントホント。俺は寝ながらモノを考えるからな、敵への対処も寝ながら考えてたんだ」
「ふーん。で、どう対処するの?」

 ロクコが疑わしげに俺を見る。しゃがんで、正座している俺のさらに下から抉るように。
 さてどうするかな。……あ、そういえばイッテツが「飼われて調教されていたスライム」だっつってたな。ってことは、テイム……飼いならすことができるってことなんじゃないか? よし、この線で言い訳してみよう。

「イッテツに聞いた話なんだが、テイムというのがあるらしいな。……あの黒い狼を飼いならせば、ダンジョンの凄い戦力になるんじゃないか? と考えていた」
「なるほど、確かにアレを仲間にできれば強力よね。で、方法は?」
「それなんだ。まず、あの狼は、狼の姿に擬態したスライムという可能性が強い。それも、前に飼われていた、な」
「うん、それで?」

 こちらの言い分を聞く気になってくれたようだ。俺はさらに続ける。

「まず相手を知らなきゃならん。話しかけてみる」
「……誰が、どうやって?」

 ダンジョンの機能をつかって直接声をかけられたらよかったんだが、あいにくダンジョン内の音声を聞く機能はあっても好きな場所に届ける機能は無かった。あれば今回のような緊急事態での招集も便利なんだけどな。モンスター娘たちはさておき、ニクとイチカにはダンジョンのメニュー機能から通信することができないから。
 だがそこで俺は先日丁度音声を再生するゴーレムを作ったことを思い出した。

「……ゴーレムに伝えさせる。大丈夫そうなら、ある程度近づいて【エアボイス】でも使ってみるか? 人間に育てられていたとしたら、人の言葉を理解できる知能があると思う」

 ついでに風魔法にある【エアボイス】を習得していたことも思い出した。だいぶ前に。イチカ買いに行く前くらいに。
 結局魔法って【クリエイトゴーレム】しか使わないんだよな、ホント便利すぎる。すっかりゴーレムエキスパートだぜ。……今回はそれが裏目に出たっぽいけど。

「ふぅん、一応ちゃんと考えてくれてたんだ」
「当たり前だ。俺を誰だと思っている? お前のパートナーのダンジョンマスターだぞ」
「そうよね、私のパートナーだもんね、疑ってゴメンね?」

 そう言ってロクコは自分の薬指に光る赤い指輪をちらっと見て、ニヘっと笑った。
 今のうちに話しかけるのに失敗した時の対処も考えとこ。……とりあえずボス部屋をマグマの海にして、コアルームごと溶岩の海に沈めたらいいんじゃないかな。
 あ、これ良さげだわ。

「……やっぱり話しながらだといい案がまとまるな……」
「ん? なんか言った?」
「いや、なんでもない。あ、もう足くずしていい? 二度寝したいんだけど」
「……ケーマ? 今このダンジョン、ボス部屋まで攻略される襲撃受けててピンチなのよね? 私怖くて夜も眠れないんだけど?」

 もう30分くらい正座させられてしまった。しかも「そのままじゃ罰になりそうにないわね」と、ふとももの上に座られた。座椅子になった気分だった。かといってそれ以上何をするでもなく座ってるだけだった。さすがに話しかけるのも何かなあと思いつつ、30分無言だったので、仕方なく「なぁロクコ?」と声をかけたら「こ、このくらいで勘弁してあげるわッ」ってダッシュで部屋を出て行った。

 ロクコは何がしたかったんだ。
 ……足、超しびれた。

 あ、罰になったな。なんだ、当初の宣言通りだったじゃないか。

  *

 ロクコの座椅子刑から解放されたところで二度寝、というわけにもいかないので、とりあえずゴーレムを補充することにした。
 3人娘の愛用のイロモノゴーレムは簡単に呪文一発でできるからいいとして、ハニワゴーレムは特にパーツが多くて時間がかかる。まったく誰だこんなにパーツ増やした奴、プラモデルじゃねーんだぞ。

 とりあえず壊れかけた石製のハニワゴーレムを修理し、剣と盾を鉄製にグレードアップ。
 さらに全壊して食われたアイアンハニワゴーレムを1から作り直した。
 こいつらにはこれといって機能の追加はしてない。
 そして今ふと思ったんだけど、ハニワゴーレムっていうなら土から作るクレイゴーレムのほうがハニワっぽいよな?

 というわけで、鎧とかの無いシンプルな土ハニワゴーレムを息抜きに作ってみた。
 作ったはいいが、使い道が無い……

 ……なので、メッセンジャーゴーレムとして使うことにした。
 要は単なる糸電話ゴーレムを持たせたゴーレムだ。
 まず、ゴーレムを相手のところまで走らせて、手元の糸電話ゴーレムに向かって俺が話しかけると、相手側で俺の声が聞こえるといった寸法だ。
 声の受け取りはメニューの監視機能からいけるから声を届けられればいい。
 もっとも、今回の相手は狼にしろスライムにしろ喋れないだろうから関係ない……
 いや、サラマンダーが喋ってるんだから喋るかもしれないな。

 尚、糸電話ゴーレムは通常の糸電話と異なり、途中で通路の角に突っかかっていようが扉に糸が挟まれていようがピンと糸がはっていなかろうがが声が届くっていう優れモノだ。
 ポイントは糸電話1つで1体のゴーレムだということ。
 『受信用紙コップで受けた振動を再生用紙コップで再現しろ』という命令をインプットすることで声を届けることができる。右手を動かされたら左手を同じように動かせ、と同じ感じの命令だな。
 ダンジョン中にゴーレム電話回線引きたくなるレベルの便利さだ。ダンジョンマスターやめてゴーレムマスター名乗ろうかな?

 っていかんいかん。今回それで黒い狼に完膚なきまでにやられたんじゃないか。

 俺はメニューから黒い狼の様子を窺う。まだ寝てるな。……もしかしたら気が合うかも、なんてな?

 ……と、こうやってフラグたてておけば飼いならせる成功率が上がるんじゃなかろうか。
 間違いなく気のせいだな。


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